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第16話 親友のために
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私の大好きな親友が、心無い言葉と視線に晒されている。
事の発端は屑男——ロドルフ・ルナルドだ。アイツはシエルに才能がないからと自分の評価を上げるために利用しようと考えていた。そして今回のパーティの演目でシエルが負けるところを見せ、凡才令嬢という噂を真実に変えようとした。
シエルはこうなることをわかっていた。私だったら馬鹿にされるとわかっていたら行かないけど、それでも逃げ出さなかったのは、ラパン伯爵家の人間としての誇りがあったからだ。私はそんなシエルも好きだし、自分で決めた道ならそれを止めるたりはしない。
だけど、親友が馬鹿にされ続けるところなんて見たくはない……!なんとかしないと……だけどどうすれば……!私に出来る事なんて——
あった。あったけど………
ううん!あれこれ思い悩んでる場合じゃない!私に注目を集めるにはこれしかない!
「コレット、あとは任せた!」
「えっ?ちょっと、お嬢様!?」
傍付き侍女のコレットにそれだけ言って私は壇上に駆け上がった。それに気づいた人が拍手を止めて、1人また1人とシエルたちから私へ視線を移っていく。
「っ!」
何十もの視線が私に向けられていく。壇上に突然飛び出したこともあって、多くの衆目に晒された。それだけで心を強く握られた気分になる。
昔からそう、誰かに見られる、注目されるのが苦手だった。それだけで足がすくむし、声が出ない。今も……でも、このまま何もせずに終わっていいの?
「アニー様……?」
ふと、シエルと目があった。まるで怯える子犬みたいで今にも泣き出しそうだ。そんなシエルを見て、私の頭の中にあの日のことが蘇った。
『わたしのたいせつなおともだちに、てをださないでください!』
3年前、シエルと街へ買い物に行ったある日。私は道に迷ってしまい、見知らぬ平民の酔っ払いにいちゃもんをつけられた。今思えばとんだ八つ当たりだけど、当時の私は自分よりも倍以上の大人に恐怖しか感じなかった。
そんな私を見つけて助けてくれたのがシエルだった。自分だって怖いはずなのに、それでも私を守ってくれた。あの日からシエルは私にとって唯一無二のヒーローになった。
そんなヒーローが今、困ってるんだ。今度は私が、シエルを助ける番だ!!
気づけば痛みはなくなり、足も真っ直ぐに立てた。声も出せるようになっている。今なら出来る、シエルを助けることが……
私は大きく息を吸い——歌った。
「———♪——♪————♪」
曲目は『静寂の咆哮』。このスクレット王国の式典でよく歌われる歌であり、この国の代表的な曲でもある。
私の歌声が会場全体に響き渡り、包み込んでいくのがわかる。私に奇異な目を向けていた人たちは、微動だにすることなく私の歌を聴いている。
「まあ……」
「なんて素敵な声……」
「まるで聖堂の鐘の音のようだ……」
会場にいる全ての目が私に向いている。この隙にシエルを会場から逃したいんだけど……
「(シエル様、こちらへ)」
「っ!」
流石コレット、私の意図を汲んでくれた。シエルとコレットが会場から出ていくのを見守りながら、私は歌を終えた。次の瞬間、万雷の拍手が会場を揺さぶり、多くの人たちが私に賛美を送る…………も、もうダメ!限界!!
「し、失礼致しましたぁ!!!」
私は高速でカーテシーを取り、誰にも捕まらないように、なりふり構わず会場から逃げ出した。
事の発端は屑男——ロドルフ・ルナルドだ。アイツはシエルに才能がないからと自分の評価を上げるために利用しようと考えていた。そして今回のパーティの演目でシエルが負けるところを見せ、凡才令嬢という噂を真実に変えようとした。
シエルはこうなることをわかっていた。私だったら馬鹿にされるとわかっていたら行かないけど、それでも逃げ出さなかったのは、ラパン伯爵家の人間としての誇りがあったからだ。私はそんなシエルも好きだし、自分で決めた道ならそれを止めるたりはしない。
だけど、親友が馬鹿にされ続けるところなんて見たくはない……!なんとかしないと……だけどどうすれば……!私に出来る事なんて——
あった。あったけど………
ううん!あれこれ思い悩んでる場合じゃない!私に注目を集めるにはこれしかない!
「コレット、あとは任せた!」
「えっ?ちょっと、お嬢様!?」
傍付き侍女のコレットにそれだけ言って私は壇上に駆け上がった。それに気づいた人が拍手を止めて、1人また1人とシエルたちから私へ視線を移っていく。
「っ!」
何十もの視線が私に向けられていく。壇上に突然飛び出したこともあって、多くの衆目に晒された。それだけで心を強く握られた気分になる。
昔からそう、誰かに見られる、注目されるのが苦手だった。それだけで足がすくむし、声が出ない。今も……でも、このまま何もせずに終わっていいの?
「アニー様……?」
ふと、シエルと目があった。まるで怯える子犬みたいで今にも泣き出しそうだ。そんなシエルを見て、私の頭の中にあの日のことが蘇った。
『わたしのたいせつなおともだちに、てをださないでください!』
3年前、シエルと街へ買い物に行ったある日。私は道に迷ってしまい、見知らぬ平民の酔っ払いにいちゃもんをつけられた。今思えばとんだ八つ当たりだけど、当時の私は自分よりも倍以上の大人に恐怖しか感じなかった。
そんな私を見つけて助けてくれたのがシエルだった。自分だって怖いはずなのに、それでも私を守ってくれた。あの日からシエルは私にとって唯一無二のヒーローになった。
そんなヒーローが今、困ってるんだ。今度は私が、シエルを助ける番だ!!
気づけば痛みはなくなり、足も真っ直ぐに立てた。声も出せるようになっている。今なら出来る、シエルを助けることが……
私は大きく息を吸い——歌った。
「———♪——♪————♪」
曲目は『静寂の咆哮』。このスクレット王国の式典でよく歌われる歌であり、この国の代表的な曲でもある。
私の歌声が会場全体に響き渡り、包み込んでいくのがわかる。私に奇異な目を向けていた人たちは、微動だにすることなく私の歌を聴いている。
「まあ……」
「なんて素敵な声……」
「まるで聖堂の鐘の音のようだ……」
会場にいる全ての目が私に向いている。この隙にシエルを会場から逃したいんだけど……
「(シエル様、こちらへ)」
「っ!」
流石コレット、私の意図を汲んでくれた。シエルとコレットが会場から出ていくのを見守りながら、私は歌を終えた。次の瞬間、万雷の拍手が会場を揺さぶり、多くの人たちが私に賛美を送る…………も、もうダメ!限界!!
「し、失礼致しましたぁ!!!」
私は高速でカーテシーを取り、誰にも捕まらないように、なりふり構わず会場から逃げ出した。
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