手向ける花束は枯れていた

吉村巡

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ハンセイ

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 日山ひやま美束みつかの半生を一言で表すなら「報われない」がふさわしい。
 未婚のまま若くして子供を産んだ母親は、気まぐれに私を置いて何日も家を空けるような人だった。そんな母親のもとで、無力な幼少期をどう生き延びていたのかは知らない。
 かすかな記憶は台所の隅で体を丸め、母が帰って来るのを心から願っていた記憶だけ。
 食べ物が沢山入った袋を持つ母親が扉を開けた瞬間は、何よりも嬉しかった。
 お腹が空いて死にそうな私を助けてくれる母親のことが、世界で一番大好きだった。
 でも、児童相談所に通報された結果、私は母親の実家に引き取られた。
 母親から引き離されるとき、私は怖くて母親を見た。
 私を助けてくれる母親を見た。
 世界で一番大好きな母親は、いつもと同じ、欠片の興味もない顔で私を見つめ返していた。
 その後、母親は一度も私に・・会いに来ることは無かった。

 物心ついたのは、母親の実家に引き取られてからだった。
 子供だったのが幸いし、私は祖父母との生活にすぐ慣れた。
 祖父は興味のないことには無関心な人で、祖母はあれこれと私を甘やかすがどこか地に足のつかない人だったけれど、日々を普通に生きている、普通の人たちだった。
 私は祖父母の庇護の下で、伸び伸びと成長した。
 小学校に上がって三年が経った頃、私にとって伯父にあたる人が奥さんと死別した。
 伯父には私と同い年の娘と二つ年下の息子がいて、男手ひとつでは育てられないと言い、祖父母のもとに子供達を連れて帰って来た。
 そして、私にとって一番楽しい時間は終わった。



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