急報、最強の戦士様が死にかけです!

吉村巡

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最強ノ戦士、誕生!!

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 マホロは出血多量で死んだ。

 ハルクに「テメェ、俺の医者としての腕を誤解されたら、どうしてくれる!?」と怒られて頭をペンペン叩かれる気がしたので、面倒だけど、もうちょっと詳しく説明しよう。

 マホロには前世の記憶がある。
 地球という星の日本という国に住んでいた、真幌まほろという人間の記憶だ。

 前世の真幌は、割と面倒な境遇に置かれていた。
 詳しく話すと長くなるので、ハルクに怒られない程度に関係ないところを省くけど、色々あって真幌は通り魔的な人に刺された傷が元になって出血多量で死んだ。

 真幌は出血多量で死んだあと、天国みたいな場所で目を覚ました。そこで、神様を名乗る人と出会った。
 神様みたいな人は要約すると「真幌の人生があまりにも可哀想だったのは神様の失敗だったかもーって思うから、別の世界で良ければ真幌の記憶があるまま転生させて新しい人生を歩ませてあげる」と言った。
 あと「真幌が新しい人生を歩む上で叶えてほしいお願いがあるなら、次の世界で許される範囲なら叶えてあげる」とも言われた。

 真幌は別に、自分の人生の始まりから終わりまでを「まあ、こんなものか」としか考えていなかったから、神様みたいな人に可哀想だと言われたことには驚いた。
 でも、くれるというなら貰っておこうかな、と神様の話に乗った。

 転生する世界は地球に似た環境で、魔法は無いし技術の発展も少し遅れているけど、真幌が生きていた日本から最高でも100年弱くらい時代を巻き戻した程度の世界だということだった。

 それを考えた上で、真幌が神様に願ったのが、

『底なしの体力と筋力! それから、病気にならないし、どんなに怪我とかしても痛かったり苦しくならない体!』

 だった。
 
 果たして、真幌の願いは無事に叶えられた。

 元の世界とは違う世界。とある大国の大地主が経営する牧場で働く夫婦の子供に生まれ変わった真幌は読み方は同じだが字が違うマホロと名付けられ、すくすくと健やかに病気ひとつなく成長した。

 ハルクが「何事もなく、なんて口にしようもんなら、テメェの両親の代わって尻をぶったたく」と言う気がするので、何かあったかな、と考えていまパパッと思い出したことを挙げていく。

 1歳の時、自宅のある町から3つ隣の町まで3日間をかけて迷子になった。誘拐されたのかと騒ぎになったそうだが、1人で道をトコトコと歩いていく姿を通りがかりの何人かに目撃されており、自力で迷子になったのだろうと最終的には言われた。近所一帯で大騒動になったらしいけど、幼い頃の事なのでマホロはこの時のことをよく覚えていないが、耳にタコができるほど聞かされた話だ。

 3歳の時、標高200メートルの崖山に登った末に高くて降りられなくなった。命綱は無しで、登っていって、ふと下を見た時、両親や近所の人が来て下で何かを叫んでいた。降りるのが怖かったので上を目指して、てっぺんにたどり着いて、そこから地道に歩いて帰ろうと思ったら、途中で馬に乗った父親が迎えに来た。この時のことは、高所が弱点だと知ったことが恥ずかしくてよく覚えている。克服しようとして崖登りや崖降りを極めるうちに、高所は平気になった。

 5歳の時、疾走する馬と自分の足で並走した。兄が1人で乗馬中だったのに、御しきれなくなったのか、馬の背にしがみついて泣いていたので、ぶらぶらしている手綱を引っ張って止めてあげたのだ。なのに、兄は馬が足を止めた反動で落馬して怪我をしたからか、なぜかマホロも怒られてしまった。自分で勝手に乗ってはいけないと言われていた馬に乗ったのは兄だったのに。

 10歳の春に熊、秋に鰐と丸腰で戦って皮を手に入れた。冬眠明けの熊は食料を求めて牧場に現れ、牛を食べようとした。父や父の同僚の人たちが銃を取りに行ったけど、間に合いそうになかったからマホロが退治しようと殴った。鰐はちょっと遠出して釣りに連れて行ってもらったとき、突然大きいのが現れて目の前で口ぱかってしたから危ないし、これも殴った。

 日々をそんな感じに過ごしていたマホロは、このまま両親と同じように牧場で働くんだと思っていた。
 しかし、マホロを間近で見ていた大地主は、マホロが12歳の夏に軍人になれと士官学校に入学するようにと勧めてきたので、言われた通りに入学した。
 両親の雇い主で、家族ぐるみで良くしてくれた恩ある大地主の勧めは横暴なものでもなかったし、在学中の援助もしてくれると言ったし、特に拒否する理由もなかった。
 ただ、士官学校の難しい勉強についていけなかったマホロは一年と経たずに成績不振を理由に放校処分となった。
 
 退学することになったマホロは、射撃の腕はともかく、高い身体能力をこのまま埋もれさせるには惜しいと言われて、士官学校よりずっとランクが下がる兵士学校に押し込まれた。
 文字が読めて、進む、戻るといった単純な命令が理解でき、健康な人間ならよっぽどのことがない限り卒業できるそこで、3ヶ月の勉強に耐えたマホロは無事に卒業し、晴れて兵士になった。

 兵士になって前線に立つことになったマホロはやれと言われたことをこなすために頑張った。

 といっても、空を飛ぶ敵の飛行機に手近な岩を投げつけて迎撃して撃ち落としたり、打ち込まれた敵の大砲の弾を受け止めて逆に投げ返したり、四方から迫りくる敵の戦車の一台を持ち上げて、他の戦車を壊したりといったことをしただけだったが、一騎当千の働きだと上官に褒められてちょっと出世した。

 兵士になって1年足らずでマホロが伍長になった頃には、何故か「最強の戦士」や「化物だ」と褒められているのか貶されているのかよく分からない愛称で呼ばれるようになったのだ。
 ハルクみたいに馬鹿とか阿呆って言ってくれるなら、頭悪いって言われているのが分かるのに。
 
 まあ、そういったことはともかく。
 正義とか大国の使命とかは全然わかんないけど、言われた通りに動いておけば「よくやった」って褒められるし、他の兵士をちょっと手助けしてあげれば「ありがとう」って言って貰えて嬉しい。

 だから、マホロは割と「兵士になって良かったなー」と思っている。

 


 
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