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第2話
しおりを挟むーー翌日の昼休み。
「うえぇえ...!?!?」
突然首に冷たい感触がして、体が少しの痙攣を起こす。
「おう晴也、おつかれさん」
振り返ると、同りょ...友達である天竹の姿があった。
(数年前から、天竹に「結構長いこと仲良いんだから同僚って言われるのなんか嫌」と言われ続けている)
「...ビビらせんなって」
首元に目をやると、結構冷えた炭酸飲料か当てられていた。そりゃビクビクなるわけだ。この時期にはあまりに毒である。あと、やってる事が僕に見合わなすぎる。あまりにも青春だ。
「え~ごめんごめん」
一方彼はてへぺろ♡とでも言いたげな悪戯な笑みを浮かべている。ちゃんと魅力を感じるのを否定できないのが1番イライラする。あー、憎らし。
いや、けっして彼が苦手なわけではない(むしろ話したり馴れ合ったりは好きなぐらいだ)。
しかし、スタイルが良ければ、面もよく、社交性も二重丸、自分の魅力も分かっており、恋愛においても1枚も2枚も上手。おまけに何かやらせれば大体出来てしまうようなオールマイティ型という、何とも罪な性質を持った、僕とは正反対の男(いわゆる"スパダリ"ってやつ)なのだ。
そんな、The陽の者みたいなこの男、天竹碧惟がなぜこれほど僕の近くを拒まないのかは、5年以上前から謎のまま。
「そんで、用があるって言ってたけど、用って?」
あぁそうだ。昨日のあれについて相談しようとしていたんだ。
「あのさー、...」
かくかくしかじか、昨日のことを話す。
「んーなるほど、ちゃんと休めよ」
...思っていたより冷たく突き放された感じがするのだが...
「いや、別に休まなきゃいけないほど疲れてる訳でもないんだよ」
「だとしてもそれは休め」
それはもちろん考えた。でも、僕にはその答えは何かが違うような気がする。
「まあ...もう1つ疲れ以外に何かあるとするならば...」
彼は僕が期待していそうなことを口にしようとする。そんな彼を、僕は珍しくきらきらした目で見る。彼はそんな僕に少し呆れたように、
「レイ...とか?」
ん...?レイ...?
「幽霊の霊みたいな」
おぉなるほど...とはならない。
「君には僕がそれほどに頭お花畑に見えるかね?」
「お前それ間接的に俺を攻撃してるの気づいた?」
あ...ほんとだ。と、とぼけてみた。
「はぁ...俺も信じちゃいないけど、霊の気配を感じた時に、その、顬が押さえられているような感覚ってのがあるって聞いたことあってさ」
「...たしかに、まさしく僕の昨日の状況だね」
...しかし、100歩譲って、昨日のあれが霊の仕業だと言うのなら、
「幽霊が僕に何かしらの未練か怨念を持っているということになるのでは?」
「だとしたら、何か心あたりとかは?」
天を仰いで考えてみる。
「...ない」
覚えているだけの記憶を遡ってみたものの、思い当たる節はなかった。
「...そうか」
天竹も、弱々しく相槌を打つ。ちゃんと気にとめて心配してくれていると感じた。
面倒臭いところがあるとはいえ、優しくて仲間想いなやつだとよく実感する。
「晴也って、彼女いたことある?」
「...は?
30近いおっさんが急に恋バナはキモイだろ」
「いや、純粋な質問」
...は?
「あーはいはいいませんよーそうやって僕みたいな無能陰キャ童○をいびるのかハイスペ陽キャ男子はあーやだやだ気味が悪い」
「...ことある事に俺を悪者みたいにすんの辞めてくんない?」
あー、ごめん言いすぎたと少し反省する。
「まあ...!?
100万歩譲って!?天文学的な確率で!?晴也に彼女が出来たとするならば!?本当に架空の話でしかないけど!?ちゃんと彼女との思い出とか、彼女の気持ちとか大事にしろよー!?」
「しっかり言い返してくるじゃねえか...」
まあ、そんなもんか。
「んじゃ、また今度」
「あ、そうだな」
天竹と僕は部署が違うため、約束して会わなければ、かなり長いこと会えない可能性は全然あるのだ。
「またなー天竹」
「あ」
...今度はなんだ?
「碧惟って呼んでくれない?俺だけ名前呼びは変だろ」
...本当に面倒な奴だな。呼び方なんかなんでもいいじゃん。
...まあ、今度から名前で呼んでやってもいいか、なんて自己解決して、
さっきの碧惟のアドバイス的なものが脳から離れていかないことに気づく。
大事にして...
いったいなぜこんな普通の言葉が引っかかるのかはわからないのに。何かがつっかかる。
だいじにして...
だいじにシテね...
ダイジニシテネ?
応援ありがとうございます!
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