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修学旅行編
第三話 ペアですること
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ペアですることって何だ? と所々でささやき声がもれている。
「修学旅行の初日、隣のペアで……肝試しをしてもらいます。ふふっ。青春、青春」
あけみっちが大げさに腕を組んで、うんうんとうなずく。
肝試しだったのか。暗闇にビビった女子が男子に「怖い」って言ってひっついてくるあれだな。
森崎さんとのペアが良かったけど、佐原さんなら悪くない。
なんなら、正直かなり嬉しい。佐原さんは、俺にひっついてこないとしても。
「ちょっと待った。俺ら男子同士ってこと? いや、男二人で肝試しって気持ち悪いし」
そう言ったのはヒデキだ。隣の男子もうなずく。
ヒデキの隣は、明るいが小太りで地味顔の男子。ヒデキの言うことはもっともだ。俺もヒデキの立場ならそう思う。
「今はLGBTQの時代だから気持ち悪いって表現はいただけないわね。同性同士で仲良くするのは良いことよ。でも、まあ男子二人では確かに青春って感じじゃないわね。うーん……、じゃあ女子同士のペアと合わせて四人組ってことでどう?」
ヒデキが教室内をサッと見回した。女子ペアを探しているのだろう。
そして俺の方を向いた。
が、視線の先は俺ではなく、須藤さんだ。
「よっしゃー。さすがあけみっち。ナイス提案!」
ヒデキがガッツポーズをする。
おいおい、ちょっと待て。須藤さんとヒデキが同じグループになるということは、もれなく森崎さんも付いていってしまうじゃないか。
「今、男子同士のペアは……二組で、女子同士のペアは……五組ね。女子同士のペアで男子と組んでいいペアはいる?」
あけみっちの質問に、女子同士のペアがそれぞれヒソヒソと相談する。
森崎さんが須藤さんに耳打ちする。それに須藤さんがうなずく。
お願い。須藤さん手をあげないで。
おずおずとふた組の女子ペアが手をあげた。
森崎さん、須藤さんペアは手をあげていない。
ふう。これでグルーピング成立だ。あとは男子二組と女子二組で勝手に組み合わせを考えてくれ。
結局ヒデキたちと組むことになった女子ペアは、クラスでも平均的な女子二人であった。
「はい。ではこれで決まりね。実は私も高校の修学旅行で肝試しをしたんだけど、私、そこで初めて男子と……」
おいおい。高校の教師が生徒の前で言っていいことか。
「手をつないだの」
一部の女子がキャーと叫ぶ。
男子たちの顔はここからでは見えないが、おそらく「何だよ、手をつないだだけかよ。キスくらいしろよ」っという表情だろう。
「梅谷くんって女子と手、つないだことある?」
小さめの声で佐原さんが体を寄せ、さらに顔を寄せ聞いてきた。左耳あたりが熱くなる。その熱が顔全体に伝わり、意識が飛びそうになるのをこらえた。
女子ともほとんど会話をする機会がない俺が、女子と手をつないだことなどあるわけがない。
「……ないけど」
「じゃあ私が初めての女ってことね」
「ちょっと、ホノカ。その言い方、いやらしい。……じゃあ」
間髪入れず、後ろを振り返った須藤さん。聞こえていたのか。
「私も森崎さんの初めての女になろうと」
おいおいなんて会話だ。初めて手をつなぐということだろうが、どんどんと妄想がふくらむ。
ん? ちょっと待てよ。佐原さんは俺ともうすでに手をつなぐ気でいる?
「ごめんね、森崎さん。私とサッチって小学校から一緒なんだけど、席が近くになったのが初めてでテンション上がっちゃって」
「そうそう。いつも『し』のつく子が、私とホノカとの間に挟まるのよね。島田さん、塩田さん、下田さんって」
『し』と『田』がつく人が挟まるのね。
森崎さんは斜め後ろを向いて、二人に笑いかけた。どことなく、ぎこちない笑いに見えたのは気のせいか。
その日の帰り、学校の自転車置き場にいた時だ。
いきなりヒデキが俺の肩をバシンと叩いてきた。
「おまえ、今日のくじで一生分の運をつかったんじないか。ハーレム状態もいいところだよな」
「別に隣が佐原でなくても良かったから、運はつかってない」
森崎さんの後ろの席になったのは運命の女神様のおかげであったが。
毎日、毎授業中、後ろ姿とは言え、森崎さんを見ていられるなんて。
ちなみに俺が森崎さん狙いということはしばらくヒデキにも黙っているつもりだ。
「まあ俺もとりあえず肝試しでは女子と組めて良かったわ。藤木と手をつないでおまけにキスも……」
「おまえ、藤木のことが好きなのか?」
「いや。だけど藤木は磨けば光る原石だ、と思うことにした。実際、目はきれいだし、髪もツヤツヤだ。それに、なんと言っても胸がでかい。須藤にはおよばんが」
新学期早々、ヒデキが調べた結果、『2A胸がでかいランキング』で一位は須藤さんEカップ、二位がDカップ藤木さん、三位が僅差でDカップ佐原さんだそうだ。十位まで発表されたが森崎さんはランキング外であった。ちなみに、あけみっちは形の良いCカップだそうだ。
そんなランキング一位、三位とランキング外の三人は、席替え以降、気が合ったのか週に二、三日は一緒に帰っているようだ。
三人全員の共通点といえば笑顔が特に可愛らしく、普段から口角が上がっていることぐらいだが……。三人でいったいどのような会話をしているのだろうか。
<次話:新幹線の席>
いよいよ修学旅行に出発!新幹線で隣に座ったのは……
「修学旅行の初日、隣のペアで……肝試しをしてもらいます。ふふっ。青春、青春」
あけみっちが大げさに腕を組んで、うんうんとうなずく。
肝試しだったのか。暗闇にビビった女子が男子に「怖い」って言ってひっついてくるあれだな。
森崎さんとのペアが良かったけど、佐原さんなら悪くない。
なんなら、正直かなり嬉しい。佐原さんは、俺にひっついてこないとしても。
「ちょっと待った。俺ら男子同士ってこと? いや、男二人で肝試しって気持ち悪いし」
そう言ったのはヒデキだ。隣の男子もうなずく。
ヒデキの隣は、明るいが小太りで地味顔の男子。ヒデキの言うことはもっともだ。俺もヒデキの立場ならそう思う。
「今はLGBTQの時代だから気持ち悪いって表現はいただけないわね。同性同士で仲良くするのは良いことよ。でも、まあ男子二人では確かに青春って感じじゃないわね。うーん……、じゃあ女子同士のペアと合わせて四人組ってことでどう?」
ヒデキが教室内をサッと見回した。女子ペアを探しているのだろう。
そして俺の方を向いた。
が、視線の先は俺ではなく、須藤さんだ。
「よっしゃー。さすがあけみっち。ナイス提案!」
ヒデキがガッツポーズをする。
おいおい、ちょっと待て。須藤さんとヒデキが同じグループになるということは、もれなく森崎さんも付いていってしまうじゃないか。
「今、男子同士のペアは……二組で、女子同士のペアは……五組ね。女子同士のペアで男子と組んでいいペアはいる?」
あけみっちの質問に、女子同士のペアがそれぞれヒソヒソと相談する。
森崎さんが須藤さんに耳打ちする。それに須藤さんがうなずく。
お願い。須藤さん手をあげないで。
おずおずとふた組の女子ペアが手をあげた。
森崎さん、須藤さんペアは手をあげていない。
ふう。これでグルーピング成立だ。あとは男子二組と女子二組で勝手に組み合わせを考えてくれ。
結局ヒデキたちと組むことになった女子ペアは、クラスでも平均的な女子二人であった。
「はい。ではこれで決まりね。実は私も高校の修学旅行で肝試しをしたんだけど、私、そこで初めて男子と……」
おいおい。高校の教師が生徒の前で言っていいことか。
「手をつないだの」
一部の女子がキャーと叫ぶ。
男子たちの顔はここからでは見えないが、おそらく「何だよ、手をつないだだけかよ。キスくらいしろよ」っという表情だろう。
「梅谷くんって女子と手、つないだことある?」
小さめの声で佐原さんが体を寄せ、さらに顔を寄せ聞いてきた。左耳あたりが熱くなる。その熱が顔全体に伝わり、意識が飛びそうになるのをこらえた。
女子ともほとんど会話をする機会がない俺が、女子と手をつないだことなどあるわけがない。
「……ないけど」
「じゃあ私が初めての女ってことね」
「ちょっと、ホノカ。その言い方、いやらしい。……じゃあ」
間髪入れず、後ろを振り返った須藤さん。聞こえていたのか。
「私も森崎さんの初めての女になろうと」
おいおいなんて会話だ。初めて手をつなぐということだろうが、どんどんと妄想がふくらむ。
ん? ちょっと待てよ。佐原さんは俺ともうすでに手をつなぐ気でいる?
「ごめんね、森崎さん。私とサッチって小学校から一緒なんだけど、席が近くになったのが初めてでテンション上がっちゃって」
「そうそう。いつも『し』のつく子が、私とホノカとの間に挟まるのよね。島田さん、塩田さん、下田さんって」
『し』と『田』がつく人が挟まるのね。
森崎さんは斜め後ろを向いて、二人に笑いかけた。どことなく、ぎこちない笑いに見えたのは気のせいか。
その日の帰り、学校の自転車置き場にいた時だ。
いきなりヒデキが俺の肩をバシンと叩いてきた。
「おまえ、今日のくじで一生分の運をつかったんじないか。ハーレム状態もいいところだよな」
「別に隣が佐原でなくても良かったから、運はつかってない」
森崎さんの後ろの席になったのは運命の女神様のおかげであったが。
毎日、毎授業中、後ろ姿とは言え、森崎さんを見ていられるなんて。
ちなみに俺が森崎さん狙いということはしばらくヒデキにも黙っているつもりだ。
「まあ俺もとりあえず肝試しでは女子と組めて良かったわ。藤木と手をつないでおまけにキスも……」
「おまえ、藤木のことが好きなのか?」
「いや。だけど藤木は磨けば光る原石だ、と思うことにした。実際、目はきれいだし、髪もツヤツヤだ。それに、なんと言っても胸がでかい。須藤にはおよばんが」
新学期早々、ヒデキが調べた結果、『2A胸がでかいランキング』で一位は須藤さんEカップ、二位がDカップ藤木さん、三位が僅差でDカップ佐原さんだそうだ。十位まで発表されたが森崎さんはランキング外であった。ちなみに、あけみっちは形の良いCカップだそうだ。
そんなランキング一位、三位とランキング外の三人は、席替え以降、気が合ったのか週に二、三日は一緒に帰っているようだ。
三人全員の共通点といえば笑顔が特に可愛らしく、普段から口角が上がっていることぐらいだが……。三人でいったいどのような会話をしているのだろうか。
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いよいよ修学旅行に出発!新幹線で隣に座ったのは……
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