席替えから始まる学園天国

蒼 空馬

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ミツハナ脱退編

元カレ似

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 二学期も明日で終了だ。冬休みに入る前にひとつだけあけみっちに聞きたいことがあり、昼休憩中に音楽室に一人向かった。

「失礼しまーす……」
 
 そっと扉を開けたがあけみっちの姿はない。
 昼休みなら大丈夫と言われたのだが……。
 
 準備室をそっとのぞくとあけみっちが、楽器の手入れをしているところだった。

「あけみっち。今、大丈夫?」
「いいわよ。ここの掃除をしていただけだし」
 
 俺はうんとうなずいた。

「あけみっち。ちょっと聞いていい?」
「女の子が喜ぶアレの続き?」
「そうそう。師匠、今すぐここで教えてください。って違う、違う」

  違わなくてもいいかもしれないけど。

「ふふ。ノリツッコミが下手ね」
「それは誰かに教えてもらうとして。帆乃花ちゃんのお兄さんが俺たちに勉強を教えてくれた時に、家庭教師は二人までって言ってたけど、一人はサッチに決まったの?」
「須藤さん? 私は何も言ってないし、何もしてないわよ。佐原さんのお兄さんが須藤さんの家庭教師ね……」

 あけみっちの顔が曇った。

「どうしたの?」
「……。んー、君は佐原さんの味方よね」
「もちろん」

 世界中を敵に回しても俺は帆乃花ちゃんの味方、というやつだ。

「佐原さんを守るために君だけに言っておくわ。それに須藤さんも」

  帆乃花ちゃんを守る? サッチも?

「どういうこと?」
「……。佐原さんの家出の理由はご両親というよりもお兄さんにあるの」
「そ、そうなの?」
「お兄さんが佐原さんを好きすぎて束縛がひどいらしくてね。最近週末は出かけてるでしょ。まあ私のマンションなんだけど。お兄さんも平日は忙しいから週末は佐原さんを特に拘束したがるらしくて……。一度、頬を叩かれたらしいわ。すぐ謝ってきたそうだけど」

 そうなんだ……。
 そういえば、帆乃花ちゃん。マスクをずっとつけていた日があったな。

「まるで私の元カレみたい……」
 
 元カレって、あけみっちに暴力を振るった男か。

「この前、マンションでみんなに勉強を教えてくれた時に、少し元カレと同じにおいがしたから、あの後、みんなに家庭教師として薦めなかったんだけど。須藤さんが自分で家庭教師をお願いしたのね」
「んー、俺はどうしたらいい?」
「そうね……。佐原さんはお兄さんから離れた方がいいから、私のマンションで週末は大学受験に向けて勉強していることにするわ。ご両親に言っておく。で、大学は県外が必須。お兄さんと離れないとね。須藤さんは、今は憧れで彼に家庭教師をお願いしてると思うから、大学に合格したいなら駅前の塾に行くように促すわ」
「つまり俺は特に何もできることがないと……」
「いいえ。ちゃんと二人を見ていて。私が気づかないこともたくさんあるわ」
「わかった」
「結構、重い話になっちゃたわね。君の相談だからてっきりあっちかと思ってたのに」
 
 あけみっちは、俺に迫ってこようとはせず、掃除の続きをするからと俺を部屋から追い出した。
 あけみっちの後ろ姿がどことなく暗く感じた。

 教室に戻り、すぐに帆乃花ちゃん声をかけ廊下に連れ出した。
 クラスメイトの視線が集まる。友巴ちゃん、サッチ、ヒデキ、明るい小太り男子もだ。
 まあ構わない。

「ごめん帆乃花ちゃん」
「いいよ。どうしたの?」
「ちょっとお兄さんのことで……。サッチの家庭教師してるって知ってた?」
「……。知ってるよ。サッチにはやめといた方がいいよって言ったんだけど」
 
 俺は小さくうなずいた。

「ひとの言うこと聞かないから、サッチ」
「そうだよね。わかる。あけみっちがサッチに、大学行く気があるなら駅前の塾に行くように言うって」
「そうなんだ。今はサッチもお兄ちゃんに浮かれてるだけだろうけど……」
 
 まさかあけみっちの元カレ暴力男に、帆乃花ちゃんのお兄さんが似てるとは言えない。

「ちょっと様子見かな。帆乃花ちゃんも何かあったら言ってね」
「……ありがとう」
「もう教室に入ろうか」

 帆乃花ちゃんと一緒に席に戻ると、明るい小太りが、俺をじっと見てきた。

「何話してたんだ?」
「ん? 秘密だ。だけどお前にはこそっと教えてやろう」

 俺は明るい小太り男子に耳を寄せるよう促した。
 明るい小太り男子が顔を近づける。
 その耳に温かい息をはーっと吹きかけた。

「いやん、生ぬるい息が……ってアホか」
「はは。まあ勉強のことだ。お前、興味ないだろ。気にするな」

 帆乃花ちゃんの顔は角度的に見えないが沈んだ雰囲気が漂っていた。

 冬休みに入る前にサッチにひとこと言っておいた方がいいだろう。
 理解室から教室に戻る途中でサッチを呼び止めた。

「ちょっとサッチ」
「なにシュウゴ。あっ、ケイコ先に行ってて」
「家庭教師のことだけど」
「あー、ホノカのお兄ちゃん?  わかってるよ。あけみっちに言われた。大学行きたいならちゃんと塾に行きなさいって」
「それで?」
「三学期になったら塾に行くよ。ユウちゃんが家庭教師だとドキドキして勉強にならないからね。だから休みの日に会うことにしたの。ちょっとこっちきて」

  サッチが俺を廊下の死角に連れ込んだ。

「誰かに言いたくて仕方なかったんだけど、ホノカには内緒だよ」
「なんだよ」
「この前シュウゴとショッピングモールで会った日ね、初めてラブホに行ったんだけど、ユウちゃんってイケメンなだけあって、エッチのテクニックがものすごいの」

 まああれだけのイケメンだから彼女が過去何人もいてもおかしくない。場数を踏んでいる分、テクニックもすごいのだろう。それよりも……。

「何かされなかったか?」
「された、された。されまくった」
「叩かれたり?」
「はあ? 何言ってるの? いろんな体位で何回もいっちゃったってこと。あー、思い出しただけで濡れるわ」
「そ、そりゃすごいな」

 学校で言うことじゃないけど。

「ユウちゃんがあれしてこれしてって言うのに上手く応えられなくて怒られちゃったけどね」

 おいおい、それって暴力男の片鱗じゃ……。

「もう会わない方がいいぞ」
「なんでよ? シュウゴが私を何回もいかせてくれるなら考えるけど、無理でしょ」
「そりゃそうだけど……」
「じゃあ、ほっといて」

  サッチはぷいっと顔を背けて行ってしまった。
 あけみっちに、サッチも守れと言われたけど、失敗してしまった。
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