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『とりかえばや物語』田辺聖子 文春文庫

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ベースは古典の名作『とりかへばや物語』

活発で漢学や詩作の才能に長けている男の子のような姫君・春風と内気でおしとかやで女の子のような若君・秋月のきょうだい。

そんな二人を見て
「とりかえばや(とりかえたい)」と嘆く父の左大臣。

出来ればきょうだいを外に出したくないという左大臣の思いも虚しく、帝の命により異なる性で成人の儀を迎えて宮中デビューを果たす。

はじめは男性として能力が認められていく事が面白くて堪らない春風だったが、年頃になるにつれて葛藤が生まれていく。

おまけに春風は、冬日という右大臣の娘と結婚までしてしまったのだから、悩みは更に深まっていく一方。

そして、尚侍として後宮に入り、女東宮に仕えている秋月もまた・・・。


男勝りだった春風と物静かで人見知りの激しい秋月がそれぞれの性に目覚め、それとは対照的な姿に苦悩する姿が田辺聖子さんの美しい現代訳により見事に描かれている。

コメディー要素の強い氷室冴子さん『ざ・ちぇんじ』とは違う魅力がある。


異なる性の姿で生きるきょうだいという古典ならではの着眼点も面白い。

春風と秋月のきょうだいはこれからどうなっていくのだろう?


古典作品はどうも苦手という方も、楽しく読めると思います。

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