影住み少女と失声の僕

ヒサギマイ

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rain Ⅰ

rainⅢ

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─どんな気持ちで君は  その言葉を放ったのだろう

 僕に声があったとしても、あの時声を出すことは出来なかっただろう。それはあまりにも驚愕する事実で、あまりにも予想だにしない、まるで虚構のようであったから。でも、それが紛れもない真実であるということは、彼女の声と表情(かお)が物語っていた。      
 直接関係がないはずの僕の心に、その言葉は重く、鉛のようにのしかかった。彼女が歩んできた日々の記憶がなぜか、僕の頭にも流れ込んで渦巻いて離れなかった。彼女から話を聞いたわけでも、昔の彼女を見たわけでもない。ただ、想像してしまった。思い出してしまった。思ってしまった。僕と──僕と同じだと。同じ道を、歩いてきたのだと。その瞬間、

涙が、零れた。

 一筋だけ頬を伝って土砂降りの雨の中に紛れて消えた。これはなんの涙だろう。同情か?共感か?その時の僕には分からなかった。ただ、幼い僕がこの時、1つだけ分かったこと。そう僕達は─

“僕達は別な同じ世界を生きている”

………………………………………………………………………

 無音の僕の涙は、彼女には見えない。濁色のこの世界は、彼女には見えない。─はずなのに。

「──なさい」

(…?)

「ごめんなさい、泣かせてしまって。でも泣かないでください。涙は好きではないんです。」

(──なん)

「──音です」

 彼女は僕の問をまるで知っているかのように、そう答えた。

(でも僕は音なんて─)

「いいえ…」
 
彼女はその澄んだ声で

「“音”を持っていない人なんてこの世に存在しないのです。貴方は私が出会った人の中で1番─


“1番素敵な音を、持っています”


私には聞こえますよ、貴方の心の──音楽が」

そう言って、笑った。雨上がりの空を移したような瞳で微笑んだ彼女の笑顔に、僕はこの世界で初めて

し あ わ せ の 意 味 を み つ け た 気 が し た

淡い虹が少しだけ僕の中にかかった。
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