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しおりを挟む炊き出しが終えてからの翌日、家令から報告を受けていた。チャール公爵からの使者と、キーシュ家の関係者が来たようだが、言いつけ通りに追い返したそうだ。更に一部で暴動が起きそうになった原因は、キーシュ家が失業させたために起きた事だった。
主にキーシュ家が営む商会で仕入れが厳しくなったので、それまで工房にいた者の大半をキーシュ家の現当主が失業させたとのこと。今回の出来事をきっかけにキーシュ家の商会は、庶民の中では既に評価が暴落しており、誰も近付かずに過ごすことになったらしい。
キーシュ家での出来事は放置し、屋敷に入った者の多くは以前の職場と同様の場所で働いてもらうことに決まった。そのほかに変わった点について家令に聞くと、王都内でチャール公爵家が資金面で苦労していると知らされた。
それから数日経ったある日、学園から講師が1人来訪してきた。特にもてなす必要性も湧いてこないので、執務室へ招いてもらった。ちなみに今は人員が増えたため、執事だけでは手が回らず、書類決済を進めていた。
「セリア嬢、お久しぶりです。今日にでも学園に来訪なさってください。何度も公爵家が学園に来訪してくるのは不味いので、対応をお願いしたいのですが」
「ひとまず今日は無理ですね。人員移動が先日の暴動で激しく変わったので、その決済が全く終わらないのです。」
「では我々が手伝いましょうか?少なくともセリア嬢に教えられないからと言っても、これでも講師なので多少は力になれるかと思いますが。」
「ではそこに計算していない書類があるので、手早く決済をお願いします。…報告を続けてちょうだい」
「………」
その日は結局、書類決済で終わりを迎えた。講師に至っては書類の追加と処理が多過ぎて、魂が抜け落ちたかのような落胆した様子で帰っていった。家令も汗ばんだ額を冷やしながら休憩に入ったが、その間もセリアは事後処理に必要なものをまとめていく。
その表情は赤みが帯びているものの、疲れた様子を見せない張り切り具合だった。翌日には伝えた通りに、学園へと来訪していた。
学園も久しいが学園内に入れば忌避の視線を感じながら、学園長の元に向かう。学園長がいたのは応接間だったが、既にチャール公爵夫妻が来訪した後だった。何かを話していたようだが、既に会話は終わっているようで、学園長が近くの席に手招きをしてきた。
「セリア嬢。先日の暴動を未然に防いだこと、ほんに感謝する!本当なら今回は呼び出さなくても良い案件だったのだが、公爵から頭を下げられては断れないのじゃ。だから不快に思うなら、別に無理して合わなくても、学園長としての顔を立てさせる。」
「大丈夫ですよ、学園長。こちらは何かが起きても痛くも痒くもありませんからね。」
「…では本題に入らせてもらおう。セリア嬢、以前は約束を守れず済まなかった。ナタリーも血の気が多くて困ったものだが、あの約束を継続できないだろうか?図々しいのも自分がよくわかっているが、最近ではナタリーが大人しくなってきていて、謝りたいと申し出てきた。そこで今回呼び出してもらった次第だ。」
「先日はどうもすみませんでした。あの時はかなり罵倒してしまい、貴族同士での約束事は破った方が悪いですからね。流石に追放とまでは行かずにすみましたが、今後はセリア嬢を支援させていただきたい。」
「ええ。別に構いませんよ?教材は渡せていなかったので、今渡しますね。」
セリアは手荷物の中から教材と思われる本をテーブルの上に置いた。その厚さは側にいた学園長ですら驚くほど薄い教材だった。その教材を公爵が手に取って中身を確認していくと、教材からセリアに視線を向けた。公爵の状態から察したナタリーが教材を奪って開いていくと、ページをめくるたびに目を見開いて驚いていた。その様子に学園長だけが追いつけていなかったが。
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