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しおりを挟む保護者Side——
机に置かれた紙束へ狐獣人の男が目を向けていると、扉の外から慌ただしい足音が近付くのを耳にする。
「陛下!無事、御子がお生まれになりました。」
「本当か。では準備でき次第、呼べ。こちらの執務を早急に片付ける。」
「はい。それと、魔導師長からお話があるとのことで、扉の前でお待ちになっております。かなり焦っているような雰囲気でありましたが。」
「そうか。お前は下がれ。ホルカー、入れ。」
執事服に身を包んだ男性が執務室から下がると、次に入ってきたのは黒色のローブを羽織る男性だった。
ローブの男性は形式通りに礼をする。
「よい。楽にせよ。儂も忙しい故、手短に話せ。」
「はっ!では本題に入る前に。此度、御子がお生まれになり、おめでとうございます。」
「ああ。」
「お顔は拝見しておりませんが。御子は先祖返りと思われます。それも始祖の血だと思われます。」
「それは誠か?」
「はっ。尾の特徴が過去の文献と一致しております故、間違いではないかと。」
「では、厳重に慎重に動け。仮にそなたの仮説が当たっていた場合、事を要する。」
「御意に。」
二人は仔細を詰めていると、先程の執事が戻ってきた。
執事を先頭に、一室へ入る。
寝台には横になった王妃と、その側で健やかに眠りにつく産まれた御子がそこにいた。
男はそっと御子を抱えて、「天使のようだ。」と呟き、壁際で控えていた産婆と侍女達も頷いて賛同する。
「女の子でございます。陛下。」
「そうか。では、名は"ユキ"とする。」
男…国王が宣言し、それを祝うように控えていた一同が「ユキ王女殿下、万歳!」と御子を起こさない程度の小声で祝った。
◇ ◇ ◇
月日は流れ、離乳食を終えた王女は家族と食事ができるようになった。
食堂には奥に国王。
側の上座に王妃、次座にユキ。
その向かい側の上座に第一王子、次席に第二王子、第三王子の順で座っている。
「今日ユキと食堂に参列することが許された。乳母となったサラからも許可が出たため、これから食事は一緒に食べれるぞ。ユキ。」
「はい。お父様。」
「紹介していなかったな。お前から見て左から、アスケナ、メノア、クェサリオ、だ。三人とも、お前の兄達だ。仲良くするんだぞ?」
「ぅん。よろしくね、お兄様達。」
「「「うん、天使だ。」」」
ユキの微笑みを受けた三人の兄達は揃って同じことを呟いた。
不思議そうに三人を眺める中、王と王妃はそんな三人をほっとしたような微笑みを浮かべていた。
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