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しおりを挟む王子Side——
布地を触っていたユキが呟き、それによってユキの手元に全員の視線が集まる。
「これ、なんか触るの、嫌。」
「ユキ様。それを渡していただけますか?処分しますので。」
「うん…。」
ユキが布地を渡すと、他の護衛が懐から出した四角い白布でユキの手をそっと拭う。
アスケナとメノアは意味が分からないとでも言うように護衛の男を見つめる。
クェサリオだけは先程のユキの反応から、嫌な予感から護衛の持つ布地に触れる。
「…これって。ーー粗悪品じゃないか?」
「ご明察です。これは何年も放置された物から織られた布かと思われます。平民にとってはどうなのか、判断に迷うところではあるのですが。粗悪品で間違いないでしょうね。」
「本来ならどれくらいの価値があるんだ?」
疑問視するアスケナは護衛を睨みつけて、問いただす。
先程出した金銭を入れている袋に目を向けながら、次に布地に目を向け、間を置いて話し出す。
「アス様。これは価値などない、ただの布切れ…でしょう。もし売るとしたら、売れて鉄貨二枚するかどうかでしょう。」
「では、あの店に行って返品を!」
「それは、できません。仮に行こうものなら、騎士団を呼ばれて処罰されます。また今回はユキ様の意向で豪商の子息子女の名義です。いくら豪商でも、訴えられては分が悪うございます。」
「だが!」
アスケナは怒鳴り上げるが、護衛は一歩も引かずに本来の目的を諭す。
「このまま問題として勅発して、ユキ様の願いを無下にすることを許容するのであれば、私が対処いたします。」
「ぐっ。」
悔しげに歯を食い縛るアスケナに、黙っていたユキが掠れる声で話しかける。
そこに同調して、メノアが冷静に事実を告げる。
「アス兄様。ここは折れましょう?」
「そうだぞ、兄上。それに、だ。城下を散策するなら、今回のこと然り多くのことを知るべきではないか?」
「分かった。ここは諦めよう。だが視察を後日し、まだやっているようであれば摘発する。」
涙目になっていたユキを撫でて、一行は家路についた。
行きと違い、疲れたように足を引きずるように帰ってきたアスケナ一行にガエウスの目は釘付けとなった。
ユキは護衛に抱かれて、グッタリしている様子に訝しむが、疲れている手前で一旦黙認することにした。
夕食後は各々の自由な時間だというと、速攻で寝室へと向かい、食堂はガエウスとホルカーと護衛多数が残った。
ガエウスはアスケナたちに付けていた護衛を、目の前に呼び出した。
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