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VOL30 「ココロの眼を鍛えるのじゃ」

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ー転生のアメリカ編 VOL30ー
「ココロの眼を鍛えるのじゃ」
ニューヨーク 1990年3月

ー前回からの続きー

ヒコーキから降りて荷物を
受け取る所に行くとそこは人で
ごったがえしていた。
「荷物をひったくられないように注意!」
というようなこれまで見たことのない
サインがいくつもある。
黄色い服を着た黒人の係員が険しい表情で
乗客達を誘導したりしている。
のんびりしてたラスベガスの
空港なんかとは別世界だ。
ううっ!
やっぱりここは気軽にひとりで
遊びに来るようなとこと
ちゃうんかなあ??
、、、、、心細くなってくる。

そしてダウンタウンまでいよいよ
悪名高いニューヨークの地下鉄に
乗ることになった。
ちょっと緊張する。
でも乗らなきゃ先へ進めないのだ。
(この前の年'89年あたりに
ニューヨークにペンキなどが
つきにくい日本製の車両が導入されて
落書きだらけだった電車はなくなり
治安も以前ほど悪くは
なくなっていたらしい。
それでもマイナーな路線を使ったり、
乗客のほとんどいない夜遅くに
連絡通路やプラットホームにいる時は
かあーなり怖かった。
この数年後ジュリアーノ市長が
就任してからは治安はさらに
グッとよくなったと聞く。)

切符を買おうと10人ほどの列の
後ろに並ぶと後ろにドレッドヘアーの
ヒスパニック系のちょっとアヤシイ
風貌の若い男がついた。
なんとなく緊張感がさらにアップ。
俺の順番が来た。
降りようとする駅の名まえを告げると
窓口のガラス越しにマイクを通して
白人の女のひとが「いくつ?」とか
訊いてくる。
いくつって俺ひとりだけなのに
ワケがわからずまた繰り返して言うと
彼女は早口に何かを説明し始めた。
何を言ってるのか全くわからない。
ゆっくり簡単な文で話してくれないと
全然聴き取れないー!
俺の後ろにはもうすでに
10人位の人が並んでいる。
今にも皆に「モタモタすんな!」
と責められそうな気がして
プレッシャーでパニックになる。
うわあーっ。どうしたらえーねん!

、、、、とその時、
後ろのヒスパニックにいちゃんが
すごく優しい口調でゆっくりと
わかりやすく説明してくれた。
「行き先は関係ないんだよ。
乗車料金は均一なんだ。
1ドル25セント(’90当時)で
このトークン(コイン状のもの)
を買えばこれ1枚でどこからでも
乗れるし、どこで降りてもいいんだ。
もちろん乗り換えも出来る。
彼女はキミにトークンが何枚
欲しいのかを訊いてるんだよ。
ニューヨークに到着したところなら
これから何回も乗るだろうから
まずは5枚ほど買っておいたらどう?」
た、助かったあーー!
そういうことかあ。
アドバイスに従って5枚買って
彼に何度もお礼を言うと
ヒスパニックにいちゃんは軽く自然に
「いいんだよ。」と応えた。

人を外見けだけで判断しちゃいけないって。
でも当たり前のことなのに
時にそれは難しいことでもある。
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