激甘革命!マジパティ(分割版)

夜ノ森あかり

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レインボーポット編

第33話「想いは一つ!勇者クラフティと明日香の愛の力!!!・前編」①

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 大空を渦巻く黒い闇の中、俺は突然身体の自由が奪われてしまった。
「ぐっ…」
 闇の中には黒いもやがまるで触手のように伸び、俺の手足に絡みつくや否や、じりじりともやの中へと俺を誘う。

「あれが勇者ガレットの弟…」
「イマイチパッとしないねぇ…ガレット様は、今でもご立派で…」
「勇者ガレットの弟なんだから、できて当然だろ…」

 闇の中からこだまする、俺にとっては聞きたくもない言葉…昔から言われてきた、俺の存在を否定するかのような言葉…

 俺だって勇者なんだよ!!!
 いちいち兄さんの名前を出すなっ!!!
 俺と兄さんを比べるんじゃないっ!!!!!

 俺は…クラフティ…

「ニコラス・クラフティ・ブラーヴ・シュヴァリエ」…

「勇者ガレットの弟」なんかじゃ…ないっ!!!!!

「そうよ…ニコル…あなたはあなたのままでいいの…」

 ミルフィーユの声がする…不意に前を見ると、そこにはミルフィーユではなく、紗山さざん中学校の制服を着た千葉明日香ちばあすかの姿…そんな明日香の全身は黒いオーラで包まれている。
「明日香っ…お前、自ら…」
「どうせ消えるなら、ミルフィーユの姿より…ありのままの私がいいもの…」
「お前…そんな事をしたら…」
 明日香は首を横に振る。クリスマスの日の戦いで、明日香は俺を庇ってブラックビターの幹部ラクガンの攻撃を受け、カオスの力を植え付けられていた。あの時、俺の力でカオスの力を拭い去ったはずだったのに…

「あんな父親に縛られる人生を送るより、私はニコルと最期まで一緒にいたいのっ!!!!!」

 大粒の涙を流しながら叫ぶ明日香の言葉に、俺は突然背中を斬られたような衝撃を受けた。明日香はこれまで、俺の前で父親の事を「父親」と呼んだことがなかったからだ。それは明日香の本音なのか、カオスに操られているだけなのか…今の俺にはわからない。
「だから…ニコル…私、誰にもあなたを渡したくないの…例え、相手がカオスであっても…」
 思わずぞっとしてしまうような、明日香の言葉…そこへ、ソルベとプディング、3人の精霊達が闇の中へと入ってくるが…

「ザッ…」

 突然、明日香が俺の大剣を持ち出し、ソルベとプディングの腰のチェーンを切り裂いた。腰にあるブレイブスプーンを失った2人は、それぞれ氷川台友菓ひかわだいともか金城きんじょうここなへと戻ってしまう。

「私はニコルを愛しているのっ!!!誰にも…誰にも絶対に渡したくないのっ…」

「バリバリバリッ…」

 布地が裂ける音と共に、明日香の背中から突然、コウモリのような羽根が飛び出し、明日香の瞳が赤く染まる…

「素晴らしい!!!マジパティがこんなにも勇者を狙う者を妬み、勇者を独占しようとしていたとはなっ!!!!!」

 カオスの笑い声が響き渡る。俺は明日香の名前を呼ぼうとするが、黒いもやによって口を塞がれてしまった。

「今日は宴だ!!!この女だけは生かしてやる!!!!!さぁ、その独占欲を我に捧げよ!!!そうすれば、勇者の命までは奪わん!!!」

 俺は本当は、こんな結末を迎えたくなかった…

 やっと見つけた一筋の奇跡を大切にしたかった…

 愛する者の傍にいたかった…

 なのに、俺のマジパティ達は俺をかけて争ってばかり…

 どうして、俺はちゃんとマジパティ同士をまとめられなかったのか…

 わからない…でも、俺と一緒にカオスと戦ってほしかっただけだったんだ…

 けたたましい笑い声の中、俺は愕然としたまま激しく後悔した。



 ………



「そうか…後は一悟のじーちゃんに任せて、戻って来い。今、トルテがそっちに向かってる。」

 娘からの電話にそう答えたガレットは、海の家で準備を始めた。柊也しゅうや茅ケ崎ちがさき駅南口に近い茅ケ崎市特秀会とくしゅうかい病院に運ばれ、すぐさま集中治療室に移された。たまたま勤務していたほなみといすみの父親・香取浩史かとりひろしが柊也の担当医になり、シュトーレン達の事情を知った上で、慎重に検査をしたのだった。
「目立った外傷は特に見当たりません。ただ…精神的なダメージが大きいようで、昏睡状態が続いています。」
 無理もない…8年間もの間、生身の人間のままカオスに操られていた様なものだ。スイーツ界の住人であるムッシュ・エクレールや、元々幽霊だったティラミスの時とはワケが違うのだから…

 海の家の方は、いすみが一悟いちごの代わりをすると豪語し、彼女と涼也りょうや瑞希みずき、キョーコせかんど、そしてあずきとその執事も手伝いに加わる。
神立かんだつ、ここから近いコンビニで今日のチラシを100枚ほどコピーなさってきて!支払いはこのmomocoをお使いになるように。」
「かしこまりました、お嬢様。」
 執事はあずきから電子マネーが入ったカードと、チラシの原本を受け取ると、最寄りのコンビニへと向かう。そんな彼女は、動きやすい軽装に水色のエプロンを纏う。
「お嬢様って、ふつうはお料理しないんじゃないの?」
「「お嬢様は料理ができない」と、誰が決めまして?ワタクシ、こう見えても女優・神戸摩耶こうべまやのお墨付きを頂いているほどの実力でしてよ?」
「でぇーっ!!!超セレブのお墨付きー!?」
 一悟達が扉の中に吸い込まれてしまっただけに、マジパティを支える者の1人として、あずきも本気モード全開だ。
「ライスも頑張ってんなぁ…」
 海の家の片隅で佇むココアはそう呟きながら、人間の姿で膝の上にピンクのマグカップを乗せたラテに、悲しげな表情で目を向ける。

『ラテ…』

 一悟達と入れ替わるかのように、扉から飛び出してきたピンクのマグカップ…そのマグカップに身体を入れたツーサイドアップをドーナツ状にまとめた少女…それはまさしくラテの姉・モカだったのだ。
「モカ姉…目ぇ…開けてよ…」
 妹はそう願っているが、モカは眠ったまま動かない。まるで植物状態に陥ったかのように…

 扉の前では、賢者トリュフが杖を構えながら扉を見つめている。

「モカが扉から出てきたという事は、恐らく…明日香の心の中で何かが起こっている…そう捕らえた方が妥当かもしれない。」
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