(R18G) Blood High -俺はヤバい暗殺者に堕ちた-

如月紫苑

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第三章 天職と野獣

② 天職と野獣

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「ない。本当にそこまでの効果はあるのか?」
「毎回感染した血液に覆われる僕で立証している。打っておいた方がいい」
 天は慣れた手付きで自分の首の静脈を探し、躊躇なく刺す。ゆっくりと親指を押して薬を体内に打ち込む。そのまま抜いて指で抑える。
 なかなか見ていて怖い。
 もう一本の注射を手にしてソファーに座っている俺の前に立つ。
「ふふ。信用出来ない? 僕に針で刺されるの」
「それは信用している。いつでも殺そうと思えば殺せるだろ、俺の事」
 無言のまま首を長い指で強く擦られてぞくりとする。
「職業柄、首に針って考えるのが苦手なだけ」
 天が軽く笑う。静脈を消毒してから丁寧に針を刺す。皮膚にプスッと突き刺さる感覚と、体内に冷たいのが流れ込む悍ましい感覚に顔を顰める。彼がそっと針を抜くと俺は無事に終わった事に安心する。
「すぐに効き出すよ。一週間はバンパイアウィルス等はあまり心配しないでいいよ」
 天が俺の髪を撫でてから、軽く頭をポンポンと叩く。
 
――――緊張した子供をあやすような扱いはしないで欲しい
 
「そろそろ着替えようか」
 命を取り扱う事業はどれも同じで基本は黒である。人間の返り血は赤いし、バンパイアは黒いし、それ以外の変異種は皆また違う。一瞥して汚れが目立たないのは黒か迷彩だけである。近付けば匂いで分かるかもしれないけど。
 ぴったりとした細身の長袖に着替える。必要な仕事に応じて薄いアーマー的なのを下に着る時もあるが動きにくいのでスピード重視の仕事ではあまり着用しない。そして最後は上に黒いベスト。
 慣れた手付きでベストの多々あるポケットの指定位置に商売道具を入れていく。さっぱり分からない物から分かりたくもない物まである。そして黒い細身のズボン。緩い物だとトラップなどにも引っ掛りやすいから避ける。最後は撥水加工が優れている滑らない丈夫なブーツ。
 一度骨を踏んで足の甲から突き出てしまったと天が言う。非常に、物騒だ。
 
――――普通にそんな事になるか?
 
 天の方を見ると俺を見ている。心なしか笑顔が凄まじく生き生きとしている。
「絶対に今、何か怖い事を考えているだろ」
「ふふ、今夜のお仕事、楽しみだねぇ」
「殺人狂」
 俺も念の為自分の商売道具をポケットに入れていく。天が俺に追加のナイフをくれるので共にブーツに滑り込ませる。次々に色んな物を渡されるので、それらも収納していく。自分が仕事する時との用意の違いに関心をする。準備は本当に周到である。
 最後にビビットカラーなゴムを数枚渡される。
「おい」
「ふふふ。絶対、必要」
 諦めてそれはズボンのポケットに収納する。
 
――――こいつ、絶対アドレナリンハイになってセックスをするつもりだ
 
 拒否権ないのが悲しい。せめて普通のセックスにして欲しいと思う。
 
――――あとは感染はあまり心配しないでもいいのか。最も天の嗅覚ならば何か問題があれば教えてくれるだろ
 
 仕事の準備が進むにつれて天の興奮が伝わってくる。準備しながら何をどうするのか考えているのだろうか。ちらりと見ると股間が微かに立っている気がする。落ち着きがなくなってくる。立ったり座ったり無駄に部屋の中を歩き回っている。まるで狩りをする前の落ち着かない獣みたいだ。
 何度か視線を感じて振り返るが天が目を逸らす。何を考えているのか知らない方がいいのかもしれない。
「なぁ、俺はどうすればいい?」
 今はベッドに座っていた天が、顔を覆っている両手の隙間から目を向けてくる。
「後ろから付いて来て。離れ過ぎちゃうとアラーム鳴るかもしれないし、近付き過ぎちゃうと間違って殺しちゃうかも」
「絶妙な距離で離れているから殺さないで」
「ふふふ、ドキドキするね」
 会話の間一切瞬きをしていない。彼の興奮が伝わってくる。彼は一度ぶるっと身震いをする。
 天の仕事内容はよく分からないが、キラーは間違いなく天職だろう。
 天が長く息を吐き出しては、吸い込む。
 吐き出す。
 静かに無音で立ち上がる。口調と声色が変わる。
「行こうか」
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