(R18完結)星屑の申し子

如月紫苑

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第一章 運命の瞬間

9 男を探しているけど、そういう男じゃないわよ!

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「ごめんなさい。今は売れないの」
「まだ若いお嬢さんはなかなか交渉術がある! 八百ルビル!」
 私達の金額などを聞きつけたのかどんどん周りに人だかりが出来始める。一緒にいた兵士は宝石商の人を後ろに押しやると私の腕を引っ張る。
「走れますか⁉」
 私達は追ってくる宝石商の男から逃げ始めるとすぐ後ろに人相の悪そうな男達も追いかけてくる。
「え? 何、どうしたの⁉」
「人攫いや山賊達ですよ! あなた達の話していた金額の大きさ、理解しています⁉ 余裕で家が一軒買えちゃいますよ⁉」
「まだよく理解していなくって」
 兵士は角を何度か曲がると洋服屋へと駆け込む。息を詰めているとすぐに店の前を大勢の足音が近付いては去っていく。
 兵士は近くの長いショールらしき物を手に取ると私に渡す。
「こういうので変装をお願いします」
 王から渡されたお金でそれを買う。王から渡されたのは二百ルビルらしい。地球から攫われて貰った二百ルビルが私の全財産って事だ。尚更このジュエリーは簡単には手放せない。ショールで頭と顔を隠すように巻き付ける。綺麗な紺色のショールで淵にはレース編みがされている。
「ねぇ、あなたも一緒に来てくれない?」
「すみません、王に街まで送ったらすぐに戻るように言われていますので。その代わり私が信用している腕の立つ傭兵を紹介します」
 先程の男達から隠れながら路地裏をそっと歩く。やがて少し古びた酒場へとたどり着く。
「お酒には早いんじゃない?」
「傭兵に早いも遅いもありませんよ。何か必要な場合は酒場へ向かってください。危険な男達も多いですが、逆に使える情報などもございます」
 酒場のドアを開けて入るとすぐにその匂いに顔を顰める。一ヶ月足を洗っていないような匂いに、汗の匂い、口臭、獣臭、そしてアルコールの匂いがむせたくなる程に強い。
「ここで待っていてください。彼がいるか見てきます」
 私は壁に寄り掛かり、部屋の中を観察する。ざっと見ると狭い部屋に真昼から二十人ぐらいいる。夜には何人いるのか知るのが怖い。
「お嬢さん、ベッドのお供を探しているのかい?」
 凄く体の大きな男が汚い歯を見せながら近寄ってくる。一歩近づく度に酷い口臭が襲い掛かってくる。
「結構よ」
「お高く留まるなよ。こんな店にいるのは男を探しているからだろう?」
「そうね。男を探しているけど、あなたではないわ」
 男の表情が歪む。
「へへへ。口の減らねぇ女だな。そういう女ってベッドじゃよく啼くんだよな。お前もそうだろ?」
 男はすぐ目の前までくると私の肩を掴んで上から顔を近付けてくる。
「ちょっ、放して!」
 彼の手首を掴んで離そうとするけど力強く大きな手がギリギリと私の肩に食い込む。
「放……してぇ!」
 私は押し付けられた壁に貼り付けてあった書類を掴むと一気に彼の顔の横に叩き付ける。
「放し……な……さい!」
 
バシ バシ バシッ
 
「ぎゃぁあぁぁぁああ!」
 書類を貼り付けていた画鋲が奴の頬に刺さる。
 男は殺気立った血走った眼で私の首を掴む。大きな手が私の首に巻き付く。気道が圧迫されて息が吸えない。
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