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第三章 転生生贄は甘い生活を送る
23 赤い小指(後編)
「……素敵」
彼の美貌に異質の妖しさが混ざる。それがとても美しい。興奮しているのか、彼の八重歯が先程よりも長い。
「俺が怖い?」
「怖くない。だって、とても綺麗だもの」
彼は私の指に軽くキスをする。口元が隠れているのに、目が物凄く嬉しそうに細められている。
「しっかりと抱き着いていてね」
彼の肩に腕を回す。
いい香りがする。
ルーンとは違う肩幅に体の硬さ、冷たい体温、そして滑々とした皮膚。抱き着いただけなのにイク時のように下腹部がギュッと締まる。
「……っ」
荒くなった呼吸は彼も感じているはずなのに、何も言わないでいてくれる。私の腰と背中をきつく抱き寄せる。
ぐんっ
「きゃっ!」
内臓が持ち上がるみたいだ。
彼に必死に抱き着く。彼の羽がバサッバサッと音がして羽ばたく度にスピードが乗る。体が左右に揺さぶられる。ドラゴンよりもはるかに荒々しい飛行だ。怖い気持ちを押し殺し、彼の胸に顔を押し付ける。
景色を眺める余裕なんかない。
羽が動く度に全身が激しく揺さぶられる。
酔う。
なのに、彼に触れている部分から絶えず快感に似た刺激が流れ込んでくる。
小さな衝撃がガクンときて、足が水に浸かる感覚にどこかで到着をした事を悟る。到着をした後でもまだ体が揺れている感覚が残っている。ライフィスの腕は私の体をきつく抱きしめたままだ。
「ライフィス」
「……放さないと、ダメ?」
「……放して」
彼はゆっくりと腕を解く。そして最後に私の首に軽くキスをしてから離れる。
周りは一面花で溢れている。漂っているここまで濃厚な花の香りは初めて嗅ぐ。
「凄い! 自然の中でこんなに花が咲いているのは見た事がないわ!」
「ふふ、綺麗だよね。でもやっぱり一番美しく咲いている花はスイちゃんだよ」
私は少し困った表情で彼を見るとライフィスは笑いながらピンクの花を私の耳の上に挿してくれる。私が色んな花の香りを順番に嗅いでいると、彼は近くに座る。何かを作っているかと思ったら花冠を編んでいる。
「ふふふ、こういう事が出来る男性は他には知らないわ。素晴らしい才能よ」
頭に乗せられた花冠に触れながら笑うと彼はポケットから何かを取り出す。
「それじゃこれも気に入ってくれるかな。足を貸して」
「足?」
彼は座っている私の足を持ち上げ、自分の膝に乗せる。
「スイちゃんは本当に素敵だ。……本当に、悪魔を差別しないんだね。嬉しいな。こんなにも本当の自分でいられるのは初めてだよ」
小さな瓶から真っ赤な色を小指につけ、私の爪に塗っていく。前世でもそういうお洒落をしていた記憶がある。この世界ではそういう物は見かけた事はない。
「爪紅って言うんだって。街で流行っている」
「ふふ……以前を思い出すわ」
「以前にも爪紅をした事あるの?」
「……あなたも、差別をしない? 嫌にならない?」
「君の事を嫌いになるわけないよ」
「……転生者」
以前ルーンが使った単語を使ってみる。
「……ぁあ、なるほど。それはなんか色々と納得出来るな」
彼の小さな呟きに体が強張る。
「大丈夫。スイちゃんはスイちゃんだよ。悪魔は別に転生者を嫌っていない」
彼が優しく頭を撫でてくれる。その言葉に少し泣きそうになる。彼はそんな私に優しく微笑んでから爪に視線を戻す。小さな瓶に小指の先を差し込み、紅を着ける。
「人間社会では迫害されたでしょう。大変だったよね」
「……うん。ドラゴンの、ルーンへの、生贄にされた。結果としては最高の出来事だったけど」
「あぁ……ははは、なるほど。そうやって彼に出会ったのか」
足の爪がすべて終わると彼は手の爪へと移行する。綺麗な薄紅色の色だ。手の爪も終わると私はそれを空にかざす。彼の小指は真っ赤に染まっている。まるでお揃いだ。
「綺麗! ふふ、ライフィスのそれ、落ちるの?」
「数日は赤いかな。いつでも塗ってあげる。どう、俺も綺麗?」
彼は小指を立てて自分の顔の前に手を持ってくる。遊んでいるのに、妙に似合っていて妖艶だ。
「うん、ライフィスは、とても綺麗」
私はその整った顔を見て彼の頬に手を伸ばす。
「ライフィスも、迫害された?」
彼は私の掌にキスをする。
「幼少期は人間社会から、大人になってからは悪魔から。どちらも酷い」
「人間よりも吸血鬼でいたい理由を聞いてもいい?」
「俺の外見や能力、寿命は人間寄りではないからね。後はやっぱり……」
「やっぱり?」
彼は少し笑うと私の手首にキスをする。そして柔らかな舌でねっとりと舐める。
「あっ⁉︎ あ……ん、ふっ、……っ」
手首を舐められているだけなのに激しい快感が爆発する。体から力が抜け、草原に転がる。
「噛みたい。特に好きな人は、気が狂いそうになるくらい噛みたくなる」
力が抜けた私の横に寝っ転がり、体の力が戻ってくるまで髪を撫でてくれる。
「この体は悪魔だよ。見た目が人間でも、近くに来るだけでみんな影響されてしまう。影響に流されなかったり、俺を理解してくれたのはスイちゃんだけなんだ」
「私も影響を受けてるわ」
「触れればね。悪魔でも触れたら影響を受けるほど吸血鬼の催淫作用は強いから無理ないよ。でも、君はそれに流されていない。効いて欲しい女性にだけ効かないなんてね。……スイちゃん、覚悟してね。君が彼から離れないように、俺も君から離れるつもりはないよ」
ライフィスはとても美しい顔で微笑む。
彼の美貌に異質の妖しさが混ざる。それがとても美しい。興奮しているのか、彼の八重歯が先程よりも長い。
「俺が怖い?」
「怖くない。だって、とても綺麗だもの」
彼は私の指に軽くキスをする。口元が隠れているのに、目が物凄く嬉しそうに細められている。
「しっかりと抱き着いていてね」
彼の肩に腕を回す。
いい香りがする。
ルーンとは違う肩幅に体の硬さ、冷たい体温、そして滑々とした皮膚。抱き着いただけなのにイク時のように下腹部がギュッと締まる。
「……っ」
荒くなった呼吸は彼も感じているはずなのに、何も言わないでいてくれる。私の腰と背中をきつく抱き寄せる。
ぐんっ
「きゃっ!」
内臓が持ち上がるみたいだ。
彼に必死に抱き着く。彼の羽がバサッバサッと音がして羽ばたく度にスピードが乗る。体が左右に揺さぶられる。ドラゴンよりもはるかに荒々しい飛行だ。怖い気持ちを押し殺し、彼の胸に顔を押し付ける。
景色を眺める余裕なんかない。
羽が動く度に全身が激しく揺さぶられる。
酔う。
なのに、彼に触れている部分から絶えず快感に似た刺激が流れ込んでくる。
小さな衝撃がガクンときて、足が水に浸かる感覚にどこかで到着をした事を悟る。到着をした後でもまだ体が揺れている感覚が残っている。ライフィスの腕は私の体をきつく抱きしめたままだ。
「ライフィス」
「……放さないと、ダメ?」
「……放して」
彼はゆっくりと腕を解く。そして最後に私の首に軽くキスをしてから離れる。
周りは一面花で溢れている。漂っているここまで濃厚な花の香りは初めて嗅ぐ。
「凄い! 自然の中でこんなに花が咲いているのは見た事がないわ!」
「ふふ、綺麗だよね。でもやっぱり一番美しく咲いている花はスイちゃんだよ」
私は少し困った表情で彼を見るとライフィスは笑いながらピンクの花を私の耳の上に挿してくれる。私が色んな花の香りを順番に嗅いでいると、彼は近くに座る。何かを作っているかと思ったら花冠を編んでいる。
「ふふふ、こういう事が出来る男性は他には知らないわ。素晴らしい才能よ」
頭に乗せられた花冠に触れながら笑うと彼はポケットから何かを取り出す。
「それじゃこれも気に入ってくれるかな。足を貸して」
「足?」
彼は座っている私の足を持ち上げ、自分の膝に乗せる。
「スイちゃんは本当に素敵だ。……本当に、悪魔を差別しないんだね。嬉しいな。こんなにも本当の自分でいられるのは初めてだよ」
小さな瓶から真っ赤な色を小指につけ、私の爪に塗っていく。前世でもそういうお洒落をしていた記憶がある。この世界ではそういう物は見かけた事はない。
「爪紅って言うんだって。街で流行っている」
「ふふ……以前を思い出すわ」
「以前にも爪紅をした事あるの?」
「……あなたも、差別をしない? 嫌にならない?」
「君の事を嫌いになるわけないよ」
「……転生者」
以前ルーンが使った単語を使ってみる。
「……ぁあ、なるほど。それはなんか色々と納得出来るな」
彼の小さな呟きに体が強張る。
「大丈夫。スイちゃんはスイちゃんだよ。悪魔は別に転生者を嫌っていない」
彼が優しく頭を撫でてくれる。その言葉に少し泣きそうになる。彼はそんな私に優しく微笑んでから爪に視線を戻す。小さな瓶に小指の先を差し込み、紅を着ける。
「人間社会では迫害されたでしょう。大変だったよね」
「……うん。ドラゴンの、ルーンへの、生贄にされた。結果としては最高の出来事だったけど」
「あぁ……ははは、なるほど。そうやって彼に出会ったのか」
足の爪がすべて終わると彼は手の爪へと移行する。綺麗な薄紅色の色だ。手の爪も終わると私はそれを空にかざす。彼の小指は真っ赤に染まっている。まるでお揃いだ。
「綺麗! ふふ、ライフィスのそれ、落ちるの?」
「数日は赤いかな。いつでも塗ってあげる。どう、俺も綺麗?」
彼は小指を立てて自分の顔の前に手を持ってくる。遊んでいるのに、妙に似合っていて妖艶だ。
「うん、ライフィスは、とても綺麗」
私はその整った顔を見て彼の頬に手を伸ばす。
「ライフィスも、迫害された?」
彼は私の掌にキスをする。
「幼少期は人間社会から、大人になってからは悪魔から。どちらも酷い」
「人間よりも吸血鬼でいたい理由を聞いてもいい?」
「俺の外見や能力、寿命は人間寄りではないからね。後はやっぱり……」
「やっぱり?」
彼は少し笑うと私の手首にキスをする。そして柔らかな舌でねっとりと舐める。
「あっ⁉︎ あ……ん、ふっ、……っ」
手首を舐められているだけなのに激しい快感が爆発する。体から力が抜け、草原に転がる。
「噛みたい。特に好きな人は、気が狂いそうになるくらい噛みたくなる」
力が抜けた私の横に寝っ転がり、体の力が戻ってくるまで髪を撫でてくれる。
「この体は悪魔だよ。見た目が人間でも、近くに来るだけでみんな影響されてしまう。影響に流されなかったり、俺を理解してくれたのはスイちゃんだけなんだ」
「私も影響を受けてるわ」
「触れればね。悪魔でも触れたら影響を受けるほど吸血鬼の催淫作用は強いから無理ないよ。でも、君はそれに流されていない。効いて欲しい女性にだけ効かないなんてね。……スイちゃん、覚悟してね。君が彼から離れないように、俺も君から離れるつもりはないよ」
ライフィスはとても美しい顔で微笑む。
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