似非王子と欠陥令嬢

ちゃろっこ

文字の大きさ
上 下
326 / 339
縁の紡ぐ道

326

しおりを挟む
理由に辿り着きルシウスはガリガリと頭を掻きむしった。

突然奇行に走り出したルシウスにキャロルが若干たじろぐ。

「でっ殿下?」

「…好きだよ。」

「えっ?
あぁ、はい。
今回は1本しか買ってないんで今度多めに買って来ますね。」

「えっ?」

「いやだから串焼き。」

「…あっうん。
ありがとう。」

こいつ何か怖いとジリジリとキャロルが後退る。

そんなキャロルの手を思わずルシウスが掴んだ。

「なっ何ですか?」

「…あっいやえっと。」

自分でも何故掴んでしまったのか分からない。

ルシウスは慌てて言葉を探した。

「頬に肉汁ついてたから。」

「えっまじですか?
ありがとうございます。」

キャロルはルシウスの手を解き頬をぐしぐしと擦る。

そんな2人にリアムに串焼きを渡したレオンが声をかけた。

「キャロルー。
そろそろ戻ろうぜー。
今夜の枕投げ大会のルール決めなきゃだろ?」

「あっはいそうですね。
殿下、リアム様失礼します。」

キャロルがペコりと頭を下げてパタパタと執務室から飛び出して行く。

また執務室が静けさを取り戻した。

「…殿下そんなに串焼き好きでしたっけ?」

「…さあね。」

何か言いたげなリアムにルシウスは素っ気なく返す。

ルシウスはまたペンを走らせながら考える。

あの時自分はキャロルが婚約者だったらと願ってしまった。

キャロルに隣にいて欲しいと願ってしまった。

この感情が何なのか分からない程鈍感なつもりは無い。

だが既に婚約者候補のお披露目をしてしまった後だ。

今更どうにかなる様な話ではない。

「…あーもう!!!!」

「殿下?!」

「あぁごめん。
何でもない。」

「…レオンに提案された通り後日キャロル嬢を呼び出したら良かったですね。」

「…今更でしょそんな事。」

ルシウスはぼんやりと窓の外に視線をやった。

中庭を走り抜けていく赤髪と黒髪が視界を横切る。

その隣に自分も並びたいと思ってしまいやけに胸が傷んだ。

ルシウスは胸の痛みに蓋をする様に視線を書類に戻しペンを再び手に取ったのだった。 
しおりを挟む

処理中です...