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渇望した物は
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「聖剣…………?」
「持っておるじゃろう?
王家にあるはずじゃよ。
儂らが人間の国から盗んで来たからな」
「………は?」
瞳を瞬かせるレイモンドにアルフォンスはニヤリと笑いかけた。
まるで悪戯が成功した子供の様な顔で。
「儂が専属契約をしていた頃も一度だけ魔族が現れた事があったんじゃよ。
その時は4眷属が来る事は無かったがもし来たら終わるからの。
儂とシルベスターで聖剣を盗み出したんじゃ。
いやああれは楽しかった」
「ただの泥棒じゃないすか」
「否定はせぬよ」
「……兄上に式典で贈られたのが確か聖剣だったよね?」
「………あっそう言えば」
「お前達はあれに触るんじゃないぞ。
レイモンド殿下なら10分、フィーなら一瞬で浄化されるからな。
生きていたいなら触れるんじゃない」
「何で私の方が短いんすか」
「単純にハイエルフと精霊の寿命の差じゃ」
「…なるほど」
寿命の差だと言われれば納得は出来た。
キースの剣にだけは触らない様にしよう。
普段使い慣れた物の方が良い上に斬れ味が良くないからと、使っている所は見た事がないが。
多分あれは馬車の中のどこかに転がっているはずである。
そんな重要アイテムなら式典で言っとけよと思わんでもない。
「後はまあそうじゃな…聖水でもぶっかければ動きを止める位は出来るじゃろうて」
「聖水ですか?」
「この国の教会では作られてないがな。
人間の国の教会にはある」
「何でこっちでは作られてないんすか?」
「この国は元々半魔が作った国じゃろうが。
半魔が聖水なんて作ってみろ。
肉体がドロドロ融けていくぞ」
「わーお」
聖水も触っちゃダメらしい。
ゾンビにはなりたくない為大人しく従うべきだろう。
「…兄上に手紙で知らせておくかな」
「それが良かろう。
お前達が人間の国に行っても役に立つ所か足手纏いじゃからのう。
あちらの国には魔素がない上に聖水に触れない奴が出来る事などあるまいて」
「…そうですね。
そうします」
「…さて長く話過ぎたな。
儂はもう寝る。
お前達も早く寝なさい。
明日からお前達は魔素を扱う練習だ」
「はい」
「うっす」
そう言ってアルフォンスは椅子から立ち上がった。
階段まで歩き立ち止まるとちらりと振り向く。
「あっ洗い物よろしく」
「げっ」
「儂、いっぱいお喋りして疲れたからの。
あとは頼んだぞい」
「………クソジジイ」
恨めしげに睨み付けるシルフィーにヒラヒラと手を振ると今度こそアルフォンスは立ち去った。
諦めた様に息を吐き、シルフィーは台所へと向かう。
「手伝おうか?
あまり何も出来ないけど」
「そっすねえ…。
じゃあ洗った皿を拭いて貰えます?
その後私がしまうんで」
「ん、分かった」
「ありがとうございます」
カチャカチャと皿を洗う音だけが台所に響く。
情報量が多過ぎて纏まらない頭には、静けさがありがたかった。
「…アルフォンス殿はさ」
「ん?」
「…………いや、なんでもない」
「言い出したなら最後まで言って下さいよ」
「……いや…うん…良い師匠だなと思ってさ」
「絶対嘘でしょ。
話逸らす為に今考えたでしょ」
「素直に逸らされてよ」
「まあ良いっすけど」
「良いんだ」
「まあ言いたくないなら別にいっかなと」
「…フィーらしいね」
「そっすか?
…よし、これで洗い物は全部っすかね?
風呂入って寝ましょっか」
「ん。
私は兄上に手紙を書いてくるよ」
「へーい」
レイモンドはトコトコと椅子に戻り腰掛ける。
手紙を書くと言っていたはずが白紙の羊皮紙を広げたままどこか遠くを見てぼんやりとしていた。
1人で頭の中を整理したいのだろう。
そう判断しシルフィーはベッドを整える為、静かに階段へと足を向けたのだった。
「持っておるじゃろう?
王家にあるはずじゃよ。
儂らが人間の国から盗んで来たからな」
「………は?」
瞳を瞬かせるレイモンドにアルフォンスはニヤリと笑いかけた。
まるで悪戯が成功した子供の様な顔で。
「儂が専属契約をしていた頃も一度だけ魔族が現れた事があったんじゃよ。
その時は4眷属が来る事は無かったがもし来たら終わるからの。
儂とシルベスターで聖剣を盗み出したんじゃ。
いやああれは楽しかった」
「ただの泥棒じゃないすか」
「否定はせぬよ」
「……兄上に式典で贈られたのが確か聖剣だったよね?」
「………あっそう言えば」
「お前達はあれに触るんじゃないぞ。
レイモンド殿下なら10分、フィーなら一瞬で浄化されるからな。
生きていたいなら触れるんじゃない」
「何で私の方が短いんすか」
「単純にハイエルフと精霊の寿命の差じゃ」
「…なるほど」
寿命の差だと言われれば納得は出来た。
キースの剣にだけは触らない様にしよう。
普段使い慣れた物の方が良い上に斬れ味が良くないからと、使っている所は見た事がないが。
多分あれは馬車の中のどこかに転がっているはずである。
そんな重要アイテムなら式典で言っとけよと思わんでもない。
「後はまあそうじゃな…聖水でもぶっかければ動きを止める位は出来るじゃろうて」
「聖水ですか?」
「この国の教会では作られてないがな。
人間の国の教会にはある」
「何でこっちでは作られてないんすか?」
「この国は元々半魔が作った国じゃろうが。
半魔が聖水なんて作ってみろ。
肉体がドロドロ融けていくぞ」
「わーお」
聖水も触っちゃダメらしい。
ゾンビにはなりたくない為大人しく従うべきだろう。
「…兄上に手紙で知らせておくかな」
「それが良かろう。
お前達が人間の国に行っても役に立つ所か足手纏いじゃからのう。
あちらの国には魔素がない上に聖水に触れない奴が出来る事などあるまいて」
「…そうですね。
そうします」
「…さて長く話過ぎたな。
儂はもう寝る。
お前達も早く寝なさい。
明日からお前達は魔素を扱う練習だ」
「はい」
「うっす」
そう言ってアルフォンスは椅子から立ち上がった。
階段まで歩き立ち止まるとちらりと振り向く。
「あっ洗い物よろしく」
「げっ」
「儂、いっぱいお喋りして疲れたからの。
あとは頼んだぞい」
「………クソジジイ」
恨めしげに睨み付けるシルフィーにヒラヒラと手を振ると今度こそアルフォンスは立ち去った。
諦めた様に息を吐き、シルフィーは台所へと向かう。
「手伝おうか?
あまり何も出来ないけど」
「そっすねえ…。
じゃあ洗った皿を拭いて貰えます?
その後私がしまうんで」
「ん、分かった」
「ありがとうございます」
カチャカチャと皿を洗う音だけが台所に響く。
情報量が多過ぎて纏まらない頭には、静けさがありがたかった。
「…アルフォンス殿はさ」
「ん?」
「…………いや、なんでもない」
「言い出したなら最後まで言って下さいよ」
「……いや…うん…良い師匠だなと思ってさ」
「絶対嘘でしょ。
話逸らす為に今考えたでしょ」
「素直に逸らされてよ」
「まあ良いっすけど」
「良いんだ」
「まあ言いたくないなら別にいっかなと」
「…フィーらしいね」
「そっすか?
…よし、これで洗い物は全部っすかね?
風呂入って寝ましょっか」
「ん。
私は兄上に手紙を書いてくるよ」
「へーい」
レイモンドはトコトコと椅子に戻り腰掛ける。
手紙を書くと言っていたはずが白紙の羊皮紙を広げたままどこか遠くを見てぼんやりとしていた。
1人で頭の中を整理したいのだろう。
そう判断しシルフィーはベッドを整える為、静かに階段へと足を向けたのだった。
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