school rifle.

ヨルムンガンド

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SEASON 1

転校生、来たる。

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 次の日、白羽一兵は自身が通う学校に足を運んでいた。いつも通りの毎日と呼べるものがそこにはあった。
 
校門を潜り、下駄箱を通って1階にある俺の教室である13HRへ足を運ぶ。この学年は、約200人ほどで構成されており、1から5まで全5クラスある。

 教室へ入ると、奴らイツメンが既にいた。教室の隅で、楽しく話している。決してカースト上位ではないが、そこそこの位置をキープしている奴らの集まりだ。

 「おーおはよー、一兵」

 「おはよう、陽平」

 俺はその中の1人である、柳瀬陽平やなせようへいに挨拶する。
 
 陽平は、少し茶色がかった髪と、着崩した制服が本人曰くチャームポイントらしい。切れ目のなかなかの二枚目で、密かに女子ウケがいいのは調査済みである。

 他にも、

 「おっす」

 お調子者の間宮観中まみやかんじゅう

 「……おはようございます……」

 頭脳派の菅谷鶺鴒すがやせきれい
 
 高校が始まってまだ2ヶ月しか経っていないのに、柳瀬達とはずっと前から親友だったかのような関係を築いている。

 彼らはまだ俺のに気づいていない。まさか俺が獸狩りをしているだなんて、夢にも思っていないだろう。

 獸自体の民衆の関心度も、あの災害以降は全く無くなってしまっている。被害は、その後も確実に起こっているのだが、混乱を恐れた政府が、事実を『隠蔽』したのだ。

 結局、本当に獸が襲来したのはあの1回のみ、というのが民衆の理解であり、一種の怪奇現象ぐらいにしか思われていない。

 「課題終わったかー?」

 柳瀬が訊いてくる。自分で言うのもあれだが、俺はそこそこ勉強が出来る。まぁ、本気を出せばオール満点も容易いのだが、職業柄、目立つのはあまり良くない。

 それでも、このグループでは一応真面目キャラで通っている。きっと俺に聞いてくるということは、菅谷に写経を断られたのだろう。そう察した俺は、助け舟を出す。

 「ほらよ、お望みの課題だよ」

 「おお、サンキューな!やっぱり、お前は話がわかるぜ」

 いつも通りの毎日。いつも通りの日常。まさか、突然それが崩れるなど誰も予想だにし無かったただろう。


_______________________________________


 「はーい、みんな席につけー。ショートやるぞー」
 
  気だるげな13HR担任の木梨秋留きなしあきる先生は、生徒達に呼びかける。

 皆も、同じように気だるげに席に着く。机に突っ伏して涎を垂らしている奴らもいる。だが、その眠気も吹き飛ぶような衝撃爆弾発言が先生の口から放たれた。

 「じゃあー、今日はー転校生の紹介をするぞー」

 「「!?」」

 クラス中がどよめき立つ。無理も無い。転校生の襲来とは、席替えにも勝るとも劣らない一大イベントなのだから。
 
 「喜べー野郎ども。女子だぞ」

 木梨先生は、男子に希望を与えていく。男子達は先生の発言を聞き、狂喜乱舞した。それも傍から見ていた女子達は、若干引き気味だった。

 「入っていいぞー」
 「失礼します」

 聞こえてきたのは、まるで銀の鈴を転がしたかのような澄んだ声だった。

 ドアが開けられる。

 入ってきたのは、美しい夜の闇をそのまま写し取ったかのような黒髪ロング。顔は、人形と見紛うばかりで、パーツの1つ1つの位置の均整が取れている。目は、左が黒、右目が「赤」のヘテロクロミア。すらっとしたプロポーションの取れた体型。

 つまりは、誰が見ても紛うことなき美少女だった。その証拠に、クラス中から「おぉ…」と声が上がった。
 
 「じゃあ、自己紹介宜しくー」
 
 木梨先生のやる気のない声は、美少女を前にしても変わることは無かった。

 「不知火炎華しらぬいえんかです。これから約1年間、よろしくお願いします」

 簡単な自己紹介を済ませると、俺の方を見て微笑んでくる。

 ((((っ!?))))

すると、俺の周りにいた男子が浮き足立つ。

 「おっ、おい今、俺の方に微笑んで来たぞ!」
 「はっ、何言ってんだよ?俺に向かって、笑ってくれたに決まってるだろ」

比較的俺と席の近い陽平と観中は、あるはずのない希望的観測をしていた。

 間違っても自意識過剰ではないが、多分あれは俺を見ていた。

 さらに想像となってしまうが、あれは木塚さんの言っていた新入りルーキーだろう。きっと事前に木塚さんから俺の情報を聞かされていたのだろう。

 だが、気になることが一つだけあった。

「空いてる席は………おっ、白羽の隣が空いてるからそこで頼むわ」
 
 やはりこうなったか。

 まあ、隣が都合よく空いているなど、滅多にない。というか、不自然過ぎる。木塚さんが学校にでもしたのだろう。先生の陰湿ないじめじゃなくて本当に良かった。陽平達の羨望の眼差しがあること以外は、全く問題ない。

 寧ろ、不知火が本当に職業上の後輩ならば、都合がいい。ある程度距離を詰めることは、同業者として重要なことだからだ。

 彼女は、席に着くと開口一番、

「よろしくお願いしますね?白羽

  これは、間違いない。此奴コイツは、獸狩りだ。


_______________________________________


 休み時間、不知火は沢山の生徒に質問攻めにあうというテンプレを、消化していた。

 俺には、同じ立場の人間だからこそ、彼女が皆に向けている笑顔が、作り物だということが分かる。

 獣狩りは、基本的に周囲にその存在が漏れてはいけないのだ。理由は、先程と同じく『混乱の回避』。

 人と接触すればするほど、その分秘密が漏れる可能性は高まる。そのため、獸狩りには周囲と適度な距離感を保つことが要求される。
 
 「え、彼氏とかいたことあるの?」
 「お付き合いは、今まで1度もしたことがないですね」
 「え」
 「マジかよ…」
 「じゃあじゃあ、好きなタイプとかは?」
 
 タイプですか、と言葉を切った後、不知火は此方を向きニヤッとした。

 不味い。

 俺の本能が危険信号を発している。何か俺の学園生活そのものが脅かされてしまうようなことが起こる気がする。

 

「あそこに座られている、白羽さんですね」

  

 彼女は笑いながら先生以上の爆弾発言をかます。



 ____さようなら、俺の平穏な学園生活。
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