school rifle.

ヨルムンガンド

文字の大きさ
2 / 8
SEASON 1

転校生、来たる。

しおりを挟む
 
 次の日、白羽一兵は自身が通う学校に足を運んでいた。いつも通りの毎日と呼べるものがそこにはあった。
 
校門を潜り、下駄箱を通って1階にある俺の教室である13HRへ足を運ぶ。この学年は、約200人ほどで構成されており、1から5まで全5クラスある。

 教室へ入ると、奴らイツメンが既にいた。教室の隅で、楽しく話している。決してカースト上位ではないが、そこそこの位置をキープしている奴らの集まりだ。

 「おーおはよー、一兵」

 「おはよう、陽平」

 俺はその中の1人である、柳瀬陽平やなせようへいに挨拶する。
 
 陽平は、少し茶色がかった髪と、着崩した制服が本人曰くチャームポイントらしい。切れ目のなかなかの二枚目で、密かに女子ウケがいいのは調査済みである。

 他にも、

 「おっす」

 お調子者の間宮観中まみやかんじゅう

 「……おはようございます……」

 頭脳派の菅谷鶺鴒すがやせきれい
 
 高校が始まってまだ2ヶ月しか経っていないのに、柳瀬達とはずっと前から親友だったかのような関係を築いている。

 彼らはまだ俺のに気づいていない。まさか俺が獸狩りをしているだなんて、夢にも思っていないだろう。

 獸自体の民衆の関心度も、あの災害以降は全く無くなってしまっている。被害は、その後も確実に起こっているのだが、混乱を恐れた政府が、事実を『隠蔽』したのだ。

 結局、本当に獸が襲来したのはあの1回のみ、というのが民衆の理解であり、一種の怪奇現象ぐらいにしか思われていない。

 「課題終わったかー?」

 柳瀬が訊いてくる。自分で言うのもあれだが、俺はそこそこ勉強が出来る。まぁ、本気を出せばオール満点も容易いのだが、職業柄、目立つのはあまり良くない。

 それでも、このグループでは一応真面目キャラで通っている。きっと俺に聞いてくるということは、菅谷に写経を断られたのだろう。そう察した俺は、助け舟を出す。

 「ほらよ、お望みの課題だよ」

 「おお、サンキューな!やっぱり、お前は話がわかるぜ」

 いつも通りの毎日。いつも通りの日常。まさか、突然それが崩れるなど誰も予想だにし無かったただろう。


_______________________________________


 「はーい、みんな席につけー。ショートやるぞー」
 
  気だるげな13HR担任の木梨秋留きなしあきる先生は、生徒達に呼びかける。

 皆も、同じように気だるげに席に着く。机に突っ伏して涎を垂らしている奴らもいる。だが、その眠気も吹き飛ぶような衝撃爆弾発言が先生の口から放たれた。

 「じゃあー、今日はー転校生の紹介をするぞー」

 「「!?」」

 クラス中がどよめき立つ。無理も無い。転校生の襲来とは、席替えにも勝るとも劣らない一大イベントなのだから。
 
 「喜べー野郎ども。女子だぞ」

 木梨先生は、男子に希望を与えていく。男子達は先生の発言を聞き、狂喜乱舞した。それも傍から見ていた女子達は、若干引き気味だった。

 「入っていいぞー」
 「失礼します」

 聞こえてきたのは、まるで銀の鈴を転がしたかのような澄んだ声だった。

 ドアが開けられる。

 入ってきたのは、美しい夜の闇をそのまま写し取ったかのような黒髪ロング。顔は、人形と見紛うばかりで、パーツの1つ1つの位置の均整が取れている。目は、左が黒、右目が「赤」のヘテロクロミア。すらっとしたプロポーションの取れた体型。

 つまりは、誰が見ても紛うことなき美少女だった。その証拠に、クラス中から「おぉ…」と声が上がった。
 
 「じゃあ、自己紹介宜しくー」
 
 木梨先生のやる気のない声は、美少女を前にしても変わることは無かった。

 「不知火炎華しらぬいえんかです。これから約1年間、よろしくお願いします」

 簡単な自己紹介を済ませると、俺の方を見て微笑んでくる。

 ((((っ!?))))

すると、俺の周りにいた男子が浮き足立つ。

 「おっ、おい今、俺の方に微笑んで来たぞ!」
 「はっ、何言ってんだよ?俺に向かって、笑ってくれたに決まってるだろ」

比較的俺と席の近い陽平と観中は、あるはずのない希望的観測をしていた。

 間違っても自意識過剰ではないが、多分あれは俺を見ていた。

 さらに想像となってしまうが、あれは木塚さんの言っていた新入りルーキーだろう。きっと事前に木塚さんから俺の情報を聞かされていたのだろう。

 だが、気になることが一つだけあった。

「空いてる席は………おっ、白羽の隣が空いてるからそこで頼むわ」
 
 やはりこうなったか。

 まあ、隣が都合よく空いているなど、滅多にない。というか、不自然過ぎる。木塚さんが学校にでもしたのだろう。先生の陰湿ないじめじゃなくて本当に良かった。陽平達の羨望の眼差しがあること以外は、全く問題ない。

 寧ろ、不知火が本当に職業上の後輩ならば、都合がいい。ある程度距離を詰めることは、同業者として重要なことだからだ。

 彼女は、席に着くと開口一番、

「よろしくお願いしますね?白羽

  これは、間違いない。此奴コイツは、獸狩りだ。


_______________________________________


 休み時間、不知火は沢山の生徒に質問攻めにあうというテンプレを、消化していた。

 俺には、同じ立場の人間だからこそ、彼女が皆に向けている笑顔が、作り物だということが分かる。

 獣狩りは、基本的に周囲にその存在が漏れてはいけないのだ。理由は、先程と同じく『混乱の回避』。

 人と接触すればするほど、その分秘密が漏れる可能性は高まる。そのため、獸狩りには周囲と適度な距離感を保つことが要求される。
 
 「え、彼氏とかいたことあるの?」
 「お付き合いは、今まで1度もしたことがないですね」
 「え」
 「マジかよ…」
 「じゃあじゃあ、好きなタイプとかは?」
 
 タイプですか、と言葉を切った後、不知火は此方を向きニヤッとした。

 不味い。

 俺の本能が危険信号を発している。何か俺の学園生活そのものが脅かされてしまうようなことが起こる気がする。

 

「あそこに座られている、白羽さんですね」

  

 彼女は笑いながら先生以上の爆弾発言をかます。



 ____さようなら、俺の平穏な学園生活。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

偽夫婦お家騒動始末記

紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】 故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。 紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。 隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。 江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。 そして、拾った陰間、紫音の正体は。 活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...