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第一章
組合
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「今回集まって頂いたのは、この案件が少し特殊なものであるからです」
そうルクたちの前で、話を切り出したのは壮年の大男だった。精悍な顔に、白い顎髭を生やしている。目は鷹のような鋭さを帯びていて、顔の傷から歴戦の勇士であったことが伺える。
ここは、ギルド内にある応接間。絢爛豪華な装飾品がいたるところに配置され、まず一般人なら入ることが許されないだろう聖域。
豪奢な特注の机を中心として椅子が配置されている。ルクたちの向かい側に座るは、、、
___アルフレッド=ロクラタイナ。
スサム区の狩猟組合長である。若い頃は、数々の魔物を狩ってきたという。その中には魔王級もいたとかいないとか。付いた二つ名は『覇者』。
その後、ハンターを引退し、ギルマスになってハンター育成に努めている。
さて、そんなお偉いさんが何故ルクたちに会っているのかというと、
「今回の案件は、依頼主も異例なんですが、それよりも………」
「それよりも?」
「あの『事件』が関わっているんですよ」
「えっ!」
ルクは心底驚いている様子だった。だが、クリネにはあの事件と言われても、さっぱり何のことだか、分からない。
まさか昨日は、ルクに会う為の私服をわざわざ用意していてギルドには行っていないなどとは、口が裂けても言えない。
「す、すみません。あの事件についてご説明願いたいんですが……」
堪らず、質問する。すると、ギルマスは申し訳なさそうな顔をして、
「おっと、これは失礼。昨日の事件は、情報統制を敷いておりましたもので」
「そんなに重大な事件なのですか…」
「ええ、それはもう。ですが、いくら箝口令を出しても、人の噂とは恐ろしいもので…」
「そうですか………」
その後、ギルマスは事件の概要を話し始めた。内容をまとめるとこうだ。
昨夕、スサム区、アルシュミット通り二丁目にて、事件は発生した。イルサミ区長の一人娘が、護衛を2人(どちらも女性)引き連れ、街を散策中の所を襲撃された。
「しかも、襲ったのは人ではなく、なんと魔物だったのですよ」
「何ですって?」
信じられない。そんなことあるはずがない。
ベセノムは、街のシンボルとも言える城壁で囲まれている。空を飛べたとしても、城壁の上に設置された自律機銃により、撃ち落とされる。飛べないなら尚更だ。
最も可能性があるのが、観賞用として輸入された場合だ。
だが、それも考えづらい。ペットとしての魔物は、選別も調教も入念になされる。それこそ、今回のようなことがないようにだ。
「私達も現在調査中ですが、まだ原因は分かってないんですよ」
「そうだったんですか……」
知らぬ間に、随分と大きな事件が起こっていたようだ。
にしても、
(ルクさんは『巻き込まれ体質』なんですかね……?)
そんなことを思っていると、ギルマスがとある提案を持ちかけてきた。
「ルク君。君は、上級とは言っても新人なことに変わりはないです。この依頼は指名ですが、クリネ君と組んでくれないでしょうか?許可は、私の権限で出します」
「分かりました。僕もクリネさんがついてくれると助かるので」
「へぇ、珍しいですね。新人は、一人でクエストや依頼を受けたがるものですけど。そういうことでしたら、私で良ければご一緒させてもらいます」
新人あるあるの一つで、傲慢になりがちというのがある。何でも一人で成果を上げたがるのだ。そういう人に限って、無理をして命を落とす。初めのうちは経験を積んだ先輩について行くのが、正しい。
ギルマスは、二人の返事に頷き、まとめに入る。
「では、お二人の確認が取れたので今回の指名依頼はルクさんとクリネさんで遂行して頂きます。お二人共検討を祈ります」
「「了解しました!」」
二人が応接間を後にしようとすると、アルフレッドは、ルクに声を掛ける。
「どうしました?」
ルクがそう聞くと、彼は先程とは打って変わって、顔をくしゃっとさせて、
「死ぬんじゃねぇぞ」
とルクに言ってきた。もしかしたら、こちらの方が本性なのかもしれないと、ルクは感じた。
そうルクたちの前で、話を切り出したのは壮年の大男だった。精悍な顔に、白い顎髭を生やしている。目は鷹のような鋭さを帯びていて、顔の傷から歴戦の勇士であったことが伺える。
ここは、ギルド内にある応接間。絢爛豪華な装飾品がいたるところに配置され、まず一般人なら入ることが許されないだろう聖域。
豪奢な特注の机を中心として椅子が配置されている。ルクたちの向かい側に座るは、、、
___アルフレッド=ロクラタイナ。
スサム区の狩猟組合長である。若い頃は、数々の魔物を狩ってきたという。その中には魔王級もいたとかいないとか。付いた二つ名は『覇者』。
その後、ハンターを引退し、ギルマスになってハンター育成に努めている。
さて、そんなお偉いさんが何故ルクたちに会っているのかというと、
「今回の案件は、依頼主も異例なんですが、それよりも………」
「それよりも?」
「あの『事件』が関わっているんですよ」
「えっ!」
ルクは心底驚いている様子だった。だが、クリネにはあの事件と言われても、さっぱり何のことだか、分からない。
まさか昨日は、ルクに会う為の私服をわざわざ用意していてギルドには行っていないなどとは、口が裂けても言えない。
「す、すみません。あの事件についてご説明願いたいんですが……」
堪らず、質問する。すると、ギルマスは申し訳なさそうな顔をして、
「おっと、これは失礼。昨日の事件は、情報統制を敷いておりましたもので」
「そんなに重大な事件なのですか…」
「ええ、それはもう。ですが、いくら箝口令を出しても、人の噂とは恐ろしいもので…」
「そうですか………」
その後、ギルマスは事件の概要を話し始めた。内容をまとめるとこうだ。
昨夕、スサム区、アルシュミット通り二丁目にて、事件は発生した。イルサミ区長の一人娘が、護衛を2人(どちらも女性)引き連れ、街を散策中の所を襲撃された。
「しかも、襲ったのは人ではなく、なんと魔物だったのですよ」
「何ですって?」
信じられない。そんなことあるはずがない。
ベセノムは、街のシンボルとも言える城壁で囲まれている。空を飛べたとしても、城壁の上に設置された自律機銃により、撃ち落とされる。飛べないなら尚更だ。
最も可能性があるのが、観賞用として輸入された場合だ。
だが、それも考えづらい。ペットとしての魔物は、選別も調教も入念になされる。それこそ、今回のようなことがないようにだ。
「私達も現在調査中ですが、まだ原因は分かってないんですよ」
「そうだったんですか……」
知らぬ間に、随分と大きな事件が起こっていたようだ。
にしても、
(ルクさんは『巻き込まれ体質』なんですかね……?)
そんなことを思っていると、ギルマスがとある提案を持ちかけてきた。
「ルク君。君は、上級とは言っても新人なことに変わりはないです。この依頼は指名ですが、クリネ君と組んでくれないでしょうか?許可は、私の権限で出します」
「分かりました。僕もクリネさんがついてくれると助かるので」
「へぇ、珍しいですね。新人は、一人でクエストや依頼を受けたがるものですけど。そういうことでしたら、私で良ければご一緒させてもらいます」
新人あるあるの一つで、傲慢になりがちというのがある。何でも一人で成果を上げたがるのだ。そういう人に限って、無理をして命を落とす。初めのうちは経験を積んだ先輩について行くのが、正しい。
ギルマスは、二人の返事に頷き、まとめに入る。
「では、お二人の確認が取れたので今回の指名依頼はルクさんとクリネさんで遂行して頂きます。お二人共検討を祈ります」
「「了解しました!」」
二人が応接間を後にしようとすると、アルフレッドは、ルクに声を掛ける。
「どうしました?」
ルクがそう聞くと、彼は先程とは打って変わって、顔をくしゃっとさせて、
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