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第二話 サル(絵)

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 そして僕らノブナガ一行は、信長の居城である安土城の前にやって来た。

「誰だお前らは!」
 案の定入り口の門番に足止めされるが、

「誰?お前はの顔を忘れたのか?」
 そう僕が言うと、

「しっ、失礼致しましたあっ!!」
 と平伏され、その場を通される。

 これは僕の「感染する平凡」。
 人が感じる違和感を、「それでいいや」と思わせる能力だ。

「相変わらずトンでもないですね、あなたのその存在感ノブナーガは」
 と賢者エッダが肩をすくめ、

「まあまあ、結果オーライでええやないの」
 と豪商が豪快に笑う。

 実はこの「感染する平凡」は存在感ノブナーガではなくて、僕の世界の住民なら使能力なのだ。
 また、これがあるからこそ、僕らの世界はなのだ。
 そして僕以外の世界で、小競り合いが絶えない理由にも合点がいった。

 だからこの世界や他の誤世界のノブナガ達がこの能力を使えないと知った時に、存在感ノブナーガは切り札に隠しておこうと思った。

「ウキキッ」
「おー、藤吉郎はんは今日もご機嫌でんなあ」
 僕らに駆け寄ってきたオスの足軽武将に、豪商ダダが話しかける。

 は先ほどの僕の能力「感染する平凡」の検証の結果生み出した、

 その辺の山で拾った只の猿🐵なのだが、皆からは織田の武将の一人と思われて誰一人疑っていない。

「サル君今日も可愛い!本当の猿みたい」
 と娼婦オードリーが藤吉郎を撫でる。

 うん、「みたい」じゃなくて本当の日本猿だからね?



「さて無事に信長として城に入れたけど」
「まずは何をするの?」
 娼婦オードリー魔女オリヴィアが、そう尋ねてくる。

「当然、今後の対策を考えるのに情報収集です……」
 と言いかける賢者エッダに、

「待った!
 その前にもっと必要なものがあるやろ」
 と豪商ダダが割り込む。

「大事なもの?」
 と賢者が訝しむ顔をすると、

「ズバリ、銭や」
 豪商は、そう言って指で丸を作る。

「何をするにも銭はかかるし、あって困るものやあれへん」
「いや、そりゃそうかも……」

 ……知れないけどさあ。

「ウキキッ!」
「ほら、藤吉郎はんもうなづいてるで?」

 いや豪商、それ別に相槌打ってるわけじゃないと思うけど。

「と、言う事で。
 ウチの存在感ノブナーガ、『一攫千金』の出番やでぇ!」

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