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第八話 魔女の卓球

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 オリヴィアは魔女と呼ばれているが、特段何か魔法が使える訳ではない。
 ではなぜ彼女が魔女と呼ばれるようになったのか。

 僕はその理由を、意外なタイミングで知る。
 
「じゃーん!」
 と豪商ダダが用意したのは卓球🏓台。

「こちら今度売り出す予定の、新商品になりますわ」

 いやいや異世界から持ち込んで売るならもっとこう、手軽なリバーシとかさあ。
 単にダダが遊びたかっただけじゃないの?
「へー卓球か。懐かしい」
 と魔女オリヴィア。

「お、魔女はんも卓球好きなん?」
「というか、元の世界では卓球界の魔女って言われてたよ?」
 とオリヴィア。
 えっ呼び名の由来そこなの!?

「そんな訳ないでしょ!」
 とオリヴィアが声を荒げる。

「オリヴィアのノブナガ家は代々呪いや薬の調合を得意とする家系なの。
 だからオズくんが、派手な攻撃魔法でどかーんとか想像してるなら、ちょっと違うかな?」

 ちなみにオリヴィアは一人称、つまり自分自身を名前で呼ぶ。僕の世界でも子供の頃は少なくなかったが、成人してからも名前呼びするのは珍しい。
 姉エッダは「ワタクシ」なのに。まあ彼女のあの慇懃無礼な口調が正解なのかは甚だ疑問だが。

「凡人、なんかワタクシに対してまた失礼な事を考えていませんか?」
 と賢者エッダ。

 うん気のせいだ、と言うか心を読むな心を。
「でもオリヴィアが卓球が得意なのは事実です。一緒に住んでいた頃は、結局ワタクシは彼女に一度も勝てなかったですし」

 それエッダが運動神経ポンコツなだけ……いや何でもないです。

「すっっごく失礼な事考えてませんか、凡人?
 確かに私はオリヴィアみたいに運動が得意、とはいきませんが、代わりに鍛え上げたこの脳細胞がある」
「おっ、て事は姉妹卓球対決って事やな」
 エッダの言葉に、豪商ダダが煽るように被せる。

「ええいいでしょう、所詮はルールのあるスポーツ。
 それに従って戦うなら、ワタクシが負ける事などあり得ません」
「お姉ちゃんと勝負かー。子供の頃以来だからワクワクするよ!」
 若干の温度差はあるが、姉妹は対決に燃えていた。

「ちなみに、ただ勝負するだけじゃ面白くないから脱衣卓球にするで?」
「……え?」
 突然のダダの提案に、エッダが硬直する。

「一点取られる度に一枚脱いでいくルールで、どないやろ?」
「うん、オリヴィアはそれでいいよー」
「ええええええっ!?」

 エッダは勝負の前の心理戦で既に負けていた。
 そして勝負開始から時間をかけずにパンツ一丁残してほぼ全裸、これ以上は無理と泣いて土下座で決着となったのだった。
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