21 / 58
就活編
-19.9°F (蜂に泣きっ面 後編)
しおりを挟む
「それにしても、ここはどこかしら?」
蜂夫人は首を傾げる。
先程からタクシーを待っているのだが一行に車すら通る気配がなく、手にしたスマホも圏外で繋がらない。
「見たところ、そんな山奥という訳でも無さそうなのだけど」
彼女が迷い込んだ場所は県道のそれなりに大きな道路に面しており、しかも日中。
にも関わらず、人の気配がまるで感じられない。
まるで人が消えてしまった世界に迷い込んだかのように。
「……なんて、そんな訳ないか」
蜂夫人は道路をしばらく歩いて、やがて一軒のコンビニにたどりつく。
そこで固定電話を借りて連絡を取ろうと思い、店内に入ってみるがカウンターに店員の姿がない。
店内を見回すと、こちらに背中を向けてしゃがみ込んでいる、コンビニ制服を着た店員らしき人の姿が。
行儀が悪いと思いつつ、何かの作業かもしれないと蜂夫人が声をかけると。
「ウヴォアー!」
振り返った店員の顔に血の気はなく、どころかその頭は半分腐っていた。
いわゆるゾンビという奴だ。
「ぎゃあああっ!」
驚いて蜂夫人がコンビニの外に飛び出すと、先程まで無人だったその場所には、コンビニにいたのと同様の大量のゾンビの群れ。
蜂夫人に気づくと、ゆっくりと近づいてくる。
「おか、おかっ!
おかしいでしょこんなのおおおっ!!」
怒声をあげながらも蜂夫人はゾンビの間を縫って、這う這うのテイで逃げ出した。
動きがゆっくりなため辛くも逃げ仰せた、と思ったのだが。
「崖っ!?」
進んだ先は見下ろす深さがあり、これ以上進めない。
「まさか、わざとあのゾンビ達に誘導された?!」
のかどうかはともかく、背後からはゾンビの群れがゆっくり迫ってくる。
と、そのゾンビの先頭に見覚えのある顔を見かける。
それは先日飲食店で箸立てベロベロを引き起こし、その後自殺した中学生。
「ま、まさかあの中学生が私を恨んで、呪いの世界に引きずり込んだ!?」
そう蜂夫人は考え、恐怖した。
「た、確かに子供をけしかけてタイショーにダメージを与えようと発案したのは私だけども!
中学生をSNSで唆したり、口封じをしたのは私じゃないから、恨むのはお門違いよ!」
『ほうほう。では、そっちの会社ぐるみで我が社にダメージを与えたのは認めると』
ふいに頭上から、館内放送のような声が聞こえる。
「誰っ!?」
と蜂夫人が声をあげた所で、頭上のライトが点灯、周囲の背景がバタバタと倒れる。
蜂夫人が街中だと思っていたこの場所は、実は野球のドーム内に作られた巨大なセットであった。
「あ……え?」
しかしネタバレされてもなお、何が起きているか分からず混乱する蜂夫人。
『これを証拠にあんたの会社を潰すのも可能だが、実はうちの社員候補の彼女さんが面白い提案をしてきてねえ』
館内放送の声の主、リンリン係長が嬉しそうにそう言うのだった。
❄️ ❄️ ❄️
エイコが蜂夫人の会社に持ちかけたのは、タイショーとビーカンパニーの共同で使える使いきりのポイントカード。
一枚で1000円分使えるこのカードは純金製で、制作に1000円以上のコストがかかる。
そしてその費用は蜂夫人の会社持ちだ。
更にこのカード、金製品として換金すると1500円ぐらいの価値がある事が判明する。
ゆえにカードは飛ぶ様に売れ、作れば作るほど蜂夫人の会社は大赤字だ。
「お、覚えてなさい!!」
と蜂夫人が怒ったとか怒らないとか。
まあもしまた仕掛けて来たら、エイコが倍以上に反撃するんですけどね。
ちなみに。
今回のエイコの活躍で、タイショーが何らかの表彰なり報酬なりを用意すると言う話になったのだが。
彼女は名誉もお金も間に合ってる、だったら今回の事件を引き起こして自殺した中学生の遺族に何かをしてあげて、と発言したのだった。
蜂夫人は首を傾げる。
先程からタクシーを待っているのだが一行に車すら通る気配がなく、手にしたスマホも圏外で繋がらない。
「見たところ、そんな山奥という訳でも無さそうなのだけど」
彼女が迷い込んだ場所は県道のそれなりに大きな道路に面しており、しかも日中。
にも関わらず、人の気配がまるで感じられない。
まるで人が消えてしまった世界に迷い込んだかのように。
「……なんて、そんな訳ないか」
蜂夫人は道路をしばらく歩いて、やがて一軒のコンビニにたどりつく。
そこで固定電話を借りて連絡を取ろうと思い、店内に入ってみるがカウンターに店員の姿がない。
店内を見回すと、こちらに背中を向けてしゃがみ込んでいる、コンビニ制服を着た店員らしき人の姿が。
行儀が悪いと思いつつ、何かの作業かもしれないと蜂夫人が声をかけると。
「ウヴォアー!」
振り返った店員の顔に血の気はなく、どころかその頭は半分腐っていた。
いわゆるゾンビという奴だ。
「ぎゃあああっ!」
驚いて蜂夫人がコンビニの外に飛び出すと、先程まで無人だったその場所には、コンビニにいたのと同様の大量のゾンビの群れ。
蜂夫人に気づくと、ゆっくりと近づいてくる。
「おか、おかっ!
おかしいでしょこんなのおおおっ!!」
怒声をあげながらも蜂夫人はゾンビの間を縫って、這う這うのテイで逃げ出した。
動きがゆっくりなため辛くも逃げ仰せた、と思ったのだが。
「崖っ!?」
進んだ先は見下ろす深さがあり、これ以上進めない。
「まさか、わざとあのゾンビ達に誘導された?!」
のかどうかはともかく、背後からはゾンビの群れがゆっくり迫ってくる。
と、そのゾンビの先頭に見覚えのある顔を見かける。
それは先日飲食店で箸立てベロベロを引き起こし、その後自殺した中学生。
「ま、まさかあの中学生が私を恨んで、呪いの世界に引きずり込んだ!?」
そう蜂夫人は考え、恐怖した。
「た、確かに子供をけしかけてタイショーにダメージを与えようと発案したのは私だけども!
中学生をSNSで唆したり、口封じをしたのは私じゃないから、恨むのはお門違いよ!」
『ほうほう。では、そっちの会社ぐるみで我が社にダメージを与えたのは認めると』
ふいに頭上から、館内放送のような声が聞こえる。
「誰っ!?」
と蜂夫人が声をあげた所で、頭上のライトが点灯、周囲の背景がバタバタと倒れる。
蜂夫人が街中だと思っていたこの場所は、実は野球のドーム内に作られた巨大なセットであった。
「あ……え?」
しかしネタバレされてもなお、何が起きているか分からず混乱する蜂夫人。
『これを証拠にあんたの会社を潰すのも可能だが、実はうちの社員候補の彼女さんが面白い提案をしてきてねえ』
館内放送の声の主、リンリン係長が嬉しそうにそう言うのだった。
❄️ ❄️ ❄️
エイコが蜂夫人の会社に持ちかけたのは、タイショーとビーカンパニーの共同で使える使いきりのポイントカード。
一枚で1000円分使えるこのカードは純金製で、制作に1000円以上のコストがかかる。
そしてその費用は蜂夫人の会社持ちだ。
更にこのカード、金製品として換金すると1500円ぐらいの価値がある事が判明する。
ゆえにカードは飛ぶ様に売れ、作れば作るほど蜂夫人の会社は大赤字だ。
「お、覚えてなさい!!」
と蜂夫人が怒ったとか怒らないとか。
まあもしまた仕掛けて来たら、エイコが倍以上に反撃するんですけどね。
ちなみに。
今回のエイコの活躍で、タイショーが何らかの表彰なり報酬なりを用意すると言う話になったのだが。
彼女は名誉もお金も間に合ってる、だったら今回の事件を引き起こして自殺した中学生の遺族に何かをしてあげて、と発言したのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
24
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる