【完結】極寒彼女 〜平凡な僕の就職活動とツンドラ系内親王〜

再び就活編

-26°F（論破王トントン）

「人が良いにも程があるわ。
　レン、脳みそに排泄物でも詰まってるの？」

　待屋の案件を引き受けた事をエイコに報告した、開口1番がコレである。

「よりによって就職先のライバル会社に手を貸すなんて、本気で気持ち悪理解出来ないわ」
「一応タイショーの社長とリンリン係長には相談したよ？
　今後券売機導入の参考にしたいから、レポート書いてくれたら協力しても良いってさ」
「どうせまたタダ働きなんでしょ？」
「ところがどっこい、今回はビーカンパニーから報酬が出るぞ。
　問題解決したら待屋一年分食べ放題の食券だ」
「ならそれをとっととネットサイトで売って換金する事ね。
　一年３食外食なんて食べ続けたらバカになるわよ？」

　めちゃめちゃ偏見に満ちたご意見、ありがとうございます。
　まあ確かにエイコの手料理が絶品なので、最近は外で食べる事が殆どないのだが。
　ところで、さっきから隣にいる方は？

「ああこちら、会員番号24番東村としゆき、通称トントン」

　トントン……ネット世界では知らない者のいない有名人だ！
　かつて超有名ネット掲示板を運営し、その他様々なネットサービスに首を突っ込み、ネット社会の裏事情にも精通、またネット上のレスバ、いわゆる書込レスのバトルでの詭弁とも言える強さが話題になっている。

「ちなみにトントンとは3時間ほどレスバトルして勝利したわ」
「いやエイコさんは強敵でしたねえ。
　それが縁でファンクラブ入らしてもらったんすけどね」

　3時間もレスバすんなし！

　にしても僕の行動を罵倒しながらもちゃんとＩＴ詳しい専門家を紹介してくれる辺り、エイコは優しいなあ。

「ところで田中さん、今回の待屋の自販機ＵＩの券は何処が1番悪いと思います？」
　トントンがそう尋ねてくる。

「何処ってそりゃ待屋が……」
「責任という意味ではそうなんすけど、ＵＩを作った側が1番問題だとオイラは思うんすよ」
　独特の口調でトントンが力説する。

「ＵＩを作った側……それは一体何処なんです？」
「ズバリ帝国印刷っす」

　帝国印刷！
　戦前から続く印刷業の大手じゃないか。何で券売機を手がけた！？

「そこが業界の世知辛い所で、いま電子書籍が広まって紙の本が売れないのは知ってるっすよね」

　ああうん、確かに漫画とかならネットで見ちゃうかな。

「なので印刷業界も生き残りをかけてITに続々参入してるっす」
「ああそうかなるほど、慣れないＩＴでプログラム組んでるからＵＩも問題があると」

「半分正解ですが、実はここに別な要因が絡むっす」

　半分正解？
　他にどんな理由があるか思いつかないけど。

「実はここに帝国印刷関連の、意識高い系のすげー頭の悪いデザイナーがしゃしゃり出て来たのが問題なんすよ」