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王位継承編

-32℃(ユウショー)

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「初めまして、僕は正田まさる
 周囲からはユーショーと呼ばれてるみたいだね」

 彼は女性を思わせる優男。
 声もどこか中性的で、現在放送中で人気の鬼退治アニメの主人公を思わせた。
 そして彼は、その胸に黒猫を抱いていた。

「ああ、彼女の名前はユー。
 子供の頃に飼ってた同名の猫の子供で、いわば二代目なんだ」

 そう言ってユーショーは猫の頭を撫でる。

「パパからレンくんが優秀だと聞いていてね、一度会いたいと思ってたんだ」

「ユーショーは学秀院大学の学生なのよね?」
 少し警戒するようにエイコがそう尋ねる。

「そうだし、エイコさんの経緯も知ってるけど。
 君と揉めた学長がアホなだけで、他の学秀院の生徒に罪はないからね?」
「う、それはそうかも知れないけど」

 お、あのエイコが珍しく議論で押され気味だ。

「僕は仲良くしたいと思ってるけどね、レンくんとも、エイコさんとも」
「そこは同感ですが、ユーショーさん」
「呼び捨てで構わないよ?
 敬語も不要、そもそも社長の息子だけど僕の方が年下だし」

 ユーショーが大学一年生、対して僕やエイコは大学三年生だ。
 というか、むしろタメ口のユーショーの方がおかしくね?
 
 まあ彼はこういうキャラっぽいので今更気にしないけど。

「ユーショーは父親の会社に入ったらどうしたい、と言うのはあるの?」
 そしてエイコもお構いなしに対等で話してるけど。

「色々考えている事はあるけど、まずは皆と仲良くしたいかな」
「皆、とは?」
「父の会社の社員、関連会社、同業他社……とにかく皆んなさ。
 僕は争いを好まないんでね」
「随分甘いお考えですこと。
 こっちが望まなくても相手から喧嘩を仕掛けて来たらどうするの?」

 お、喧嘩っ早いエイコが言うと説得力が。

「言っておきますけどねレン、私は降りかかる火の粉を払ってるだけで、別に自分から喧嘩をした事は」

 うん、君の場合その口の悪さでまず火種撒いてる自覚を持とうな?

「んー、力による威嚇又は力の行使は、揉め事を解決する手段としては永久にこれを抛棄する、が心情でね」
 とユーショー。

 ……何だか憲法9条みたいな事言い出しましたよ、この人。

「もちろんやられたらやり返すけどね、倍返しで」

 しかもどこぞの銀行員みたいな発言まで出て来ましたが。
 そうか、温厚だけど怒らせると怖い系か。くわばらくわばら。

「まあレンくんの立場的に、リンショーに肩入れするのは分かってるけどさ。

 それでも改めて言うよ?
 僕は二人と仲良くしたいんだ」

 まあ僕的にもユーショーと敵対する理由が今のところないので、仲良くなるのは全然構わないけど。

「……私は、一旦保留で」
 どうもエイコは距離を置くつもりのようだ。







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