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本編

5月29日 ニゲラとシュルツとミドリスプライス

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※本日より挿絵を利用してみました。
なおA I画のため実際の花と若干見た目が異なっています。

「今日5月29日の誕生花は、ニゲラ
キンポウゲ科のクロタネソウ属に属する花で、花言葉は”ひそかな喜び”」

 そう解説しながら、何やら粉のまぶされたケーキを差し出してくる。

「ニゲラは香辛料にもなりまして、セリ科のクミンに似てる事からブラッククミンシードの別名を持ちます」

 へえ?

「ただし日本で一般的に生えてるニゲラの種は毒性があるので、海外輸入モノを使う事を強くお勧めします」

 おっとと、聞いといて良かった。
 野草やキノコも素人は危ないって聞くしな。
 
「喜びは自分の持てる可能性を引き出すことからもたらされる……とはウィル・シュルツの言葉ですが、ご存知ですか?」

 ご存じな訳ないだろう、誰だその人は!

「シュルツ博士は感受性訓練の権威なので、その筋では有名人ですよ?」
「どの筋だよ!まずそのカンジュセイ何ちゃらの説明からしてくれ」

「仕方ないですね、感受性訓練とは英語でセンシビリティ・トレーニング、略してSTとも呼ばれていて、相手を理解したり洞察力を深める為の訓練です」

 自己啓発の一種かな?
 勝手に話し出すアレナコさんに一番足りないモノだなそれ。

「参加者同士で話し合ってお互いを高めるグループセラピーが主ですが、特に感受性訓練は非構成的な体験を伴うトレーニングで、テーマを決めずに自由に話し合う事を主体とします」

 ほうほう。

「ただ日本では企業が、しごきに似た歪な形で取り入れて自殺者も出る事で問題にもなってます」

 いや、ダメじゃね?
 確かに企業のお偉いさんが好みそうな内容ではあるし……

「というか、なんか恋愛なんちゃら番組でも似たような事やって問題になってなかったか?」
「恋愛リアリティショーですかね?
 はい、そちらも自殺者が出たり別途カウンセリングが必要な事態になってます。でも」

 お、問題ありと断罪しておいてまだ何か言いたい感じか?

「うまくいってないのはエンカウンターとファシリテーションの問題もあるんだと思います」

 また知らない単語が出たぞ。

「端的に言えば人選チョイスと、話の流れを中立に持っていく人の存在です。
 これを間違うと、参加者双方に悪い影響を与えてしまう」

 なるほどテレビ番組だと視聴率稼ぎに悪意が発生して皺寄せが参加する人にも来るって事だな。

「そして今日5月29日の誕生酒は、
ミドリスプライス
酒言葉は自分をしっかりと表現できるパフォーマー」

 まあSTの参加者パフォーマーも自己表現が大事と。

「ちなみにスプライスって何だ?」
「接合、より継ぎの意味ですね、ほら」

 そう言って出されたカクテルは、生クリームが上に載っていて確かに繋ぎ目がはっきりしていた。

「メロンリキュールのミドリ、ココナッツリキュールのマリブ、そしてパイナップルジュースを加えたトロピカルな味わいが特徴です」

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