63 / 151
63
しおりを挟む
「ごめんなさい……ごめんなさい……ひっく……私のせいで……私のせいでこんなことに……」
ぐすぐす泣いているのはアンナだった。
相変わらず折れそうに細い体、抜けるような白い肌と、華奢で儚い雰囲気をたたえている。
黒水晶のような瞳から、大粒の涙がはらはらとこぼれ落ちた。
「アンナ……!」
ガタッと椅子を蹴倒して立ち上がり、アレックスはアンナの肩に手を置いて宥めている。
そして、私のことを憎しみのこもった目で睨みつける。
……はあ。また、このパターンね。
「ローラ様のお怒りはごもっともです。でも私……私……これ以上、誰も不幸になってほしくない……。私のせいで、争いごとが起こるなら……私がこの世から、消えてなくなればいいのかなって……」
「それもありですね」
「ユリウス!!」
私は笑い声をこらえるために、あえて大声で叱りつけた。
今ユリウスの顔を見たら爆笑できる自信があった。ツッコミが的確すぎる。
「やめなさい。アンナのお気持ちを汲んで差し上げないといけないわ」
「大変申し訳ございませんでした」
ユリウスは恭しく頭を下げる。
「ロベルト様。アンナを下がらせてやってはいただけませんか。彼女はもう限界まで追い詰められている。このままじゃ本当に死にかねないんだ」
アレックスが大真面目に言った。
どうやら本物の馬鹿みたいですね、とユリウスが今度は声を出さず、唇の動きでそう言った。
「アンナ。お前はどうしたい?」
ロベルト叔父様に尋ねられて、アンナは涙ながらに訴えた。
「私は……アレックス様がいてくださるなら、ここでローラ様と向き合えると思います。どんなにひどい言葉を言われても、殴りつけられても、耐えてみせます」
「あら……私ったら、アンナにそんなに怖がられているのね。従姉妹同士だというのに、悲しいことですわ」
お父様の言ったとおりだ。アンナは常に被害者となり、相手を勝手に悪者に仕立て上げる。
その才能だけは、褒めてあげたいぐらいだった。
「では、ローラ。アレックスがアンナのために同席することを認めてくれるかな?」
そう来ると思っていたので、私は仕方なく頷いた。
「はい、叔父様」
「ねえ、ローラさん?」
次に口を開いたのは、アレックスのお母様、クレア・ナイト女伯だった。
ぐすぐす泣いているのはアンナだった。
相変わらず折れそうに細い体、抜けるような白い肌と、華奢で儚い雰囲気をたたえている。
黒水晶のような瞳から、大粒の涙がはらはらとこぼれ落ちた。
「アンナ……!」
ガタッと椅子を蹴倒して立ち上がり、アレックスはアンナの肩に手を置いて宥めている。
そして、私のことを憎しみのこもった目で睨みつける。
……はあ。また、このパターンね。
「ローラ様のお怒りはごもっともです。でも私……私……これ以上、誰も不幸になってほしくない……。私のせいで、争いごとが起こるなら……私がこの世から、消えてなくなればいいのかなって……」
「それもありですね」
「ユリウス!!」
私は笑い声をこらえるために、あえて大声で叱りつけた。
今ユリウスの顔を見たら爆笑できる自信があった。ツッコミが的確すぎる。
「やめなさい。アンナのお気持ちを汲んで差し上げないといけないわ」
「大変申し訳ございませんでした」
ユリウスは恭しく頭を下げる。
「ロベルト様。アンナを下がらせてやってはいただけませんか。彼女はもう限界まで追い詰められている。このままじゃ本当に死にかねないんだ」
アレックスが大真面目に言った。
どうやら本物の馬鹿みたいですね、とユリウスが今度は声を出さず、唇の動きでそう言った。
「アンナ。お前はどうしたい?」
ロベルト叔父様に尋ねられて、アンナは涙ながらに訴えた。
「私は……アレックス様がいてくださるなら、ここでローラ様と向き合えると思います。どんなにひどい言葉を言われても、殴りつけられても、耐えてみせます」
「あら……私ったら、アンナにそんなに怖がられているのね。従姉妹同士だというのに、悲しいことですわ」
お父様の言ったとおりだ。アンナは常に被害者となり、相手を勝手に悪者に仕立て上げる。
その才能だけは、褒めてあげたいぐらいだった。
「では、ローラ。アレックスがアンナのために同席することを認めてくれるかな?」
そう来ると思っていたので、私は仕方なく頷いた。
「はい、叔父様」
「ねえ、ローラさん?」
次に口を開いたのは、アレックスのお母様、クレア・ナイト女伯だった。
79
あなたにおすすめの小説
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ
水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。
それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。
黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。
叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。
ですが、私は知らなかった。
黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。
残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?
【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ
との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。
「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。
政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。
ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。
地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。
全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。
祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済。
R15は念の為・・
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる
はなまる
恋愛
らすじ
フレイシアは10歳の頃母と一緒に魔物に遭遇。その時母はかなりの傷を負い亡くなりショックで喋れなくなtったがその時月の精霊の加護を受けて微力ながらも魔法が使えるようになった。
このニルス国では魔力を持っている人間はほとんどいなくて魔物討伐でけがを負った第二王子のジェリク殿下の怪我をほんの少し治せた事からジェリク殿下から聖女として王都に来るように誘われる。
フレイシアは戸惑いながらも淡い恋心を抱きジェリク殿下の申し出を受ける。
そして王都の聖教会で聖女として働くことになりジェリク殿下からも頼られ婚約者にもなってこの6年フレイシアはジェリク殿下の期待に応えようと必死だった。
だが、最近になってジェリクは治癒魔法が使えるカトリーナ公爵令嬢に気持ちを移してしまう。
その前からジェリク殿下の態度に不信感を抱いていたフレイシアは魔力をだんだん失くしていて、ついにジェリクから枯渇聖女と言われ婚約を破棄されおまけに群れ衣を着せられて王都から辺境に追放される事になった。
追放が決まり牢に入れられている間に月の精霊が現れフレイシアの魔力は回復し、翌日、辺境に向かう騎士3名と一緒に荷馬車に乗ってその途中で魔物に遭遇。フレイシアは想像を超える魔力を発揮する。
そんな力を持って辺境に‥
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。少し間が開いてしまいましたがよろしくです。
まったくの空想の異世界のお話。誤字脱字などご不快な点は平にご容赦お願いします。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。他のサイトにも投稿しています。
冷酷王太子に婚約破棄された令嬢は、辺境で出会った隣国の将軍に一途に愛される
usako
恋愛
王太子アルノルトの婚約者として完璧に振る舞い続けた公爵令嬢エリシア。しかし、ある日突然、「心から愛する女性ができた」と婚約を一方的に破棄される。王都で笑われ、侮られ、追い出されるように実家を出たエリシアが辿り着いたのは、魔獣が出没する辺境の砦。
そこで出会ったのは、無骨だが誠実な隣国の将軍ライアンだった。彼の不器用な優しさに触れ、少しずつ心を取り戻すエリシア。
一方、王都では彼女を失った王太子が後悔とともに破滅への道を歩み始める——。
冷遇令嬢が愛を取り戻す「ざまぁ」と「溺愛」の王道ストーリー。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる