秋月の鬼

凪子

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四、

22

あけっぴろげな笑みを浮かべた、目のくりっとした少女が部屋を覗き込んでいる。

「……あら?」

彼女は首を傾げ、ようやく空気が凍りついていることに気づいた。

町娘だろうか。常盤よりもまともな形と色と長さをした襦袢じゅばんを身にまとってはいるが、姫君たちのように打掛や裳や飾り帯をしていないところを見ると、中流階級といったところだろう。

「あのう、お邪魔しちゃったかしら」

すると襖の近くにいた、先ほどから一言も発していない少女が冷静に応対した。

「何かご用ですか?」

町娘は我が意を得たりと手を打って、

「あたし春日かすがって言います。さっき大広間でかんざしを落としちゃったみたいなんだけど、ご存じありませんか?」

なるほど、彼女はそれを聞くために部屋を回っていたというわけか。

夕霧は容花から目を逸らし、低く舌打ちした。

とんだ邪魔が入ったものだ。

「もしかすると、これではありませんか?」

常盤が手荷物の中からきらめく簪を取り出し、戸口まで行って差し出した。

春日は目を丸くしていたかと思うと、ぱっと顔を輝かせて常盤の手を両手で握りしめた。

思わぬ力に、常盤は驚いて目をみはる。

「そうそう、これよ!拾ってくださったのね、ありがとう!やっと見つかったわ」

ぶんぶんと上下に勢いよく手を振られ、常盤は目が回りそうになった。

「あなたお名前は?」

「常盤と申します」

「そちらの彼女は?」

音もなく静かに控えていた少女は、粛々と手を突いて、

福部清子ふくべ・きよこと申します」

髪を結い上げ、賢そうな額に、はらりとかかった前髪が清らかで美しい。

瞳は黒く深い。上物のあわせに紺の羽織を合わせている。

目が合うと、清子は優しげに常盤に微笑みかけた。
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