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終章
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「三年前のディンキン族掃討作戦に、俺は参加していなかった」
屋敷の一室に集められたルート、ユリシス、レッドの顔をかわるがわる見つめながら、ルベリエは慎重に口火を切った。
「十年前に集結した反乱の火種は、各地にくすぶりながら残っていた。その当時、いたるところで軍部と地方の反乱分子の小競り合いが頻発していて、俺は南西のイド自治区へ派遣されていた。だが、先遣隊が丸ごと消失したという一報を受けて、呼び戻された」
後発隊に加わったルベリエは、グランド・ゼロの惨状を目の当たりにすることになる。
派遣された軍人はもちろん、ディンキン族たちも、そして土地そのものまで消えてなくなっていた。
「後発隊は急きょ組み上げた少数の部隊で、とにかく様子を確認して戻ってくるための、斥候の意味合いが強かった。人員は俺を含めて二十名を切っていたと思う。レムニスケートのグレムリン所長も、自身の強い希望でそのメンバーに加わっていた。
報告を上げた時点じゃ半信半疑だった上層部も、インフィニティとグランド・ゼロの現状を見て、答えは一つしかないと観念したのか恐れをなしたのか、とにかくインフィニティを殺し、事件を隠蔽しろと命じた。
ところが事件から数ヶ月が経ち、インフィニティの特殊性――痛みを感じず、死なない体であるという結論がグレムリン所長によって報告された。よって軍部は方針を変えざるを得なくなった。
インフィニティを殺すことができないのであれば、とにかく手元に置いて厳重に監視し、殺せるまでは記憶を封じておくしかない――と」
グランド・ゼロを引き起こした元凶であるフィンが生きている限り、事件を終わらせることはできない。
事件の全容が書かれた資料と、グレムリン所長によって記された膨大な人体実験のデータは、軍本部に厳重に保管された。
「だが事件から一年ほど経ったころ、その明るみに出してはならない資料が、何者かによって持ち出された。
俺は犯人を速やかに見つけ出し、抹殺することを命じられた」
「教官」
ルートが手を挙げた。
「話としては筋道が通ってるが、肝心なところが抜けている」
ルベリエは落ちつき払ってルートを見つめ返す。
「そもそも、なぜ軍はディンキン族を滅ぼそうとした?文献にも資料にも何も残されていない、ディンキン族とは一体何なんだ」
屋敷の一室に集められたルート、ユリシス、レッドの顔をかわるがわる見つめながら、ルベリエは慎重に口火を切った。
「十年前に集結した反乱の火種は、各地にくすぶりながら残っていた。その当時、いたるところで軍部と地方の反乱分子の小競り合いが頻発していて、俺は南西のイド自治区へ派遣されていた。だが、先遣隊が丸ごと消失したという一報を受けて、呼び戻された」
後発隊に加わったルベリエは、グランド・ゼロの惨状を目の当たりにすることになる。
派遣された軍人はもちろん、ディンキン族たちも、そして土地そのものまで消えてなくなっていた。
「後発隊は急きょ組み上げた少数の部隊で、とにかく様子を確認して戻ってくるための、斥候の意味合いが強かった。人員は俺を含めて二十名を切っていたと思う。レムニスケートのグレムリン所長も、自身の強い希望でそのメンバーに加わっていた。
報告を上げた時点じゃ半信半疑だった上層部も、インフィニティとグランド・ゼロの現状を見て、答えは一つしかないと観念したのか恐れをなしたのか、とにかくインフィニティを殺し、事件を隠蔽しろと命じた。
ところが事件から数ヶ月が経ち、インフィニティの特殊性――痛みを感じず、死なない体であるという結論がグレムリン所長によって報告された。よって軍部は方針を変えざるを得なくなった。
インフィニティを殺すことができないのであれば、とにかく手元に置いて厳重に監視し、殺せるまでは記憶を封じておくしかない――と」
グランド・ゼロを引き起こした元凶であるフィンが生きている限り、事件を終わらせることはできない。
事件の全容が書かれた資料と、グレムリン所長によって記された膨大な人体実験のデータは、軍本部に厳重に保管された。
「だが事件から一年ほど経ったころ、その明るみに出してはならない資料が、何者かによって持ち出された。
俺は犯人を速やかに見つけ出し、抹殺することを命じられた」
「教官」
ルートが手を挙げた。
「話としては筋道が通ってるが、肝心なところが抜けている」
ルベリエは落ちつき払ってルートを見つめ返す。
「そもそも、なぜ軍はディンキン族を滅ぼそうとした?文献にも資料にも何も残されていない、ディンキン族とは一体何なんだ」
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