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本編
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浅見先生が私の元を訪れたのは、それから二日後のことだった。
ゆっき先生は授業で、爽君は相変わらず療養中で、私は学校にも行かず学園都市内の本屋をぶらぶらしていた。
そこに浅見先生が待っていたのだ。
「先生……」
浅見先生は少し痩せたように見えた。
いつもの美しい面差しが翳っており、影が薄くなった感じがする。
「お久しぶりね、小泉さん。元気にしてるの?部屋にも行ったんだけど、留守だったから心配してたのよ。おうちの方に連絡しようと思ったけど……」
(やばい)
両親にはもちろん、この奇妙ななりゆきを話していなかった。
まあ放任主義だから、何を言っても驚かないだろうけど。
「すみませんでした」
私は頭を下げた。何と言っていいのか分からなかった。
浅見先生は溜息をつく。
「ご飯はちゃんと食べてるの?」
「はい。すみません」
「学校に来られない理由が何かあるなら、教えてちょうだい」
私はうつむいた。
学校に行けないというより、今、紘ちゃんに私や爽君の居場所を知られると困る。
それに高校内には確実に、ディエス・イレに関わっている人間がいる。
「……小泉さん?」
優しく促されて、私は首を振った。
「ごめんなさい。今は……言えません」
「……そう」
浅見先生は長い睫毛を伏せた。
「もうすぐ、青柳先生の教育実習期間も終わるわ。もし一日だけでも来られるなら、お別れを言いにいらっしゃい」
びくりとした。
先生は、私がゆっき先生のところにいると気づいているのだろうか?
(まさかね)
「はい」
視線の先に、プラム色の華奢なヒールをしたパンプスが見える。
すらりとした浅見先生の足によく似合っていた。
「小泉さん」
再び呼びかけられて顔を上げると、浅見先生は憂慮に満ちた目で言った。
「何か事情があるみたいだから、今は詳しいことは聞かないわ。うまくごまかしておいてあげる。
でも、ずっとってわけにはいかないわ。出席日数が足りなくなって、留年したら嫌でしょう?」
「はい」
「だったら、そうなる前に私を頼ってね。待ってるから」
頷くと、先生はじっと私の目を見つめる。
目の底にある真意を読み取られまいと、私は思わず目を逸らした。
ゆっき先生は授業で、爽君は相変わらず療養中で、私は学校にも行かず学園都市内の本屋をぶらぶらしていた。
そこに浅見先生が待っていたのだ。
「先生……」
浅見先生は少し痩せたように見えた。
いつもの美しい面差しが翳っており、影が薄くなった感じがする。
「お久しぶりね、小泉さん。元気にしてるの?部屋にも行ったんだけど、留守だったから心配してたのよ。おうちの方に連絡しようと思ったけど……」
(やばい)
両親にはもちろん、この奇妙ななりゆきを話していなかった。
まあ放任主義だから、何を言っても驚かないだろうけど。
「すみませんでした」
私は頭を下げた。何と言っていいのか分からなかった。
浅見先生は溜息をつく。
「ご飯はちゃんと食べてるの?」
「はい。すみません」
「学校に来られない理由が何かあるなら、教えてちょうだい」
私はうつむいた。
学校に行けないというより、今、紘ちゃんに私や爽君の居場所を知られると困る。
それに高校内には確実に、ディエス・イレに関わっている人間がいる。
「……小泉さん?」
優しく促されて、私は首を振った。
「ごめんなさい。今は……言えません」
「……そう」
浅見先生は長い睫毛を伏せた。
「もうすぐ、青柳先生の教育実習期間も終わるわ。もし一日だけでも来られるなら、お別れを言いにいらっしゃい」
びくりとした。
先生は、私がゆっき先生のところにいると気づいているのだろうか?
(まさかね)
「はい」
視線の先に、プラム色の華奢なヒールをしたパンプスが見える。
すらりとした浅見先生の足によく似合っていた。
「小泉さん」
再び呼びかけられて顔を上げると、浅見先生は憂慮に満ちた目で言った。
「何か事情があるみたいだから、今は詳しいことは聞かないわ。うまくごまかしておいてあげる。
でも、ずっとってわけにはいかないわ。出席日数が足りなくなって、留年したら嫌でしょう?」
「はい」
「だったら、そうなる前に私を頼ってね。待ってるから」
頷くと、先生はじっと私の目を見つめる。
目の底にある真意を読み取られまいと、私は思わず目を逸らした。
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