ディエス・イレ ~運命の時~

凪子

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本編

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「小泉さんが元気で笑ってるだけで、爽は確実に救われる。自分を見失わずにすむ。それは、君にしかできないことだから。どうか、爽をよろしく頼むよ」

丁重に頭を下げられて、舞は慌てて両手を振った。

「そんな、とんでもない!ゆっき先生がいてくださったから、爽君だって助かったし、それに私のことも住まわせ
てもらって」

「いいのいいの。もともと俺、君の傍にいて守るために、教育実習生として赴任したんだよ。途中から爽がこんな目に遭って、若干計画が変更になったけど、目的自体は果たせたから気にしないで」

「え、どうしてゆっき先生が私を……」

「言ったでしょ。俺は爽の親友だって」

ゆっき先生は人差し指を立て、軽くウインクしてみせた。

「爽に頼まれたんだよ。自分はもう小泉さんの傍にはいられないから、自分の代わりに君を守ってほしいって」

「嘘……」

「ホント」

確かにゆっき先生が赴任してきたのは、爽君が私の前から去って、入れ替わるようなタイミングだったけれど。

(いくら親友だからって、そこまでするなんて)

「でも、そろそろ邪魔者は去るよ。爽も無事に戻ってきたし、教育実習も終わりだしね」

「邪魔者だなんて……」

「ごめんごめん。意地悪な言い方だったね。まあ俺も親友を取られて失恋気分ってことで、許してよ」

茶目っ気のある瞳で謝られ、何となく毒気を抜かれてしまう。

(本当、憎めない人……)

ゆっき先生は真顔に戻ると、私の目を正面から見て言った。

「俺はもう学校に行けないけど、いつでも君と爽の味方だよ。何かあれば力になるから、助けが必要なときは絶対言ってよ」

「先生……。ありがとうございます」

じんわりと胸に温かさが込み上げてくる。

ゆっき先生がいなければ、今頃、爽君は死んでいただろう。

私は二度と爽君と会うことができないままだっただろう。

「爽を暗闇から抜け出せるよう、導いてあげて。俺には……できなかったから」

手を取って握り締められ、ゆっき先生の思いが伝わってくる。

寂しさ、悔しさ、友情、そして信頼。

その手を握り返し、私は緩やかに首を振った。

「私、先生に会えてよかったです」

ゆっき先生は少し目を丸くしたかと思うと、優しく微笑んだ。

「俺もだよ」












































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