吟遊詩人(?)は暗殺者

いーぽん

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ともなく かれおとずれ っしゅんに」
 その呟きと共に、大男の首からかんざしが引き抜かれた。その簪の先は、桜の花の形をしている。
「暴れないでいただきたかったですね」
 薄暗い部屋に、黒スーツを着た四人の死体が転がる殺風景に似合わず、青と白の市松模様の和服を身に纏う人物はぼやきながら袖の内側で簪に付く血を拭う。
 それを髪に刺し直すと窓の外を覗き、人がいないのを確認して外へ出る。転がっていた空き瓶に足をぶつけた。
「まったく、こういう街は苦手ですね」
 その人物はたもとから扇子を取り出して扇ぎながら、ゆっくりと街の出口へと向かった。白の扇面に桜の花が幾つか描かれている。
 今は六月、決して立春ではない。
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