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第一章 出会い
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しかしまぁ、いつまでもこの状態でいるわけにもいかないし、とりあえず私はしくしくと泣き続けている愛強メイドさんに声をかけた。
「えっと…リリー……さん?」
先ほどのドタバタで得た情報で、恐らくあっているであろう名で彼女を呼んだ。
「……っ!お嬢さま…!デイジーお嬢さま…!」
泣きながら俯いていた顔をあげ、リリーは私の、この金髪碧眼美少女の名前を呼んだ。
デイジー、雛菊。私の名前は"雛"。だからだろうか、呼ばれなれないはずのその名が、なぜだか心にスッと馴染んでいった。
これが、本来の私に全く掠りもしないこの金髪碧眼美少女との唯一の共通点かもしれない。
「あぁお嬢さま……そのように"さん"などつけずに、どうぞ、いつものようにリリーと呼んでください」
「えっと………」
とても悲しそうな顔をでデイジーを見つめるリリー。
私にとっては初対面でも、彼女らにとっては、ずっとずっと大切にしてきたお嬢さまなのだ。そのお嬢さまに、よそよそしい態度を取られるのは胸が締め付けられる思いなのだろう。
「えっと…じゃあ…リリー」
「っ!はい!お嬢さま…っ!」
ぱぁっと顔が明るくなるリリー。
「ごめんなさい、本当に私何も覚えていなくて……あなたのことも何も思い出せないの…ごめんなさい……」
ごめんなさい、と再度小さく呟いて深く頭を下げた。とても心苦しいが、事実ではあるし、私に出来るのは謝ることくらいしかない。
あなたたちの大切なデイジーお嬢さまを奪ってしまって、ごめんなさい。そんな思いを込めて頭を下げた。
「おっお嬢さま!お止めください!どうか頭をおあげください!!」
慌てて止めに入るリリーや他のメイドたち。
いくら仲が良くたってそこは主と従者の関係。目上のものに頭を下げさせるなんてこと、あってはならないのだ。
それでも━━
「うん、でもごめんなさい…。私、リリーや他の皆も傷つけた。
私に記憶がなくても、こんなにも沢山の人が来てくれるなんて、それだけでどれだけ大切にされてたかわかるから……」
そっとリリーに近づき、リリーの手を握る。
「悲しませて、ごめんねリリー」
今度はリリーの目を見つめて、言葉にした。
「っ……お嬢さま………私はリリーと言うのです…!」
嗚咽をもらしながらリリーは私に、私の中のデイジーに語りかける。
「この名前は私が初めてお嬢さまにお会いしたときに頂きました……お嬢さまと同じ花の名前を……その日から私はお嬢さまの為に生きると決めたのです…」
服の袖口で涙を拭い、こちらを強い眼差しで見つめるリリー。
「例え記憶がなくとも、私はお嬢さまのものです。お嬢さまのために私は在るのです」
「ですのでどうか、これからもお側に居ることを、お許しください」
そう告げると、リリーは深く頭を下げた。
幼いながらもこの少女デイジーは優しく、聡明な子だったんだろう。だからこそこれだけ多くの人々が、彼女に心から仕えているのだろう。
それならば私はどうすれば良いのか。
「顔をあげてリリー」
ゆっくりとリリーは顔をあげる。私はリリーに、優しく微笑んだ。
「私は記憶がありません。それでもいいと言ってくれるのなら、また私を支えてくれますか?」
リリーはくしゃりと笑い、
「もちろんでございます!
このリリー、命を懸けてデイジーお嬢さまにお仕えいたします!そしてお嬢さまを立派なレディにしてみせます………!」
つられて私も笑った。
「それは……頼もしいね」
こんなにも愛されていたデイジー。その彼女のことを思うと、私が彼女の中にはいってしまったのはとても心苦しい。
彼女がこれから出会うはずだった人、経験、知識を彼女が得ることはできないのだ。
だから私は、彼女がもし戻ってきたら、そのときにこの"デイジー"が、身体的・社会的に少しでも素晴らしい令嬢であるように努力しよう。
リリー、そして屋敷のみんなのデイジーへの思いを受け止め、私は今日、伯爵令嬢の"デイジー"になった。
「えっと…リリー……さん?」
先ほどのドタバタで得た情報で、恐らくあっているであろう名で彼女を呼んだ。
「……っ!お嬢さま…!デイジーお嬢さま…!」
泣きながら俯いていた顔をあげ、リリーは私の、この金髪碧眼美少女の名前を呼んだ。
デイジー、雛菊。私の名前は"雛"。だからだろうか、呼ばれなれないはずのその名が、なぜだか心にスッと馴染んでいった。
これが、本来の私に全く掠りもしないこの金髪碧眼美少女との唯一の共通点かもしれない。
「あぁお嬢さま……そのように"さん"などつけずに、どうぞ、いつものようにリリーと呼んでください」
「えっと………」
とても悲しそうな顔をでデイジーを見つめるリリー。
私にとっては初対面でも、彼女らにとっては、ずっとずっと大切にしてきたお嬢さまなのだ。そのお嬢さまに、よそよそしい態度を取られるのは胸が締め付けられる思いなのだろう。
「えっと…じゃあ…リリー」
「っ!はい!お嬢さま…っ!」
ぱぁっと顔が明るくなるリリー。
「ごめんなさい、本当に私何も覚えていなくて……あなたのことも何も思い出せないの…ごめんなさい……」
ごめんなさい、と再度小さく呟いて深く頭を下げた。とても心苦しいが、事実ではあるし、私に出来るのは謝ることくらいしかない。
あなたたちの大切なデイジーお嬢さまを奪ってしまって、ごめんなさい。そんな思いを込めて頭を下げた。
「おっお嬢さま!お止めください!どうか頭をおあげください!!」
慌てて止めに入るリリーや他のメイドたち。
いくら仲が良くたってそこは主と従者の関係。目上のものに頭を下げさせるなんてこと、あってはならないのだ。
それでも━━
「うん、でもごめんなさい…。私、リリーや他の皆も傷つけた。
私に記憶がなくても、こんなにも沢山の人が来てくれるなんて、それだけでどれだけ大切にされてたかわかるから……」
そっとリリーに近づき、リリーの手を握る。
「悲しませて、ごめんねリリー」
今度はリリーの目を見つめて、言葉にした。
「っ……お嬢さま………私はリリーと言うのです…!」
嗚咽をもらしながらリリーは私に、私の中のデイジーに語りかける。
「この名前は私が初めてお嬢さまにお会いしたときに頂きました……お嬢さまと同じ花の名前を……その日から私はお嬢さまの為に生きると決めたのです…」
服の袖口で涙を拭い、こちらを強い眼差しで見つめるリリー。
「例え記憶がなくとも、私はお嬢さまのものです。お嬢さまのために私は在るのです」
「ですのでどうか、これからもお側に居ることを、お許しください」
そう告げると、リリーは深く頭を下げた。
幼いながらもこの少女デイジーは優しく、聡明な子だったんだろう。だからこそこれだけ多くの人々が、彼女に心から仕えているのだろう。
それならば私はどうすれば良いのか。
「顔をあげてリリー」
ゆっくりとリリーは顔をあげる。私はリリーに、優しく微笑んだ。
「私は記憶がありません。それでもいいと言ってくれるのなら、また私を支えてくれますか?」
リリーはくしゃりと笑い、
「もちろんでございます!
このリリー、命を懸けてデイジーお嬢さまにお仕えいたします!そしてお嬢さまを立派なレディにしてみせます………!」
つられて私も笑った。
「それは……頼もしいね」
こんなにも愛されていたデイジー。その彼女のことを思うと、私が彼女の中にはいってしまったのはとても心苦しい。
彼女がこれから出会うはずだった人、経験、知識を彼女が得ることはできないのだ。
だから私は、彼女がもし戻ってきたら、そのときにこの"デイジー"が、身体的・社会的に少しでも素晴らしい令嬢であるように努力しよう。
リリー、そして屋敷のみんなのデイジーへの思いを受け止め、私は今日、伯爵令嬢の"デイジー"になった。
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