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第3章 自称雷帝にして鵺(ぬえ)の娘(名はまだない)

自称雷帝と父上の会話1

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「・・・仕方のないことなのよ。血を引く者である以上はね。
あんたも国の王なら、他の者より物分かりが良いと想っていたけど」

 あいつの声だった。

「奴らの状況はどんなです?」

「正直。分からないわ。
それに、今どんなであれ、目的のために手を結ぶことがあるのは、あたしたちと一緒よ」

「攻めて来るでしょうか?」

「来るにしろ来ないにしろ、こちらから行くことになるわ」

「どうしても、なさねばならぬのですか?」

「三重月の時は外せないの。
幾代もの血を引く娘がそれを守って行動して来たわ。
無論、あの人もそうよ。
それを無にしないためには、仕方のないことなのよ。
でも、このお肉、おいしいわ。
このお酒も」

「妻の好きなワインです」

「なら、味わって飲まなきゃねえ」

(おいしそうなもの食べてるじゃない。
それに何なの、お母様の好きなワインって。
なんで雷帝に飲ませてんのよ。
バカ父上。
飲ませるなら、私でしょ!)

 ただ部屋に入るのは我慢した。
 話の続きが気になる。

「サラマンダーの娘とフェンリルの娘」
 
 ここであいつは明らかに一呼吸、置いた。

「そしてあたし、ぬえの娘が一致協力してこそ、ことをなし得るのよ」

あんたは息子だろうと、私は突っ込みを入れる。

「そしてなさなければ、人間も人外も滅ぶわ。」

「人外の者たちは準備しておるのですか?」

「あの者たちは、人間より戦えるからね」

(何?)
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