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番外編 ウルゲンチ戦ーーモンゴル崩し
第45話 最終章 死地のその先11
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ジョチの陣にての両軍の激突から43日目の夜のこと。
北城にある本丸の守備隊はたまらずに出撃して、モンゴルの攻囲陣を突破し、多大な犠牲を出しながらも南城へと逃げ込んだ。そしてその指揮官たるシャイフ・カンはすぐさまクトルグ・カンの下に赴き、報告した。
「攻めはまるで見違えるようです。開戦してしばらくは、モンゴル軍は我らの姿を見つけては攻撃を仕掛け不利な状況に陥れば引き退くという行き当たりばったりの攻め、しかもただ数と力に頼った攻めでした。
そして南城侵攻に失敗した後は、こちらの出撃を防ぐことのみを念頭に置いた如くの戦い振りでした。
それが遂に陥落を目的とする布陣をし攻撃を仕掛けて来ました。それは本丸に対し初めて投石機を用いて攻撃して来たことからも明らかです。とても持ちこたえることはできませぬ」
「この南城ならば持ちこたえられると想うか」
「難しいと想われます。実際1度は北門を破られております。更に本丸が落ちた今、敵は全軍を以て南城攻略にとりかかりましょう。そしてぐるりを囲まれてしまえば、我らの取り得る策はほぼ無いに等しいとなりましょう。ここは逃げるに如くはないと考えます」
「わしにその気はない」
クトルグは言下に否定した。
「ただそこもとはここまで良くやってくれた。モンゴル軍にあれほどの損害を与えたは、そこもとが本丸を良く守り、またあの策をもたらしてくれたおかげ。後は好きにするが良い。カンクリの再興もまた生き長らえる者がおればこそ」
「オグル・ハージブも連れて行きたく想います」
クトルグはうなずくのみで、去れと無言でうながす如く、シャイフの方を最早見ようともしなかった。逃走を進言したことが失望を買ったのかと想い至り、何かを言おうとしたが、先の提案は心中から出たものであり、結局何を言っても嘘になると気付き、辞去の挨拶のみを述べて、そこを出た。
行き交いに部屋に入ろうとしておるは、かつて共に北城を守り、今では少なからずの友誼が存在すると言って良いカンクリの諸将であった。
ここを去ることを伝えるべきか、そして共に逃げようと誘うべきかと迷ったが、それはクトルグの意にそむくことと想い至り、自重し、ただ目顔で挨拶するに留めた。
「このウルゲンチを捨てねばならぬか。これまで協力して来た住民を見捨てねばならぬのか。クトルグ・カンは何とおっしゃっておるのだ」
とオグルは未練がましくそう言う。シャイフは、クトルグの下を去った後、その足でオグルの館を訪れたのであった。
「生き長らえてカンクリを再興してくれと。そのために、そなたを連れて行きたいと申し出たら、快く許して下さった」
少し内容を違えたのは、無論オグルをうなずかせるためであった。ただカンクリ勢の再興はシャイフにとっても願いであり、またオグルを連れて行きたいのも本心であった。それは再興云々よりまずは生き延びるために、ではあったが。
「しかし早過ぎぬか」
「今こそが好機。モンゴル軍といえど、今少しは本丸陥落に浮かれて動かぬであろう。もしかしたら、それを祝い、宴をしておるかもしれぬ。しかし南城攻めが始まって逃げては、犠牲が増えるだけだ」
そう諭されてもなおオグルはここへの想いは捨てきれぬようであった。
「そなたは我が安易に逃げようと言う男でないことは知っていよう。実際我はここに残り――そなたもだが――戦って来た。
その我が言うのだ。モンゴル軍中で何が起こったかは良く分からぬ。しかし攻めは明らかに見違えた。最早これまでの如くには行かぬ。カンクリのためを想い、共に逃げてくれぬか」
「そうか・・・・・・。そうだな」
北城にある本丸の守備隊はたまらずに出撃して、モンゴルの攻囲陣を突破し、多大な犠牲を出しながらも南城へと逃げ込んだ。そしてその指揮官たるシャイフ・カンはすぐさまクトルグ・カンの下に赴き、報告した。
「攻めはまるで見違えるようです。開戦してしばらくは、モンゴル軍は我らの姿を見つけては攻撃を仕掛け不利な状況に陥れば引き退くという行き当たりばったりの攻め、しかもただ数と力に頼った攻めでした。
そして南城侵攻に失敗した後は、こちらの出撃を防ぐことのみを念頭に置いた如くの戦い振りでした。
それが遂に陥落を目的とする布陣をし攻撃を仕掛けて来ました。それは本丸に対し初めて投石機を用いて攻撃して来たことからも明らかです。とても持ちこたえることはできませぬ」
「この南城ならば持ちこたえられると想うか」
「難しいと想われます。実際1度は北門を破られております。更に本丸が落ちた今、敵は全軍を以て南城攻略にとりかかりましょう。そしてぐるりを囲まれてしまえば、我らの取り得る策はほぼ無いに等しいとなりましょう。ここは逃げるに如くはないと考えます」
「わしにその気はない」
クトルグは言下に否定した。
「ただそこもとはここまで良くやってくれた。モンゴル軍にあれほどの損害を与えたは、そこもとが本丸を良く守り、またあの策をもたらしてくれたおかげ。後は好きにするが良い。カンクリの再興もまた生き長らえる者がおればこそ」
「オグル・ハージブも連れて行きたく想います」
クトルグはうなずくのみで、去れと無言でうながす如く、シャイフの方を最早見ようともしなかった。逃走を進言したことが失望を買ったのかと想い至り、何かを言おうとしたが、先の提案は心中から出たものであり、結局何を言っても嘘になると気付き、辞去の挨拶のみを述べて、そこを出た。
行き交いに部屋に入ろうとしておるは、かつて共に北城を守り、今では少なからずの友誼が存在すると言って良いカンクリの諸将であった。
ここを去ることを伝えるべきか、そして共に逃げようと誘うべきかと迷ったが、それはクトルグの意にそむくことと想い至り、自重し、ただ目顔で挨拶するに留めた。
「このウルゲンチを捨てねばならぬか。これまで協力して来た住民を見捨てねばならぬのか。クトルグ・カンは何とおっしゃっておるのだ」
とオグルは未練がましくそう言う。シャイフは、クトルグの下を去った後、その足でオグルの館を訪れたのであった。
「生き長らえてカンクリを再興してくれと。そのために、そなたを連れて行きたいと申し出たら、快く許して下さった」
少し内容を違えたのは、無論オグルをうなずかせるためであった。ただカンクリ勢の再興はシャイフにとっても願いであり、またオグルを連れて行きたいのも本心であった。それは再興云々よりまずは生き延びるために、ではあったが。
「しかし早過ぎぬか」
「今こそが好機。モンゴル軍といえど、今少しは本丸陥落に浮かれて動かぬであろう。もしかしたら、それを祝い、宴をしておるかもしれぬ。しかし南城攻めが始まって逃げては、犠牲が増えるだけだ」
そう諭されてもなおオグルはここへの想いは捨てきれぬようであった。
「そなたは我が安易に逃げようと言う男でないことは知っていよう。実際我はここに残り――そなたもだが――戦って来た。
その我が言うのだ。モンゴル軍中で何が起こったかは良く分からぬ。しかし攻めは明らかに見違えた。最早これまでの如くには行かぬ。カンクリのためを想い、共に逃げてくれぬか」
「そうか・・・・・・。そうだな」
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