出会って五秒で合体!?~半人半獣になってしまった私は獣人に間違えられ殺されそうになりました~(仮)

ぽりんここりんこぷりぷりのえび

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幕間Ⅰ

愛の戦士、参る

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 時は少し遡る。
 それはゴウ・ハシズがマリア・スメラギに決闘を申し込み自分の力と鎧を過信し過ぎたせいで敗北し花の魔物が現れてからの出来事だ。

「「はっ、はっ、はっ、はっ」」

 モルとグレイルは呼吸を乱しその様子からも必死なのが伝わってくる。

 二人はゴウを担ぎ安全な場所へと運んでいた。
 裏庭を走り裏庭と学園を繋ぐ渡り廊下を走り現在は学園にある保健室まで急いでいる。
 彼はマリアの攻撃を受け余りの痛さに悶絶し気絶していたのだ。

「「クレハ先生!!!」」

 行儀が悪いが手が塞がっているので二人は足でドアを開けると保健室に居るであろうクレハに声を掛けた。

 ──しかし、返事は返ってこない。
 それもそのはず保健室には誰もおらず簡易的な白いベッドが数台とクレハが使っているのであろうテーブルとイス、それから救急箱と身体に関する本が棚にあるだけだった。

「そんなぁ……」
「モル、俺たちだけで何とかしよう。状況は一刻を争う」

 崩れ落ちそうなほどの情けない声を上げるモルと、クレハが居ないのならば自分たちでやるべきだと察したグレイルはモルに提案する。

「で、でもどうすれば」
「とりあえずゴウをうつ伏せで寝かせよう。治癒の魔法を掛ける」

 おどけながら揺ら揺らと揺れてどうすればいいのか分からないモルに向かってまずはゴウを保健室に備えられてあるベッドに寝かせようと提案した。
 グレイルは攻撃性のある魔法は不得意にせよ他者を守ったり回復したりとする魔法はそれなりに使うことが出来る。

 二人はゴウをうつ伏せに寝かせ、グレイルはその前に立ちゴウのお尻に右手を当て彼は目を瞑り集中する。

「ヒール!」

 グレイルの右手が緑色に発光し、それと同時にゴウのお尻も緑色に発光していた。
 無属性回復魔法のヒール。術者によって回復力は違うが多少の擦り傷ならば一瞬で元通りになる。
 だが今回は木剣による刺突、果たして彼の回復力で完治出来るか分からない。
 そのこと自体グレイル自身もよく分かっていた。
 だが自分がやらなければ誰もやる者がいない。

「ヒール! ヒール! ヒール!」

 彼は必死に何度も何度も回復魔法を施した。
 次第に魔力が底をつきはじめ、立ちくらみに似た症状が現れるが左手でベッドの柵を掴み回復魔法を止めない。

「ま、待てグレイル。それ以上魔法を使ったらお前まで倒れてしまうぞ!」

 グレイルの魔力が底をつきそうなことを本人だけではなくモルも気付いたようで彼を後ろから羽交い締めにして止めに入るがグレイルはそれでも回復魔法を止めない。
 彼は自分がお尻に刺突を喰らったらとんでもなく痛がるだろう、と想像するだけで冷や汗が止まらない。
 一刻も早くゴウのお尻を治してやりたかったのだ。

「……グ、グレイル……もういい」

 ゴウが目覚め、うつ伏せのままグレイルの右手を掴んだ。
 お尻は完全に完治はしていない。だがグレイルがこれ以上辛い思いをさせる訳にはいかない。

「ゴウ! 大変なんだ! 裏庭に花の魔物が! 逃げないと!」

 ゴウが意識を取り戻してすぐにモルはゴウに状況をそれとなく伝えていた。
 モルは逃げようと必死に訴え掛けているが、返ってそれはゴウを焚きつけることになるとは露知らず。

「裏庭に魔物だと? マリアはどうした」
「魔物と交戦中なんだ。早く誰か倒せる人を──」

 "交戦中"と言う言葉を聞いたゴウは血相を変えてベッドから飛び出す。

 一目惚れをしたマリアが、可愛い可愛い俺様のフィアンセのマリアが、危険な目に遭っている。

 決闘では血が頭に登っていたせいで冷静な判断が下せなかったが、今は違う。
 すぐにでもマリアを助けようと、ゴウは保健室を出て一人で裏庭まで向かってしまった。
 その際にしっかりと自分が着ていた鎧も持ち出している。
 マリアを助けるようだ。

「ご、ゴウ! ……うっ」
「おい、大丈夫かよ」

 飛び出していくゴウを引き留めようとするグレイルだったが魔法の連続使用で魔力が底をつき気を失ってしまった。
 それを倒れないようモルは必死にしがみつきゴウが寝ていたベッドにグレイルをゆっくりと寝かせた。

「頼んだぞ、ゴウ」

 グレイルを寝かせ、モルは保健室のドアの方を見てそう呟く。

「俺様のマリア、待ってろよ!」

 こうして愛の戦士は勝手にマリアのことを自分のモノであるがように言い放ち自分を鼓舞し、裏庭に向かって行ったのだった。

 結果的に二度も格好悪い姿を見せてしまったゴウはマリアを自分のモノにすることは出来ず、後日クラスメイトとしてよろしくされたが、彼にとってそれはそれで嬉しかったらしい。

 嫌われていなければチャンスは必ず訪れる。

 彼の前向きな姿勢に脱帽だ。
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