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王立魔法学園編Ⅱ
いざ、趣味探しへ!
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「ごきげんよう、マリア様」
「マリア様、ごきげんよう」
いつものようにミレッタとラウンジで朝食を食べようと向かっていと廊下に郡勢が待機しており挨拶される。
私だけ。
「はいはい。ごきげんようごきげんよう」
もう慣れたものだ。
適当に手を上げてそれを左右に揺らして挨拶を返す。
「「キャー!」」
黄色い声が廊下に響き渡る。
花の魔物を倒してから一週間が経過した。
同時にゴウとの決闘も一週間が経過したことになる。
なのに私を慕う人たちがポップコーンのように弾けに弾け増えに増えまくっていた。
中には芸能人かと言わんばかりに握手を求める者がたまに現れる。
だがいつの間にか結成されていた親衛隊により握手を求めようとする人は私の視界に入らない何処かへ連れ去られてしまう。
別に握手くらいいくらでもするんだけどね。
慕ってくれている人たちの殆どは女の子だし。
「マリアは相変わらず凄い人気ですね。私も様をつけた方がよろしいのでしょうか?」
「やめてよ。ミレッタまで様を付け始めたらこの世が終わる」
ミレッタは人差し指を頬につけ首を傾けながら呟く。
私は軽く溜め息を吐いてそれを拒む。
冗談ではなく本気で言っているのが怖い。
そんなことより今日学園に行けばまたお休みが始まる。
なので今日はちょっとだけ王都の街を見て回ろうと思う。
寮生活だから外出の度に誰かの許可が必要になると思っていたが遅くならなければ普通に外出して大丈夫みたい。
今から胸が高まるね!
☆
そんな訳で授業も終わり誰よりも早く教室を出て誰よりも早く自分の部屋に帰ってきた私は事前に用意していた白のワンピースに着替えた。
「シロムも行く?」
「ワタシは目立ち過ぎるからな。中に入っておこう」
着替え終わってミリアム商会のカードを手にし、シロムも一緒に行くかどうか訊ねると、シロムは自分で魔法陣を出しその中に入っていく。
あれって使い魔の主人が出すものかと思っていたけれど使い魔本人が出せるんだね。
まぁシロムが特別なだけかもだけどね。
気を取り直して転入以来初めての街に繰り出す。
来た時も思ったけれど多種多様な種族が混在しており獣人やエルフなどが居ても立ち止まって観察する人は誰一人としていない。
なので今回も私は気になりはするがさも興味がなさそうに街をぶらつく。
土気色のレンガの床が街中どこまでも続き、何処までも進めてしまいそう。
今回の目的は自分の趣味を探すこと。
百歩譲って暇潰しになるものを見つけられればいいかなぁ程度だ。
前世の私はそれなりに女の子らしい趣味を持っていたので今回も同じような趣味か、それとも新たなものに挑戦するか、私の心はワクワクで止まらない。
「ん? あそこは何だろう?」
隣のお店はお花屋さんのようで色とりどりの綺麗なお花が店先に並んでおりそれを眺める人が数人、つい先日くそ花と戦ったばかりなのでそのことを思い出してしまいお花屋さんには行きたくない。
問題はそこの隣。薄暗い外観をしていてルイス文字で"営業中"と書いてある一件の小さなお店。
外観からは何のお店かは分からない。
「入ってみようかな?」
私は多少躊躇いはあったが惹かれるようにしてそのお店に足を運んだ。
「ごめんくださーい」
中も薄暗い外観通りに薄暗く、建物に使われている木材もダークオークのような黒い材質をしているのが分かった。
夜目が効く私じゃなければ何処に何があるのか分からなかったと思う。
どうやらここは観葉植物などのインテリアを扱うお店のようだ。
それと何処からかお香のような良い匂いが漂っていた。
「いらっしゃい」
突然、背後から声が聞こえた。老婆の声だ。
私は反射でジャンプをしてその声と距離をとる。
気配に全く気付かなかった。
もしこれが私を捕らえようとグラダラスから来た人だったなら簡単に捕まっていた。
私の脈が速くなりバクバクしているのが分かる。
木剣は持ってきていないので両手を前に出し構えるだけ。
お香の匂いは彼女からするようだ。
「ほほ、そんなに構えんでもとって食ったりせん。あたいは店主のターシャ。しがない魔道具を販売する老婆だよ」
床に同化してしまいそうな程の黒いローブに身を纏うターシャと名乗った老婆はこの店の店主であることとここは魔法具を販売するお店のことを私に伝えた。
長髪なのだろうか、白髪になった髪と口元だけは見えて目元はローブに覆われていて分からない。
その姿から魔女を彷彿とさせる。
「ま、魔道具?」
それより聞き慣れない言葉に私は反射でそのまま聞き返してしまう。
特に怪しくないと感じた私は構えを解いた。
もし本当に危ないと感じたのならシロムが助けてくれそうだしね。
「見たことないのかい? ほら」
ターシャさんはローブのポケットから何やら鈴のような物を手渡してきた。
鈴には紐が付けられており振るとチリンと心地が良い音が店内に響く。
すると私が持っている鈴とは違う場所から鈴の音が聞こえる。
あれ? こんな状況前にもあったよね。
「同じような物を見たことがあります。鈴じゃなくてベルでしたけど」
「そうかいそうかい。まぁ心ゆくまで見ていくがいいさ。なんせ客が来るのは数年ぶりだからの」
鈴を返すと二度頷き口角を上げて数年ぶりの来客を嬉しそうにしていた。
悪い人ではなさそうだし、外観が外観だからかいくら営業中と書いてあれど私のように興味をそそられる人は少ないでしょうね。
たぶんシロムと一緒じゃなければ入らなかった自信はある。
「ありがとうございます。お言葉に甘えてゆっくりさせて頂きますね」
ワンピースの裾をつまんでちょこんとお辞儀をする。
先程の失礼を謝罪する意も加わっている。
果たしてターシャさんに伝わっているかどうか分からないけどね。
そんなことより私は店内を見て回ることにした。
「ふむふむ。さっきの観葉植物は新鮮な空気を出してくれるんだね」
顎に手を当てて考える。
前世で言うところの空気清浄機みたいな役割を果たしてくれるのでしょうね。
私の部屋に一本あってもいいかもしれない。
値段は一本、ハイネ金貨十枚。
この世界では金銀銅の硬貨が存在する。
金貨な時点で高価な物だと容易に判断出来る。
「こっちは魔力が無くても火が簡単に起こせる魔石、ねぇ……」
魔石にも色んな物があるようで私が持っているヒックさんから貰った魔石よりも綺麗な形をしておりまるでサイコロの賽のようだ。
他にも水や風、それから防御壁を作ることが出来る魔石……魔法がろくに使えない私にとってどれも実に魅力的な商品だ。
だけどこれも余裕で金貨三十枚は越える。
さっきの観葉植物を三本も買える計算になる。
ゼスオジからお金を貰っているとは言えこんな高価な物に使うと卒業までにお金が無くなってしまいそう。
趣味を見つけるよりかはアルバイトを始めた方がいいのではなかろうか。
「ん~」
色とりどりの魔石を見ながら首を傾げる。
「お嬢ちゃんは魔道具に興味があるのかい?」
どうやら私は魔石の前で唸ってしまったもんで魔道具に興味があるものだとターシャさんに勘違いをされてしまった。
いや、興味が無い訳では無い。
「はい。こういうのって自分で作れたりしませんかね?」
「うおおおおぉ! 魔道具に興味があるのかい!? しかも自分で作りたいと!」
ターシャさんの琴線に触れたようで私の両手を掴むと目を輝かせて嬉しがっていた。
初めて見る青い瞳と冷たい手、まるで人ではなく幽霊なのではないかと思わせるほど冷たいのだ。
幽霊なんて居ないだろうし、ただの冷え性でしょうけど。
「え、ま、まぁ?」
ターシャさんの気迫に押されて生半可な返事しかできなかった。
「そうかいそうかい! さ、こっちへおいで」
「う、うわぁ!?」
私はターシャさんに連れられてしまった。
「マリア様、ごきげんよう」
いつものようにミレッタとラウンジで朝食を食べようと向かっていと廊下に郡勢が待機しており挨拶される。
私だけ。
「はいはい。ごきげんようごきげんよう」
もう慣れたものだ。
適当に手を上げてそれを左右に揺らして挨拶を返す。
「「キャー!」」
黄色い声が廊下に響き渡る。
花の魔物を倒してから一週間が経過した。
同時にゴウとの決闘も一週間が経過したことになる。
なのに私を慕う人たちがポップコーンのように弾けに弾け増えに増えまくっていた。
中には芸能人かと言わんばかりに握手を求める者がたまに現れる。
だがいつの間にか結成されていた親衛隊により握手を求めようとする人は私の視界に入らない何処かへ連れ去られてしまう。
別に握手くらいいくらでもするんだけどね。
慕ってくれている人たちの殆どは女の子だし。
「マリアは相変わらず凄い人気ですね。私も様をつけた方がよろしいのでしょうか?」
「やめてよ。ミレッタまで様を付け始めたらこの世が終わる」
ミレッタは人差し指を頬につけ首を傾けながら呟く。
私は軽く溜め息を吐いてそれを拒む。
冗談ではなく本気で言っているのが怖い。
そんなことより今日学園に行けばまたお休みが始まる。
なので今日はちょっとだけ王都の街を見て回ろうと思う。
寮生活だから外出の度に誰かの許可が必要になると思っていたが遅くならなければ普通に外出して大丈夫みたい。
今から胸が高まるね!
☆
そんな訳で授業も終わり誰よりも早く教室を出て誰よりも早く自分の部屋に帰ってきた私は事前に用意していた白のワンピースに着替えた。
「シロムも行く?」
「ワタシは目立ち過ぎるからな。中に入っておこう」
着替え終わってミリアム商会のカードを手にし、シロムも一緒に行くかどうか訊ねると、シロムは自分で魔法陣を出しその中に入っていく。
あれって使い魔の主人が出すものかと思っていたけれど使い魔本人が出せるんだね。
まぁシロムが特別なだけかもだけどね。
気を取り直して転入以来初めての街に繰り出す。
来た時も思ったけれど多種多様な種族が混在しており獣人やエルフなどが居ても立ち止まって観察する人は誰一人としていない。
なので今回も私は気になりはするがさも興味がなさそうに街をぶらつく。
土気色のレンガの床が街中どこまでも続き、何処までも進めてしまいそう。
今回の目的は自分の趣味を探すこと。
百歩譲って暇潰しになるものを見つけられればいいかなぁ程度だ。
前世の私はそれなりに女の子らしい趣味を持っていたので今回も同じような趣味か、それとも新たなものに挑戦するか、私の心はワクワクで止まらない。
「ん? あそこは何だろう?」
隣のお店はお花屋さんのようで色とりどりの綺麗なお花が店先に並んでおりそれを眺める人が数人、つい先日くそ花と戦ったばかりなのでそのことを思い出してしまいお花屋さんには行きたくない。
問題はそこの隣。薄暗い外観をしていてルイス文字で"営業中"と書いてある一件の小さなお店。
外観からは何のお店かは分からない。
「入ってみようかな?」
私は多少躊躇いはあったが惹かれるようにしてそのお店に足を運んだ。
「ごめんくださーい」
中も薄暗い外観通りに薄暗く、建物に使われている木材もダークオークのような黒い材質をしているのが分かった。
夜目が効く私じゃなければ何処に何があるのか分からなかったと思う。
どうやらここは観葉植物などのインテリアを扱うお店のようだ。
それと何処からかお香のような良い匂いが漂っていた。
「いらっしゃい」
突然、背後から声が聞こえた。老婆の声だ。
私は反射でジャンプをしてその声と距離をとる。
気配に全く気付かなかった。
もしこれが私を捕らえようとグラダラスから来た人だったなら簡単に捕まっていた。
私の脈が速くなりバクバクしているのが分かる。
木剣は持ってきていないので両手を前に出し構えるだけ。
お香の匂いは彼女からするようだ。
「ほほ、そんなに構えんでもとって食ったりせん。あたいは店主のターシャ。しがない魔道具を販売する老婆だよ」
床に同化してしまいそうな程の黒いローブに身を纏うターシャと名乗った老婆はこの店の店主であることとここは魔法具を販売するお店のことを私に伝えた。
長髪なのだろうか、白髪になった髪と口元だけは見えて目元はローブに覆われていて分からない。
その姿から魔女を彷彿とさせる。
「ま、魔道具?」
それより聞き慣れない言葉に私は反射でそのまま聞き返してしまう。
特に怪しくないと感じた私は構えを解いた。
もし本当に危ないと感じたのならシロムが助けてくれそうだしね。
「見たことないのかい? ほら」
ターシャさんはローブのポケットから何やら鈴のような物を手渡してきた。
鈴には紐が付けられており振るとチリンと心地が良い音が店内に響く。
すると私が持っている鈴とは違う場所から鈴の音が聞こえる。
あれ? こんな状況前にもあったよね。
「同じような物を見たことがあります。鈴じゃなくてベルでしたけど」
「そうかいそうかい。まぁ心ゆくまで見ていくがいいさ。なんせ客が来るのは数年ぶりだからの」
鈴を返すと二度頷き口角を上げて数年ぶりの来客を嬉しそうにしていた。
悪い人ではなさそうだし、外観が外観だからかいくら営業中と書いてあれど私のように興味をそそられる人は少ないでしょうね。
たぶんシロムと一緒じゃなければ入らなかった自信はある。
「ありがとうございます。お言葉に甘えてゆっくりさせて頂きますね」
ワンピースの裾をつまんでちょこんとお辞儀をする。
先程の失礼を謝罪する意も加わっている。
果たしてターシャさんに伝わっているかどうか分からないけどね。
そんなことより私は店内を見て回ることにした。
「ふむふむ。さっきの観葉植物は新鮮な空気を出してくれるんだね」
顎に手を当てて考える。
前世で言うところの空気清浄機みたいな役割を果たしてくれるのでしょうね。
私の部屋に一本あってもいいかもしれない。
値段は一本、ハイネ金貨十枚。
この世界では金銀銅の硬貨が存在する。
金貨な時点で高価な物だと容易に判断出来る。
「こっちは魔力が無くても火が簡単に起こせる魔石、ねぇ……」
魔石にも色んな物があるようで私が持っているヒックさんから貰った魔石よりも綺麗な形をしておりまるでサイコロの賽のようだ。
他にも水や風、それから防御壁を作ることが出来る魔石……魔法がろくに使えない私にとってどれも実に魅力的な商品だ。
だけどこれも余裕で金貨三十枚は越える。
さっきの観葉植物を三本も買える計算になる。
ゼスオジからお金を貰っているとは言えこんな高価な物に使うと卒業までにお金が無くなってしまいそう。
趣味を見つけるよりかはアルバイトを始めた方がいいのではなかろうか。
「ん~」
色とりどりの魔石を見ながら首を傾げる。
「お嬢ちゃんは魔道具に興味があるのかい?」
どうやら私は魔石の前で唸ってしまったもんで魔道具に興味があるものだとターシャさんに勘違いをされてしまった。
いや、興味が無い訳では無い。
「はい。こういうのって自分で作れたりしませんかね?」
「うおおおおぉ! 魔道具に興味があるのかい!? しかも自分で作りたいと!」
ターシャさんの琴線に触れたようで私の両手を掴むと目を輝かせて嬉しがっていた。
初めて見る青い瞳と冷たい手、まるで人ではなく幽霊なのではないかと思わせるほど冷たいのだ。
幽霊なんて居ないだろうし、ただの冷え性でしょうけど。
「え、ま、まぁ?」
ターシャさんの気迫に押されて生半可な返事しかできなかった。
「そうかいそうかい! さ、こっちへおいで」
「う、うわぁ!?」
私はターシャさんに連れられてしまった。
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