転生少女と聖魔剣の物語

じゅんとく

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魔の森、攻略!

魔の森、潜入(6)

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 リーミア達が魔の森に着いた同時刻……



 エルテンシア国、王都の城下町……別名マネニーゼ市場。



 その市場の繁華街がある街から城壁を出て、隣国へと続く表参道を北西へと少し進むと、直ぐに小さな街が見えて来る。街の名前はランドアットと呼ばれていた。小さな街であるが……1軒辺りの家の面積は大きく、小さな家でも市場の店10個分の広さがあった。



 ランドアットに住む人は、大半が純白城の要人で、階級も大臣や高官等……重役達がほとんどだった。その為、家の主が、帰宅する事が少なく……何か大事な用が無い限り、家に戻る事はほとんど無かった。



 その中で街の最西端に位置し、他の家と比べても比較にならないほど大きく、まるで宮殿と見間違えしまいそうな程の屋敷があった。



 その日の夕刻、陽が沈み掛けて行く頃……1台の馬車が屋敷の中へと入って行く。門を潜り、広い中庭を通って、玄関前の大理石で作られた階段の前で止まった。玄関前には屋敷に仕える下部達が居て、彼等が馬車が来た事に気付くと……馬車の扉を開ける。



 馬車の中から60代過ぎの白髪の男性と、まだ成人を迎えて無さそうな少女の2人が乗っていた。



「ようこそ……いらっしゃいませ、リーティン様」



「ウム」



 彼は畏まった服装で玄関前に立ち、少女も美しいブロンドの髪を垂らし、それに見合うかの様な衣装を身に纏っていた。彼等は一緒に屋敷へと歩み始める。



 玄関の扉を下部達に開けさせて貰い、中に入ると……美しい装飾に彩られた広間が現れた。大人が100人集まっても、まだ余裕がありそうな程の広さがあった。



 彼等は舌を巻いた様に驚いた表情で大きな屋敷の広間を眺めていた。



「凄いですわね」



 少女は呆気に取られた表情で首を上げて天井を眺める。



 まるで何処か異国の聖杯堂を思わせる様な程、高い天井が真上に伸びていた。天井周辺には金銀で彩られたシャンデリアが無数あり、大きな広間を照らし続けていた。



 彼等は広間を進み、目の前の深紅の絨毯が敷かれた階段を上がって行く、数段上がると……中央左右に別れた踊り場へと出た。



 踊り場に出た彼等は目の前の壁一面に巨大なタペストリーを見て驚かされる。その装飾品が刺繍により作らていて、繊細な技術により作られた物であり、その高度な技術に圧巻されていた。



「素晴らしい……こんな工芸品が、我が国にもあったのか……」



 リーティンと名乗る男性はタペストリーを眺めながら呟く。



「エルテンシアが帝国だった頃、作られた工芸品です。レムリア大陸を探しても同じ物は、なかなか見つから無いでしょう」



 右側の階段から、40代前後の赤茶色の髪をして、白い衣装に身を包んだ男性が降りて来た。



「おお、これはこれは……ジャルサ侯爵閣下様、お久しぶりですな」



 リーティンは男性に向かって深く礼をする。



「いえ……こちらこそ、屋敷に来て頂き光栄であります」



 ジャルサはリーティンに向かって礼をする。その時……隣に居る少女に彼は目を向ける。



「そちらは、娘さんですか?」



「ああ、そうだ。娘のルミアだ。今年16歳になったばかりだ」



 リーティンが言うと、娘のルミアは軽く一礼をする。



「お美しいですね」



 ジャルサが微笑みながら言うと……、ルミアは「まあ……」と、顔を紅くしながら答える。



「そう言えば……何か、話があるらしいでしたよね?」



 リーティンがジャルサに向かって言う。



「ええ、せっかく来て下さったので、食事しながら話をしましょう」



 彼は階段を降りて、2人を食堂へと案内する。



 宮殿の様な屋敷である為、食堂も広かった……。軽く20人以上が座れる様な大きなテーブルに、たった3名だけが座り会食を楽しんでいた。



 高級料理を堪能した彼等はひと息着くと、高級果実酒を酌み交わしながら近況に付いての話しを始める。



「ここ最近マネニーゼの治安が宜しく無い噂を良く耳にします。魔族出現以降、市場では窃盗や暴行などの騒ぎが多発して、市場から逃げる輩までいると噂が広まっております。市場を統括している市長である貴方の判断をお聞きしたいのですが……」



「いやはや……ジャルサ様の知る所ではありましたか……先日の魔族の一件と言い、我々市場を管理する者としても、最善の努力はしておりますが。何分……思うようにいかないのが現状ですな……」



 彼の言葉にジャルサは鋭い目付きで彼を睨んだ。それを見たリーティンは、まるで蛇に睨まれた蛙の様に縮こまった。



「なるほど……まあ、我々も別に貴方個人を攻めているのではありませんよ。色々と理由はありますからね……ただ、あまりにも荷が重すぎる様でしたら、無理に市場の管理人職を背負わずとも、それに相応した人材に職務を任せる……と、言う選択肢もありますからね……」



「ああ……まあ、最悪の場合は、そう言う判断も検討しますよ!まだ、私自身頑張れますので……」



 リーティンは慌てふためきながら答える。



「ほう、まだ……余力は残してある。そう……判断して構わないのですね」



「ええ……勿論ですとも。まだまだ頑張れます!」



「かしこまりました」



 ジャルサはリーティンに向かって軽く頭を下げる。その動作を見た彼は、なんとか……首が繋がった、と……安堵の表情を浮かべる。



「時に……そちらのお嬢さん、現在お付き合いしている方とかはますか?」



 突然話題が変わり、ルミアは少し慌てた様子でジャルサを見た。



「え、あ……あの、まだ男性とのお付き合いはありませんが……!」



 その言葉にジャルサはフフッと微笑んだ。



「実は……」



 彼が言葉を発しようとした時だった。



 突然食堂の扉が開き、使用人の男性が1人現れた。



「失礼します。侯爵閣下様、ラナス様から伝聞が届きました!」



 男性の言葉にジャルサは嫌悪の表情で彼を睨んだ。



「今、お客様を迎えている。用件は後で聞くから……別室で待っていろ!」



「はい、すみません……」



 男性は慌てて食堂から出て行った。



 突然現れた男性に対してリーティンは呆気に取られた表情でジャルサを見る。



「宜しいのですか?何か……急用の様な感じでしたが……」



 その言葉に彼は軽く果実酒を軽く口にする。



「構いません、どうせ……他愛の無い伝言ですから……」



「はあ……そうでありましたか……?」



 リーティンは少し唖然とした表情で答える。



「ところで……私の親族にも、ルミア嬢と歳の近い男性がおられます。宜しければ、一度お会いしませんか?」



 その言葉にリーティンとルミアは嬉しそうな喜び手を叩いた。



「い……良いのですか?貴方のご親族と言っても……それなりに階級がある方では?」



「階級など関係ありません。会って……互いに良い関係を作れれば良いのです。先ずは……私の親族に伝聞を送りますので、会ってから……互いの関係を築いて行くと良いでしょう」



「分かりました!」



 ルミアは嬉しそうに返事をする。



「では……本日は、これでお開きにしましょうか」



 そう言うと、ジャルサは2人を玄関先に待機してある馬車の近くまで見送りに出て行く。彼等を見送った後、ジャルサは屋敷に戻り、自分用の書斎へと入って行く。



 書斎には使用人の男性の姿があった。彼は男性に対して険しい表情で見た。

「来客者が居る時は伝言は控えろと……言ったはずだったが……」



「申し訳ありません。早急に伝える様に書かれていたので……」



「そうか……で、ラナスからは、何の伝言だ?」



「はい、実は……転生少女達のメンバーに紛れ込んだ物達が、先程……魔の森に着いたと知らせがあったそうです。彼は後日、魔剣士との接触を試みるとの報告がありました」



「そうか……だが、ヤツを利用するのは構わないが……我が軍団の仲間にするときは呪法を解く必要があるな……それ以上に、ヤツは仮に転生少女を倒したとして……聖魔剣を扱えるのか?」



「さ……さあ、どうなんでしょうね?」



「まあ良い。私が一筆書くから、それをラナスに送っといてくれ」



「かしこまりました」



 男性はジャルサに向かって一礼をする。




 現在……



 キャシャアアー!



 魔の森に入ったリーミアとアーレスは迫り来る魔物達を次々と倒し続けていた。



「フウ……」



 リーミアは扱い慣れない魔法剣と魔法の杖を使い続けて、少し疲れを感じ初めていた。アーレスから聖魔剣を使うのは控える様に言われて魔法剣で戦闘に入ったが、思う様な戦いが出来ず、少しばかり苦戦していた。



「疲れたか……?」



「ちょっと……」



 リーミアはアーレスの言葉に軽く頷きながら答える。



「少し岩陰で休もうか?」



 そう言った直後……



 ガサッ……



 彼等の近くの岩陰で、何かが動く音が聞こえた。



「ムッ、何者だッ!」



 アーレスは急いで、足元にある小石を拾って投げつける。



 ガンッ



 岩陰に隠れていたモノは小石が当たって「グエッ……」と、うめき声を発しながら倒れた。



「何かしら?」



 リーミアとアーレスは、岩陰の側へと向かう……。



「こ……コレは!」



 岩陰に隠れていたモノを見てアーレスは驚いた。
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