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魔術師の館
魔剣士の過去(6)
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飛竜のメンバー達は主が呼吸をしていない事に気付く。まるで自身の意思では無く何者かに操られてながら動いている……そう感じされていた。
「ギャアオオー!」
異様な雄叫びと同時に、主は大剣を振り回しながら突進をして来る。
ビュン、ビュンッ
一体、何処からそんな勢いが有るのか解らない程。主は先程よりも素早く、更に力強く攻撃して来る。
「何てヤツだ!さっきよりも凄まじい!」
まるで別の生命体が宿ったかの様に、恐ろしく速い攻撃にメンバー達は、うろたえてしまう。
メンバーの男性が盾を構えて、攻撃を交わそうと試みるが……
バアンッ!
大きな刃が盾ごと男性を弾き飛ばしてしまった。
圧倒的な威力の前にメンバー達は成す術も無く、困惑してしまう。
(このままでは、皆が危険だ)
そう思ったルディンスは、主の視界に入らない様に身を隠した。
混戦の中、メンバー達は敵からの攻撃を避けるのに手一杯で、皆はルディンスの事を意識して居なかった。
その僅かな一瞬だった。
ヒュン、ズバッ!
ルディアンスが、主の大剣を持っている右手首を切り落とした。
「お、凄い!」
ルディアンスの攻撃を見た男性が嬉しそうに呟く。
「クオオー……」
悲鳴の様な声を上げながら、主の行動が突然弱くなり、膝立の状態になった。
「グゴゴ……」
主が顔を真上に上げたまま、身動きしなくなっていると……ルディアンスは、無言のまま敵の首をくり落とした。
ズバッ!
それと同時に敵の大きな胴体が地面に横たわり、二度と動かなくなった。
「やった……」
メンバーは、ようやく野営地を制圧出来たと思うと、安心した状態でその場に座り込んだ。
ルディアンスは、主が手にしていた大剣が、元の柄の棒状へと変わるのを見て、棒状の物を手にする。
「これが……魔法剣なんだ……」
ルディアンスが、敵が持っていた武器を眺める。
(こんな武器があれば……。これを持って競技大会に出場すれば……)
そう考えている時だった。
「ルディ様。敵の武器は全て鑑識に回しますので、こちらの袋に入れて下さい」
サーシャが、野営地での敵の遺品集めに回っていて、ルディアンスが待っていた棒状の物を見て言う。
「あ……ああ、これは後で自分がギルド集会所に出すよ」
そう返事をしたルディアンスに対してサーシャが真剣な眼差しで相手を見る。
「いけません!倒した主が持っていた魔法剣は、呪いが掛かっている可能性がありますから、所持するのは危険です。もし……貴方が魔に侵されて理性を失ったらどうするのですか?しっかり呪い効果を除去しないと貴方の身に危険が及ぶ可能性がありますので今直ぐにこちらの袋に入れて下さい!」
「ああ、わかったよ。全く……」
そう言って、彼は棒状の物を袋の中へと押し込んだ。
「はい、良く出来ました。結構です」
サーシャは柔かな表情で、相手が自分よりも年上な事など微塵も感じさせない態度にルディアンスは少し呆れ返っていた。
そんな彼女が他の遺品を袋に詰めようと立ち去って行くのを見て、彼は懐に隠し持った棒状の物を確認する。
「………」
彼は、皆の方へと歩み寄りながら声を掛ける。
「ちょっと、向こうの方を確認して来るよ」
そう言うと、皆は「了解です」と、返事をする。
ルディアンスは皆とはぐれて森の中へと入ると、棒状の物を取り出した。
彼は主が扱っていた様に、軽く柄を降り降ろした。
ブンッ
するると、先程魔物が使っていた時と同じ赤黒い大きな刃がルディアンスの手元に現れた。
その刃が現れた柄を手にしている手首からギシギシ……と、まるで見えない何かがルディアンスの右手から、手首に掛けて何かが絡み付いて来る様な感覚に捉われる。
「ウ……グ……ガ……」
目眩がして、まるで何か別の者が体に入って来る様な感覚に彼は襲われる。
それと同時に、彼の脳内で何か声が聞こえて来る。
『フハハ……貴様が新たな所有者なのか……人間か、まあ……良いぞ、我が力を存分に使うが良い。まず初めに付近にいる奴を皆殺せ。そうすれば貴様は更に強くなる』
ゼエ、ゼエ……と、息を切らしながら彼は、必死に抵抗した。
「や……止めろー!」
ルディアンスは叫びながら思い切って剣を投げ捨てる。しかし……呪いの魔法剣が彼の脳内に呼び掛けて来る。
『クカカ……無駄だ、貴様との契約は完了した。どんなに足掻こうとも、貴様は既に私と繋がっている。もはや運命からは逃れられない。これからは私の為だけに働くんだ。心配することは無い、直ぐにお前は知るのだ……殺戮の喜びをな!』
「止めろォ!」
彼は頭を抱えながら地面に横たわる。
「ルディ様ー……」
何処からかサーシャの声が聞こえてた。
「ど……どうしたの?」
振り返るとサーシャが慌てた様子で近くに来ていた。
「何かありましたか?叫んでいる様な声が聞こえましたが……」
「だ……大丈夫、平気だよ」
「そうですか……?」
彼が困惑している様子だったのを見てサーシャが側に近寄り、彼の身体を支えようとする。
「だ……大丈夫だ。それよりもサーシャ、すまないが頼みがある」
「何か……?」
「そこにある、物を壊して欲しい」
そう言われて、彼女は棒状の物を見た。この時、彼女はそれが先程まで魔物が使っていた魔法剣だったとは気づかず。言われた通り、それを剣で叩き壊した。
(これで良い、俺には……あんな物は不要だ)
そう安心して、彼は起き上がるとサーシャに向かって「ありがとう」と、軽く例を述べる。
「さあて……取り敢えず、野営地を制圧出来たし、明日皆で市場に凱旋しよう」
「そうですね」
彼等は他のメンバー達と一緒に、一旦コテージに戻って、翌日帰還する事に決めた。
次の日……
アスレイウが宿舎に居ると、セフィーが戻って来た報告を受ける。その日、アスレイウは資料作成に追われていて、中々部屋から出られない状態だった。そんな彼の事を配慮してか……セフィーが盟主部屋に現れた。
「やあ、待たせて悪いね」
「いえ……別に構いませんよ」
セフィーが少しニヤけた表情で返事をする。彼は、アスレイウが作業している机のそばに近付くと丸めた羊皮紙を机の隅に置いた。
「例の場所が記されている地図です」
「かたじけない」
そう言うとアスレイウは、地図が描かれた羊皮紙を広げる。
「それにしても……」
セフィーが何気無く呟くと、アスレイウが彼の方に視線を向ける。
「盟主さんも物好きな人ですね、占星術に興味があるとは……」
「まあ、自分の事に付いて、色々と見てもらおうと思っただけだよ」
「そうですか……あ、ちなみに……そちらの占星術師の方はレンティと言う年配の女性です」
「そうか……分かった。感謝する」
彼が返事すると、セフィーは軽くニヤけた表情を浮かべながら「では、失礼します」と、軽く挨拶しながら盟主部屋を出て行った。
翌日……
その日、アスレイウは1人宿舎を出て、彼が地図で示してくれた場所を目指して市場を歩いて行く。
彼は、人通りの多い市場の中を歩き続けて行く。賑やかで人通りの多い場所から外れた場所に目的地である建物が見えて来た。約20余年生きて居て、ほぼその生涯の半分近くをマネニーゼ市場の中で暮らしていた彼にとって、目的地の場所は初めて目にする場所でもあった。
少し離れた場所からでも、その建物が付近の民家や店と比べて、一風変わった建物であるのは直ぐに分かった。
彼が近付くと、建物の中から老婆が勢いよく現れた。彼女は建物付近で悪戯していた子供達に対して激を飛ばす。
「逃げろー!」
「悪ガキ共め、二度と来るんじゃない!」
老婆は、逃げ去る子供達に向かって叫んだ。
年配の女性とは思えない迫力にアスレイウは少し驚かされた。彼は老婆の近くへ寄ると、彼女に対して声を掛ける。
「あの……初めまして、こんにちは」
アスレイウの声に気付いた老婆は「ん……?」と、頷きながら振り返る。
彼女は、珍しい来客に対して少し驚いたが……直ぐに本来の雰囲気に戻って相手に対して挨拶を交わす。
「おやおや、これはこれは……初めまして、こんにちは」
彼女はチラッと相手を見るなり、何か悟った様な表情を浮かべる。
「ふむ……其方は先日、訪れた風変わりな男性の知人ですな……」
それを聞いたアスレイウは、少し驚かされた。まだ、何も話していない段階から、彼女はこちらの事を見抜いている様子だった。
「まあ……中で話をしようじゃないか」
「は……はい、そうですね」
アスレイウは、少し緊張した様子で老婆と一緒に店の中へと入って行く。
「ギャアオオー!」
異様な雄叫びと同時に、主は大剣を振り回しながら突進をして来る。
ビュン、ビュンッ
一体、何処からそんな勢いが有るのか解らない程。主は先程よりも素早く、更に力強く攻撃して来る。
「何てヤツだ!さっきよりも凄まじい!」
まるで別の生命体が宿ったかの様に、恐ろしく速い攻撃にメンバー達は、うろたえてしまう。
メンバーの男性が盾を構えて、攻撃を交わそうと試みるが……
バアンッ!
大きな刃が盾ごと男性を弾き飛ばしてしまった。
圧倒的な威力の前にメンバー達は成す術も無く、困惑してしまう。
(このままでは、皆が危険だ)
そう思ったルディンスは、主の視界に入らない様に身を隠した。
混戦の中、メンバー達は敵からの攻撃を避けるのに手一杯で、皆はルディンスの事を意識して居なかった。
その僅かな一瞬だった。
ヒュン、ズバッ!
ルディアンスが、主の大剣を持っている右手首を切り落とした。
「お、凄い!」
ルディアンスの攻撃を見た男性が嬉しそうに呟く。
「クオオー……」
悲鳴の様な声を上げながら、主の行動が突然弱くなり、膝立の状態になった。
「グゴゴ……」
主が顔を真上に上げたまま、身動きしなくなっていると……ルディアンスは、無言のまま敵の首をくり落とした。
ズバッ!
それと同時に敵の大きな胴体が地面に横たわり、二度と動かなくなった。
「やった……」
メンバーは、ようやく野営地を制圧出来たと思うと、安心した状態でその場に座り込んだ。
ルディアンスは、主が手にしていた大剣が、元の柄の棒状へと変わるのを見て、棒状の物を手にする。
「これが……魔法剣なんだ……」
ルディアンスが、敵が持っていた武器を眺める。
(こんな武器があれば……。これを持って競技大会に出場すれば……)
そう考えている時だった。
「ルディ様。敵の武器は全て鑑識に回しますので、こちらの袋に入れて下さい」
サーシャが、野営地での敵の遺品集めに回っていて、ルディアンスが待っていた棒状の物を見て言う。
「あ……ああ、これは後で自分がギルド集会所に出すよ」
そう返事をしたルディアンスに対してサーシャが真剣な眼差しで相手を見る。
「いけません!倒した主が持っていた魔法剣は、呪いが掛かっている可能性がありますから、所持するのは危険です。もし……貴方が魔に侵されて理性を失ったらどうするのですか?しっかり呪い効果を除去しないと貴方の身に危険が及ぶ可能性がありますので今直ぐにこちらの袋に入れて下さい!」
「ああ、わかったよ。全く……」
そう言って、彼は棒状の物を袋の中へと押し込んだ。
「はい、良く出来ました。結構です」
サーシャは柔かな表情で、相手が自分よりも年上な事など微塵も感じさせない態度にルディアンスは少し呆れ返っていた。
そんな彼女が他の遺品を袋に詰めようと立ち去って行くのを見て、彼は懐に隠し持った棒状の物を確認する。
「………」
彼は、皆の方へと歩み寄りながら声を掛ける。
「ちょっと、向こうの方を確認して来るよ」
そう言うと、皆は「了解です」と、返事をする。
ルディアンスは皆とはぐれて森の中へと入ると、棒状の物を取り出した。
彼は主が扱っていた様に、軽く柄を降り降ろした。
ブンッ
するると、先程魔物が使っていた時と同じ赤黒い大きな刃がルディアンスの手元に現れた。
その刃が現れた柄を手にしている手首からギシギシ……と、まるで見えない何かがルディアンスの右手から、手首に掛けて何かが絡み付いて来る様な感覚に捉われる。
「ウ……グ……ガ……」
目眩がして、まるで何か別の者が体に入って来る様な感覚に彼は襲われる。
それと同時に、彼の脳内で何か声が聞こえて来る。
『フハハ……貴様が新たな所有者なのか……人間か、まあ……良いぞ、我が力を存分に使うが良い。まず初めに付近にいる奴を皆殺せ。そうすれば貴様は更に強くなる』
ゼエ、ゼエ……と、息を切らしながら彼は、必死に抵抗した。
「や……止めろー!」
ルディアンスは叫びながら思い切って剣を投げ捨てる。しかし……呪いの魔法剣が彼の脳内に呼び掛けて来る。
『クカカ……無駄だ、貴様との契約は完了した。どんなに足掻こうとも、貴様は既に私と繋がっている。もはや運命からは逃れられない。これからは私の為だけに働くんだ。心配することは無い、直ぐにお前は知るのだ……殺戮の喜びをな!』
「止めろォ!」
彼は頭を抱えながら地面に横たわる。
「ルディ様ー……」
何処からかサーシャの声が聞こえてた。
「ど……どうしたの?」
振り返るとサーシャが慌てた様子で近くに来ていた。
「何かありましたか?叫んでいる様な声が聞こえましたが……」
「だ……大丈夫、平気だよ」
「そうですか……?」
彼が困惑している様子だったのを見てサーシャが側に近寄り、彼の身体を支えようとする。
「だ……大丈夫だ。それよりもサーシャ、すまないが頼みがある」
「何か……?」
「そこにある、物を壊して欲しい」
そう言われて、彼女は棒状の物を見た。この時、彼女はそれが先程まで魔物が使っていた魔法剣だったとは気づかず。言われた通り、それを剣で叩き壊した。
(これで良い、俺には……あんな物は不要だ)
そう安心して、彼は起き上がるとサーシャに向かって「ありがとう」と、軽く例を述べる。
「さあて……取り敢えず、野営地を制圧出来たし、明日皆で市場に凱旋しよう」
「そうですね」
彼等は他のメンバー達と一緒に、一旦コテージに戻って、翌日帰還する事に決めた。
次の日……
アスレイウが宿舎に居ると、セフィーが戻って来た報告を受ける。その日、アスレイウは資料作成に追われていて、中々部屋から出られない状態だった。そんな彼の事を配慮してか……セフィーが盟主部屋に現れた。
「やあ、待たせて悪いね」
「いえ……別に構いませんよ」
セフィーが少しニヤけた表情で返事をする。彼は、アスレイウが作業している机のそばに近付くと丸めた羊皮紙を机の隅に置いた。
「例の場所が記されている地図です」
「かたじけない」
そう言うとアスレイウは、地図が描かれた羊皮紙を広げる。
「それにしても……」
セフィーが何気無く呟くと、アスレイウが彼の方に視線を向ける。
「盟主さんも物好きな人ですね、占星術に興味があるとは……」
「まあ、自分の事に付いて、色々と見てもらおうと思っただけだよ」
「そうですか……あ、ちなみに……そちらの占星術師の方はレンティと言う年配の女性です」
「そうか……分かった。感謝する」
彼が返事すると、セフィーは軽くニヤけた表情を浮かべながら「では、失礼します」と、軽く挨拶しながら盟主部屋を出て行った。
翌日……
その日、アスレイウは1人宿舎を出て、彼が地図で示してくれた場所を目指して市場を歩いて行く。
彼は、人通りの多い市場の中を歩き続けて行く。賑やかで人通りの多い場所から外れた場所に目的地である建物が見えて来た。約20余年生きて居て、ほぼその生涯の半分近くをマネニーゼ市場の中で暮らしていた彼にとって、目的地の場所は初めて目にする場所でもあった。
少し離れた場所からでも、その建物が付近の民家や店と比べて、一風変わった建物であるのは直ぐに分かった。
彼が近付くと、建物の中から老婆が勢いよく現れた。彼女は建物付近で悪戯していた子供達に対して激を飛ばす。
「逃げろー!」
「悪ガキ共め、二度と来るんじゃない!」
老婆は、逃げ去る子供達に向かって叫んだ。
年配の女性とは思えない迫力にアスレイウは少し驚かされた。彼は老婆の近くへ寄ると、彼女に対して声を掛ける。
「あの……初めまして、こんにちは」
アスレイウの声に気付いた老婆は「ん……?」と、頷きながら振り返る。
彼女は、珍しい来客に対して少し驚いたが……直ぐに本来の雰囲気に戻って相手に対して挨拶を交わす。
「おやおや、これはこれは……初めまして、こんにちは」
彼女はチラッと相手を見るなり、何か悟った様な表情を浮かべる。
「ふむ……其方は先日、訪れた風変わりな男性の知人ですな……」
それを聞いたアスレイウは、少し驚かされた。まだ、何も話していない段階から、彼女はこちらの事を見抜いている様子だった。
「まあ……中で話をしようじゃないか」
「は……はい、そうですね」
アスレイウは、少し緊張した様子で老婆と一緒に店の中へと入って行く。
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