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惨めな初めての恋
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そんな折、わたしは寄宿舎から帰り、よく遊びに訪れるようになった従兄弟のフロードと親しくなっていた。
彼は読書家で、わたしと趣味が合い、いつも二人で楽しくおしゃべりをした。
最初はわたしとリナに会いに来ていた彼だったが、リナは次第に彼に飽き、彼もリナとはうまが合わないようだった。
だから、わたしと彼はいつも二人でお茶を飲み、語らった。
彼はロマンチストで、かわいいエル、君はぼくの女神だと軽口を叩き、折に触れわたしに花を贈ってくれ、いつしかわたしは恋に落ちていた。
わたしは自分の凡庸な容姿のことは忘れ、彼と幸せな時間を過ごすことが出来た。
従兄弟どうしは血が濃すぎる。両親はそう言っていたから、きっと結婚することは出来ないと思いながらも、わたしは彼に惹かれた。
ほんのひと時だけでも、彼と恋仲になりたい。
わたしはそう思っていた。
そう、あの時までは。
ある春の日、わたしは午後の庭園を散歩していた。
木立の前に差し掛かった時だ。短い人の悲鳴のようなものが聞こえた。
ほんの一瞬のことで、気のせいだと通り過ぎてしまうことも出来たが、なんとなく胸がざわついた。
木立の中に分け入ると、衝撃の光景が目に飛び込んだ。
二つの白い裸体が絡み合ってうごめいていたのだ。
それはリナとフロードだった。
二人はやわらかな森の下草の上に横たわり、唇と唇、そして、下半身を繋げて、呼吸を荒くし、愛し合っていた。
父の秘密の本の中の絵のように。
わたしには気がつかないようだ。
そして、わたしは彼がこう言うのを聞いた。
「リナ…!ぼくの女神…ああ…!」
わたしはそこから逃げ出した。
自分の寝室に逃げ込み、枕に顔をつっぷして、ああ!ああ!と号泣した。涙はいつまでも枯れなかった。
自分の目から血の涙が流れでている気さえした。
どうして!どうして!
どうして妹のリナと!
二人はいつからそんなに親密になったのか。
リナは確かに、地味なわたしと違い人を惹きつける華やかな美しさを持っていた。
フロードも最初はリナの気をひこうとしていた様子だった。
だけど、二人は気が合うようではなく、だからこそフロードはわたしと親しくしてくれるようになったと思っていたのに。
なのにフロードはリナと、愛しあう男女がするあのことを。
それにわたしだけのもののはずだった、あの言葉、『ぼくの女神』と…!
夕食をとらないわたしをお付きのメイドが心配していたが、わたしはずっと部屋であの光景を思い出しては泣いた。泣き続けた。
深夜、眠れずにいるわたしの寝室に、なんと妹のリナが入ってきた。
十歳頃までは寝室は一緒で、寝室を分けられた後も時折二人で一つのベッドで深夜までおしゃべりをして、そのまま一緒に寝てしまったものだったが、最近はそんなことはなかったというのに。
「お姉様」
「リナ…ひ、一人に…して…」
わたしはそう声を絞り出すのが精一杯だったが、リナは布団に滑り込んできて、お構いなしに続けた。
「見られてしまったのね…今日はつい、なんとなくああなってしまったの」
「……」
「彼がお姉様にプレゼントしたいという本を持っていたから…ちょっといたずらでそれを取り上げて森の中でふざけていたら…」
「……っ!」
わたしは泣き出しそうになるのをこらえた。
「わたしたち、森の中で燃えたわ…彼ってたいくつな人だと思っていたのに、とても情熱的なところもあるのね」
リナは言うと、熱い吐息をもらした。
「あんなのは久しぶり…わたしの大切な場所が熱く疼いて…彼と何度も求めあったわ…今もまだ彼のものが入っていた感触が残っている…好きだ、好きだと何度も言って、わたしを激しく、貫くの。そのたびにわたしはとてもいい気持ちになって、はしたない声をたくさんあげてしまったわ…」
「……う…っ!」
「フロードはお姉様は無愛想でたいくつだって…。わたしの方が好きだと言ったわ。ずっと、わたしに恋焦がれていたって。わたしの方が魅力的で楽しいって。残念ね、お姉様…彼の体はとてもいいわよ…」
「な……」
言うだけ言って、満足したようにリナは眠ってしまった。
わたしはリナから距離をとった。彼女の体温が厭わしかった。
わたしはフロードに唇をねだられたこともない。どうしてリナとはそんなことになるの?
わたしはそれ以来、フロードを避け、鬱々と日々を過ごした。
わたしはフロードに好かれていると思っていたのに。無愛想でたいくつ…無愛想でたいくつ…。そんなふうに思われていただなんて…。
自覚が全くなかったわけではない。確かにわたしはリナに比べれば、素直に感情を表に出すことが得意ではない。
そこに現れたのが、父の仕事相手の子息であるイドレスだった。
彼は読書家で、わたしと趣味が合い、いつも二人で楽しくおしゃべりをした。
最初はわたしとリナに会いに来ていた彼だったが、リナは次第に彼に飽き、彼もリナとはうまが合わないようだった。
だから、わたしと彼はいつも二人でお茶を飲み、語らった。
彼はロマンチストで、かわいいエル、君はぼくの女神だと軽口を叩き、折に触れわたしに花を贈ってくれ、いつしかわたしは恋に落ちていた。
わたしは自分の凡庸な容姿のことは忘れ、彼と幸せな時間を過ごすことが出来た。
従兄弟どうしは血が濃すぎる。両親はそう言っていたから、きっと結婚することは出来ないと思いながらも、わたしは彼に惹かれた。
ほんのひと時だけでも、彼と恋仲になりたい。
わたしはそう思っていた。
そう、あの時までは。
ある春の日、わたしは午後の庭園を散歩していた。
木立の前に差し掛かった時だ。短い人の悲鳴のようなものが聞こえた。
ほんの一瞬のことで、気のせいだと通り過ぎてしまうことも出来たが、なんとなく胸がざわついた。
木立の中に分け入ると、衝撃の光景が目に飛び込んだ。
二つの白い裸体が絡み合ってうごめいていたのだ。
それはリナとフロードだった。
二人はやわらかな森の下草の上に横たわり、唇と唇、そして、下半身を繋げて、呼吸を荒くし、愛し合っていた。
父の秘密の本の中の絵のように。
わたしには気がつかないようだ。
そして、わたしは彼がこう言うのを聞いた。
「リナ…!ぼくの女神…ああ…!」
わたしはそこから逃げ出した。
自分の寝室に逃げ込み、枕に顔をつっぷして、ああ!ああ!と号泣した。涙はいつまでも枯れなかった。
自分の目から血の涙が流れでている気さえした。
どうして!どうして!
どうして妹のリナと!
二人はいつからそんなに親密になったのか。
リナは確かに、地味なわたしと違い人を惹きつける華やかな美しさを持っていた。
フロードも最初はリナの気をひこうとしていた様子だった。
だけど、二人は気が合うようではなく、だからこそフロードはわたしと親しくしてくれるようになったと思っていたのに。
なのにフロードはリナと、愛しあう男女がするあのことを。
それにわたしだけのもののはずだった、あの言葉、『ぼくの女神』と…!
夕食をとらないわたしをお付きのメイドが心配していたが、わたしはずっと部屋であの光景を思い出しては泣いた。泣き続けた。
深夜、眠れずにいるわたしの寝室に、なんと妹のリナが入ってきた。
十歳頃までは寝室は一緒で、寝室を分けられた後も時折二人で一つのベッドで深夜までおしゃべりをして、そのまま一緒に寝てしまったものだったが、最近はそんなことはなかったというのに。
「お姉様」
「リナ…ひ、一人に…して…」
わたしはそう声を絞り出すのが精一杯だったが、リナは布団に滑り込んできて、お構いなしに続けた。
「見られてしまったのね…今日はつい、なんとなくああなってしまったの」
「……」
「彼がお姉様にプレゼントしたいという本を持っていたから…ちょっといたずらでそれを取り上げて森の中でふざけていたら…」
「……っ!」
わたしは泣き出しそうになるのをこらえた。
「わたしたち、森の中で燃えたわ…彼ってたいくつな人だと思っていたのに、とても情熱的なところもあるのね」
リナは言うと、熱い吐息をもらした。
「あんなのは久しぶり…わたしの大切な場所が熱く疼いて…彼と何度も求めあったわ…今もまだ彼のものが入っていた感触が残っている…好きだ、好きだと何度も言って、わたしを激しく、貫くの。そのたびにわたしはとてもいい気持ちになって、はしたない声をたくさんあげてしまったわ…」
「……う…っ!」
「フロードはお姉様は無愛想でたいくつだって…。わたしの方が好きだと言ったわ。ずっと、わたしに恋焦がれていたって。わたしの方が魅力的で楽しいって。残念ね、お姉様…彼の体はとてもいいわよ…」
「な……」
言うだけ言って、満足したようにリナは眠ってしまった。
わたしはリナから距離をとった。彼女の体温が厭わしかった。
わたしはフロードに唇をねだられたこともない。どうしてリナとはそんなことになるの?
わたしはそれ以来、フロードを避け、鬱々と日々を過ごした。
わたしはフロードに好かれていると思っていたのに。無愛想でたいくつ…無愛想でたいくつ…。そんなふうに思われていただなんて…。
自覚が全くなかったわけではない。確かにわたしはリナに比べれば、素直に感情を表に出すことが得意ではない。
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