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16 エメルド館の一日!
しおりを挟む『エメルド館』での生活は割と自由だった。
朝、起きて、泊りの客を見送った後、井戸で洗顔をする。
それからこれが骨なのだが、部屋の排水設備がある備え付けの風呂場まで水を運ぶ。そこのでかいたらいに水を張るのだ。別に急がないが、十往復はするだろうか。一階の部屋が良かった。
それから、暖炉で熱している石を持ってきて、その中にぶち込む。そうするとたらいの水が沸くのだ。
出来たお湯に手ぬぐいを浸して体を拭く。
その後、朝食へ。どこへ行っても自由だ。
俺はいつも、粥が食べられるターバスの店に行く。
娼館は、ほぼ二十四時間営業なのだが、さすがに朝っぱらから来る客はまれだ。
朝食を済ませた後、部屋に戻ると、ままならないが字の練習をする。
これが思うようにいかない。字の形自体はアルファベットに似て簡単なのだが、考えてもみて欲しい。
この世界で、日本語でしゃべっても通じるし、相手の言ってることもわかる。字の意味もわかるのに、書くことだけが出来ないとなると、どの音がどの字なのかなんてわからないのである。
だから、単語を練習するしかない。
サユに書いてもらって、それを見て練習し、自分の名前、”タクト・シンジョウ”は書けるようになった。
数字の書き方もわかった。
食べ物などの単語もいくつか。
だから、買い物メモくらいは書けるだろう。だが、文章は書けない。例えば手紙は書けない。まあ、出す当てもないけれど…。
サユの現住所はわからない。賞金首を捜して、あっちこっちさすらっているのだろう。
洗濯は外注。
衣装は最初に三十万カイスで売りつけられた薄いガウンみたいなもの、二着を着まわしている。この、セコハンみたいなガウンに、サユのお金を遣ってしまった…。
客が来れば相手をする。
終われば、風呂場で後処理をして体を拭く。
行為の前や後に、客の体を拭いてやる時もある。
湯はぬるくなったら、その都度暖炉の石で沸かす。
まあ、昼過ぎないと、そうそう客は来ないので、それまではのんびりできる。
昼食は、オーナーのおばあさんがいつも人数分買ってくる、タパスチーというサンドイッチのようなもの。1000カイス。たぶん、ぼったくってんじゃねえかと思う。肉が挟んであるのが好きだ。残ってると、ラッキー!と思う。
昼過ぎから、休憩客が入って来て、夕方から一晩俺を買う客がつくこともある。客はオーナーに支払いして、週末に俺たちの取り分を受け取る仕組み。それ以外に、チップを貰える場合もある。それはそのまま全部懐に入れられる。ので、チップはありがたい。
俺を、さまよえる者と知って、忌避する客もいれば、指名してくる客もいた。
とにかく、食べていくことは出来そうだ。貯金も少しは。
サユに三十万カイス、ちゃんと返したい。
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