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懐妊編
国王との語らい③
「セリーヌは、古い慣習や儀式やまわりくどい段取り・・その目に無駄だと映るものをどんどん見直そうとするので、よく文官に泣きつかれてな。もちろん、セリーヌの言う通りに変えた方が良いものもあったが、物事には、そうなった経緯がある。その都度説明したよ。それでも納得してくれることはそうそうなかったが・・そのことで少し・・いや、だいぶ喧嘩もしたな。だが、議論することで儂も、セリーヌも、共に学んでいったのだ。この国にとって今、大切にすべきことは何か、国王と王妃として、何を目指しどこへ向かうべきなのか・・」
国王は、柔和な表情で語る。
「儂を本当の意味で国王にしてくれたのは、セリーヌだ。どんなに王太子教育で知識を蓄えたところで、結局はセリーヌとの出会いに勝るものはなかった・・そなたも、気負うことはないぞ。子は慈しんで育てればそれで良い。それで十分だ」
そこで言葉を切り、国王はリリアナとしっかり目を合わせた。
「産後のことだが、儂にもセイラムにも気をつかうことはないぞ」
リリアナは目を見開いた。
「先例にとらわれることはない。皆にとって1番いい方法を選ぶのではなく、お主の1番やりたいと思うものを選ぶのだ。慣例に無いことでもいい。その方が、セリーヌは手を叩いて喜ぶだろうからな。もちろん、儂も力になろう」
もしかしてこのお方は、それを言うために・・・
「陛下・・」
「儂のせめてもの罪滅ぼしだと思ってくれていい」
「罪滅ぼしなど…陛下にそのようにしていただく理由に思い至りません」
「儂はいつも申し訳なく思っていたぞ?」
本気でわからない。
リリアナの困り顔に国王は笑う。
「セイラムのことだ」
「殿下の、でございますか?」
「セリーヌがいなくなってからは、儂は抜け殻のようになってしまってな。ただただ執務に没頭して、セリーヌの不在を考えないようにしていた。だが、セイラムに会うと・・セリーヌと同じ翡翠色の瞳の息子に会うとな・・会う度に大きくなるその姿に、どうしても、セリーヌがいない時間を意識せずにはいられなかった・・。あの子に、父親らしいことは何もしてやれていない。」
その声に、悔いが混じる。
「セイラムがそなたに素直になれなかったのは、元は儂が家族としての情を十分与えてやれなかったせいだ…そなたには、迷惑をかけた」
なんと言っていいのか分からず、言葉に詰まるリリアナを見て、国王は微笑を浮かべた。
「すまんな。こんな事を言っても、そなたを困らせるだけだと言うのに。罪滅ぼしと言う言葉が負担に感じるなら、儂からの感謝の気持ちと思ってくれ。セイラムがあのように幸せでいられるのは、間違いなくそなたのおかげだ。」
「陛下…」
リリアナの胸に、温かいものが広がっていく。
国王は懐から時計を出して確認した。
「余計な事を話した。長居してしまったな、そろそろ戻ろう」
「はい…あ」
「どうした?」
「いえ、起きたようです」
そう言ってリリアナはお腹を撫でた。
「どんな子が生まれてくるか、楽しみだな」
「はい!」
国王が手際よく椅子を片付けると、二人は連れだって、来た道を歩いていった。
国王は、柔和な表情で語る。
「儂を本当の意味で国王にしてくれたのは、セリーヌだ。どんなに王太子教育で知識を蓄えたところで、結局はセリーヌとの出会いに勝るものはなかった・・そなたも、気負うことはないぞ。子は慈しんで育てればそれで良い。それで十分だ」
そこで言葉を切り、国王はリリアナとしっかり目を合わせた。
「産後のことだが、儂にもセイラムにも気をつかうことはないぞ」
リリアナは目を見開いた。
「先例にとらわれることはない。皆にとって1番いい方法を選ぶのではなく、お主の1番やりたいと思うものを選ぶのだ。慣例に無いことでもいい。その方が、セリーヌは手を叩いて喜ぶだろうからな。もちろん、儂も力になろう」
もしかしてこのお方は、それを言うために・・・
「陛下・・」
「儂のせめてもの罪滅ぼしだと思ってくれていい」
「罪滅ぼしなど…陛下にそのようにしていただく理由に思い至りません」
「儂はいつも申し訳なく思っていたぞ?」
本気でわからない。
リリアナの困り顔に国王は笑う。
「セイラムのことだ」
「殿下の、でございますか?」
「セリーヌがいなくなってからは、儂は抜け殻のようになってしまってな。ただただ執務に没頭して、セリーヌの不在を考えないようにしていた。だが、セイラムに会うと・・セリーヌと同じ翡翠色の瞳の息子に会うとな・・会う度に大きくなるその姿に、どうしても、セリーヌがいない時間を意識せずにはいられなかった・・。あの子に、父親らしいことは何もしてやれていない。」
その声に、悔いが混じる。
「セイラムがそなたに素直になれなかったのは、元は儂が家族としての情を十分与えてやれなかったせいだ…そなたには、迷惑をかけた」
なんと言っていいのか分からず、言葉に詰まるリリアナを見て、国王は微笑を浮かべた。
「すまんな。こんな事を言っても、そなたを困らせるだけだと言うのに。罪滅ぼしと言う言葉が負担に感じるなら、儂からの感謝の気持ちと思ってくれ。セイラムがあのように幸せでいられるのは、間違いなくそなたのおかげだ。」
「陛下…」
リリアナの胸に、温かいものが広がっていく。
国王は懐から時計を出して確認した。
「余計な事を話した。長居してしまったな、そろそろ戻ろう」
「はい…あ」
「どうした?」
「いえ、起きたようです」
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「どんな子が生まれてくるか、楽しみだな」
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