74 / 106
懐妊編
セーラとの再会
「セーラ!」
「リリアナ!」
笑顔で抱き合い、2人は久々の再会を喜んだ。
「リリアナ、やっと直接言えるわ!妊娠おめでとう!」
「ありがとう。セーラは、今日はお子さんは?」
「ふふ、テディのこと?うちのリトルモンスターは今日はパパに任せてるの。もうすぐ1歳6ヶ月になるわ」
「まあ、会えなくて残念だわ」
「冗談!あの子を王宮になんて連れてきたら、寄り道ばかりでいつまで経ってもここまで辿り着けないわよ。ちょこまか歩き回って、少しも目を離せないもの。」
そう言って、セーラはカラカラと笑う。
セイラムと共にセーラの結婚式に参列したのが、つい昨日のようなのに、あの時お腹にいた子どもが、もう歩き回っているなんて。
リリアナは自分のお腹をそっと撫でた。
「リリアナは?元気にしてるの?」
「ええ、悪阻も軽くて、助かってるわ」
その後、互いの近況で話が盛り上がった。
「リリアナは、産後はどうするつもりなの?王族ともなると、子育ても私たちとは違うのでしょう?」
「それが…迷っているの…初めは、出来るだけ早く執務に復帰しようって、そう思っていたんだけれど…」
歴代の王妃は、概ね産後3か月ほどで執務に戻っていた。
リリアナもそれに習い、産んだら、すぐに執務に戻り、遅れを取り戻すつもりでいた。
執務は大切な、自分の役割だから。
国を左右するそれは、当然母の役割よりも優先されるものだと、そう思っていた。この子がお腹を蹴るまでは。
初めて胎動を感じたあの日。
お腹の中に、紛れもなく人が1人入っているのだ、と思い知らされた気がした。
リリアナが夜寝ようとした時に限って、ポコポコとお腹を蹴り出すので、気になって寝付けなかったり。
それまではポコポコと騒がしく動いていたくせに、セイラムがお腹に手を当てると途端に動かなくなったり。
まだお腹の中にいる段階で、この子はこんなにも私たちを笑わせて、困らせて、どうしようもなく愛おしくさせる。
この子が無事に生まれてきたとして、自分はきっと母として戸惑うことばかりだろう。
母になりきれてもいないだろうに、3ヶ月経ったから、と頭を切り替えて執務に戻る?
果たして、そんなことが可能なのか・・母としても王太子妃としても、中途半端になってしまわないだろうか?
「セーラは・・どうだった?」
表情を曇らせたまま、リリアナは尋ねた。
そうねぇ、とセーラは少し考えてから、話し出した。
「私は、出産して半年で復帰したわ。復帰する直前はとっても憂鬱だったけど・・半年で復帰することは産む前から決めてて、もう仕事もそのつもりで調整しちゃってたから、復帰しないわけにはいかなかったし。復帰して最初の頃は胸も張るから、定期的に母乳を絞りにお手洗いに行ったり、ね。大変だったけど、結果としては満足してるわ。私の支援事業の対象には、母親も多いの。テディを産む前よりも、自分の仕事の意義を感じられるし、この事業を始めて良かった、って改めて思えた。」
ただね、とセーラは少し寂しげに笑った。
「仕事の間、テディは乳母に任せてたんだけど、初めて1人で立った時も、初めて歩いた時も、私は見れなかった。全部、乳母伝いに聞くことになっちゃって。今更だけど、なんか勿体無いことしちゃったなって。だからね、私、もし次に子供が生まれるなら、次はゆっくり休もうかと思っているの。」
私がいなくても仕事を任せられるように、色々頑張らなきゃいけないけどね、と笑う。
「ねぇリリアナ、早く仕事に復帰するのも、長めに休んで育児を優先するのも、その人なりに仕事も育児も大切にしている結果だと私は思う。だから、リリアナに今迷う気持ちがあるのなら、その気持ちを大切にしてほしいの。伝統もあるだろうから、もしかしたら変えることは難しいのかもしれないけれど、殿下はきっと力になってくださるわ」
「セーラ・・」
ありがとう、と呟いてリリアナは胸に手を当てた。
セイラムと、産後のことを具体的に話したことは、まだない。
いつも躊躇してしまって、自分からは話しだせなかった。
だが、セーラの話を聞いてリリアナの気持ちは固まった。
足踏みするだけの時期はもう終わりなのだ。
そういえば、国王陛下も、力になると約束してくれた。
「私、殿下とお話ししてみるわ」
「ふふ、そうして?うちも、テディができてから、あの無口なホークスとよく話すようになったわ。大変なこともあるけれど、大切なものが増えるって、とっても素敵なことよ!ベビーにも、ママになったリリアナに会えるのも、楽しみで仕方ないわ」
そうだそうだとでも言うように、ポコポコお腹を蹴る我が子が愛おしい。
「ありがとう・・セーラと話せてよかった」
リリアナは晴れやかに微笑んだ。
「リリアナ!」
笑顔で抱き合い、2人は久々の再会を喜んだ。
「リリアナ、やっと直接言えるわ!妊娠おめでとう!」
「ありがとう。セーラは、今日はお子さんは?」
「ふふ、テディのこと?うちのリトルモンスターは今日はパパに任せてるの。もうすぐ1歳6ヶ月になるわ」
「まあ、会えなくて残念だわ」
「冗談!あの子を王宮になんて連れてきたら、寄り道ばかりでいつまで経ってもここまで辿り着けないわよ。ちょこまか歩き回って、少しも目を離せないもの。」
そう言って、セーラはカラカラと笑う。
セイラムと共にセーラの結婚式に参列したのが、つい昨日のようなのに、あの時お腹にいた子どもが、もう歩き回っているなんて。
リリアナは自分のお腹をそっと撫でた。
「リリアナは?元気にしてるの?」
「ええ、悪阻も軽くて、助かってるわ」
その後、互いの近況で話が盛り上がった。
「リリアナは、産後はどうするつもりなの?王族ともなると、子育ても私たちとは違うのでしょう?」
「それが…迷っているの…初めは、出来るだけ早く執務に復帰しようって、そう思っていたんだけれど…」
歴代の王妃は、概ね産後3か月ほどで執務に戻っていた。
リリアナもそれに習い、産んだら、すぐに執務に戻り、遅れを取り戻すつもりでいた。
執務は大切な、自分の役割だから。
国を左右するそれは、当然母の役割よりも優先されるものだと、そう思っていた。この子がお腹を蹴るまでは。
初めて胎動を感じたあの日。
お腹の中に、紛れもなく人が1人入っているのだ、と思い知らされた気がした。
リリアナが夜寝ようとした時に限って、ポコポコとお腹を蹴り出すので、気になって寝付けなかったり。
それまではポコポコと騒がしく動いていたくせに、セイラムがお腹に手を当てると途端に動かなくなったり。
まだお腹の中にいる段階で、この子はこんなにも私たちを笑わせて、困らせて、どうしようもなく愛おしくさせる。
この子が無事に生まれてきたとして、自分はきっと母として戸惑うことばかりだろう。
母になりきれてもいないだろうに、3ヶ月経ったから、と頭を切り替えて執務に戻る?
果たして、そんなことが可能なのか・・母としても王太子妃としても、中途半端になってしまわないだろうか?
「セーラは・・どうだった?」
表情を曇らせたまま、リリアナは尋ねた。
そうねぇ、とセーラは少し考えてから、話し出した。
「私は、出産して半年で復帰したわ。復帰する直前はとっても憂鬱だったけど・・半年で復帰することは産む前から決めてて、もう仕事もそのつもりで調整しちゃってたから、復帰しないわけにはいかなかったし。復帰して最初の頃は胸も張るから、定期的に母乳を絞りにお手洗いに行ったり、ね。大変だったけど、結果としては満足してるわ。私の支援事業の対象には、母親も多いの。テディを産む前よりも、自分の仕事の意義を感じられるし、この事業を始めて良かった、って改めて思えた。」
ただね、とセーラは少し寂しげに笑った。
「仕事の間、テディは乳母に任せてたんだけど、初めて1人で立った時も、初めて歩いた時も、私は見れなかった。全部、乳母伝いに聞くことになっちゃって。今更だけど、なんか勿体無いことしちゃったなって。だからね、私、もし次に子供が生まれるなら、次はゆっくり休もうかと思っているの。」
私がいなくても仕事を任せられるように、色々頑張らなきゃいけないけどね、と笑う。
「ねぇリリアナ、早く仕事に復帰するのも、長めに休んで育児を優先するのも、その人なりに仕事も育児も大切にしている結果だと私は思う。だから、リリアナに今迷う気持ちがあるのなら、その気持ちを大切にしてほしいの。伝統もあるだろうから、もしかしたら変えることは難しいのかもしれないけれど、殿下はきっと力になってくださるわ」
「セーラ・・」
ありがとう、と呟いてリリアナは胸に手を当てた。
セイラムと、産後のことを具体的に話したことは、まだない。
いつも躊躇してしまって、自分からは話しだせなかった。
だが、セーラの話を聞いてリリアナの気持ちは固まった。
足踏みするだけの時期はもう終わりなのだ。
そういえば、国王陛下も、力になると約束してくれた。
「私、殿下とお話ししてみるわ」
「ふふ、そうして?うちも、テディができてから、あの無口なホークスとよく話すようになったわ。大変なこともあるけれど、大切なものが増えるって、とっても素敵なことよ!ベビーにも、ママになったリリアナに会えるのも、楽しみで仕方ないわ」
そうだそうだとでも言うように、ポコポコお腹を蹴る我が子が愛おしい。
「ありがとう・・セーラと話せてよかった」
リリアナは晴れやかに微笑んだ。
あなたにおすすめの小説
悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい
廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!
レジーナブックス様から書籍が4月下旬に発売されます!
王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。
ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。
『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。
ならばと、シャルロットは別居を始める。
『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。
夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。
それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。
「役立たず」と捨てられた仮面聖女、隣国の冷徹皇帝に拾われて真の力が目醒める〜今さら戻ってこいと言われても溺愛されすぎて忙しいので無理です
まさき
恋愛
「役立たずの偽聖女め、その不気味な仮面ごと消えてしまえ!」
十年もの間、仮面で素顔を隠し、身代わり聖女として国を支えてきたリゼット。
しかし、異母妹が聖女として目醒めたことで、婚約者の第一王子から婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。
捨てられた先は、凶悪な魔獣が跋扈する『死の森』。
死を覚悟したリゼットだったが、仮面の下の本音は違った。
(……あー、やっとあのブラック職場からおさらばですわ! さっさと滅びればいいんですわ、あんな国!)
清々した気持ちで毒を吐くリゼットの前に現れたのは、隣国の冷徹皇帝・ガイウス。
彼はリゼットの仮面の下に隠された「強大すぎる魔力」と、表の顔とは裏腹な「苛烈な本性」を瞬時に見抜き、強引に連れ去ってしまう。
「気に入った。貴様は今日から、私のものだ」
バルディア帝国へと連行されたリゼットを待っていたのは、冷徹なはずの皇帝からの、逃げ場のない過保護な溺愛だった……。
一方、真の聖女(リゼット)を失った王国は、守護の結界が崩壊し絶体絶命の危機に陥る。
「戻ってきてくれ」と泣きつく王子たちに対し、皇帝の腕の中に収まったリゼットは、極上のスイーツを頬張りながら優雅に言い放つ。
「お断りいたしますわ。私、今とっても忙しい(溺愛されている)んですもの」
仮面の下で毒を吐くリアリスト聖女と、彼女を離さない執着皇帝の、大逆転溺愛ファンタジーが開幕!
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります
廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。
二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。
リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。
叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。
皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。
【完結済】トラウマ持ち令嬢と潔癖王子の白い結婚契約は撤回されました 〜 白くない結婚を目指します! 〜
鳴宮野々花
恋愛
「俺の生誕祭で、婚約者であるお前がファーストダンスの相手を拒むばかりか、そのように俺を避け、距離を取るとは────フローリア・バークリー、俺は今日この場で、お前との婚約を破棄する!」イヴリンド王国の王太子ジョゼフはそう宣言し、秘密の恋人であった男爵令嬢エヴァナの肩を抱き寄せた。
ダンスの直前に見てしまった、王太子ジョゼフと男爵令嬢エヴァナの爛れた関係。バークリー公爵家の長女フローリアの脳裏には過去のトラウマがよみがえり、どうしても王太子を受け入れることができなかった。
大広間に集う貴族たちと、誰よりも自分に厳しい父の視線が突き刺さる。フローリアは絶望した。
ところが────
「そうか。ではそちらの令嬢、俺が貰い受けよう」そう言って突如フロアの中央に進み出てきたのは、第三王子のクリストファーだった。王太子のフローリアに対する婚約破棄宣言に、絶世の美男子である第三王子の婚約宣言。場は騒然となり、フローリアはただ呆然とするしかなかった。
クリストファーにもフローリアを望む、とある事情があった。二人は互いの利と目的のための婚約、そしてその婚約期間を経ての白い結婚契約をひそかに結んだ。
ところが、二人にとって完璧な計画だったはずの白い結婚生活は、始まるやいなや終わりを迎えることとなり……。
互いに異性に対するトラウマを抱えた二人が、本当の夫婦となるために葛藤と奮闘を繰り返す、シリアスな事情ありの胸キュンラブストーリー(にしたい)です。
※いつもの何もかもファンタジー設定の物語です。
※本作はセンシティブな描写(性的な描写含む)がございます。ラブコメ感を出したいのですが、重い部分は重くなる予定です。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
毒味役の私がうっかり皇帝陛下の『呪い』を解いてしまった結果、異常な執着(物理)で迫られています
白桃
恋愛
「触れるな」――それが冷酷と噂される皇帝レオルの絶対の掟。
呪いにより誰にも触れられない孤独な彼に仕える毒味役のアリアは、ある日うっかりその呪いを解いてしまう。
初めて人の温もりを知った皇帝は、アリアに異常な執着を見せ始める。
「私のそばから離れるな」――物理的な距離感ゼロの溺愛(?)に戸惑うアリア。しかし、孤独な皇帝の心に触れるうち、二人の関係は思わぬ方向へ…? 呪いが繋いだ、凸凹主従(?)ラブファンタジー!
愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!
香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。
ある日、父親から
「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」
と告げられる。
伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。
その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、
伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。
親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。
ライアンは、冷酷と噂されている。
さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。
決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!?
そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?