"番様"認定された私の複雑な宮ライフについて。

airria

文字の大きさ
16 / 17

婚礼衣装選びが始まりました。

しおりを挟む
早速翌日から、多くの女官と共に漆塗りの大箱がいくつも送り込まれてきた。

「まずは御衣装を決めないことには始まりません。番様にお似合いになる御色を見るために、様々な色味のご衣裳をお持ちしました」

そう言って女官が大箱の蓋を開けると、そこにはぎっしりと衣装が詰められていた。

花婿花嫁の婚礼衣装が白なのは、ここ阿の国でも同じらしいけれど、真っ白でなくてもいいそうだ。

殊に花嫁は、華やかさを出すために羽織だけ色物にして、それに豪華な刺繍を施すのが貴族ではむしろ一般的なのだと言う。

黎明は紫目を細めて、上機嫌で女官の説明を聞いていた。

「どちらの御色から合わせましょう?」

黎明のリクエストに応えながら、何人もの女官が、衣装を手に次から次へと私に当てていく。

「さっきの薄桃色も良かったがこの杏色もいいな・・カナは悩ませ上手で困る」

黎明が私に送る流し目に、女官たちはわかりやすく頬を上気させた。

「黎明様がご満足されるまで、私たちは誠心誠意お手伝いいたしますので‥!」

衣装については黎明に一任しているので、私は黙ってマネキンに徹した。

その後、黎明が選んだ数点を実際に着て見せることになり、瑛仙がスッと立ち上がった。

「御召し替えでございますが、いくら同性とは言え、番様の御肌を衆目に晒すような真似は避けとうございます。御召し替えは別室にて私にお任せを。そのため少しお時間を頂戴しますが、その間、他の者には黎明様のおもてなしをお願いします。楽団も酒宴の用意もしておりますので、皆様よろしゅうに。さ、カナ様。参りましょう」

酒瓶を手にした女官たちが先を争うように黎明に酒を注ぎに行くのを尻目に、瑛仙に別室に連れていかれる。

別室に入る直前には、楽団の奏でる音楽も聴こえてきた。女官の笑い声も混じって、何やら盛り上がっているようだ。

部屋に入り扉を閉めて、瑛仙がこそっと耳打ちした。

「カナ様、どうか驚かないでくださいまし。」

「驚くって何に?」という疑問が浮かんだのと、部屋に只ひとつ置かれていた大箱の蓋が一人でに動いたのはほぼ同時だった。





箱の中から「ぷはっ!」と出てきたのは、やたらガタイのいい女官・・ん?

「遅いっ!待ちくたびれたぞ!」

そう小声で言い捨て、こちらを睨む相手。

浅葱色の漢服に身を包み、キッチリと黒髪を結い上げた姿だけ見れば、どこからどう見ても女官なのに、やけに広い肩幅と太い首がガタイの良さを際立たせて、違和感がハンパない。

ていうか、こんなモデル並に背の高い女官は見たことない。

無駄のないフェイスラインに化粧でパッチリ大きく見える目と長い睫毛。

眉はやや凛々しすぎるけれど、顔だけ見れば迫力ある美人だ。

いかにも不機嫌そうに顰められた眉間のシワで台無しだけど。

女装した阿王を目の前に言葉を失ったまま、衝撃から立ち直るまで、たっぷり十数秒かかった。

やっと頭が回り出して考える。

大箱の中に入って、身を隠して忍び込んでくれたということだろうか。

え、でも何で女装?化粧までバッチリだし。

「えっと・・」

「うるさい。」

「・・でも」

「黙れ。何も言うな」

何か言わなきゃと口を開く度に、阿王の制止に合う。

「お前と話す機会が作れないから仕方なく来てやったんだ。バレたらアレに八つ裂きにされるからって、匂い消しのために2度も風呂に入らされたんだからな?」

瑛仙が頷いた。

「虎は嗅覚と聴覚が鋭いと聞いておりますので、万全を期しております。」

それで女装もさせられた、と。

楽団の奏でる音楽で、こちらの会話はある程度誤魔化せているだろけれど、それでも声は抑えたほうがいいだろうから、皆声を顰めたままだ。

「わかったな?この姿に関して余計なことは言うな。聞くな。」

「いいな」と念を押す阿王。

相当不服そうな様子だ。この姿に至るまで、きっと紆余曲折あったんだろう。

私は笑いを噛み殺しながら、首を縦に振った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

「ひきこもり王子」に再嫁したら「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と言われましたので、素直に従うことにしました

ぽんた
恋愛
「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」 この日、リン・オリヴィエは夫であるバロワン王国の第一王子マリユス・ノディエに告げられた。 選択肢のないリンは、「ひきこもり王子」と名高いクロード・ノディエのいる辺境の地へ向かう。 そこで彼女が会ったのは、噂の「ひきこもり王子」とはまったく違う気性が荒く傲慢な将軍だった。 クロードは、幼少の頃から自分や弟を守る為に「ひきこもり王子」を演じていたのである。その彼は、以前リンの姉ディアーヌに手痛い目にあったことがあった。その為、人間不信、とくに女性を敵視している。彼は、ディアーヌの妹であるリンを憎み、侍女扱いする。 しかし、あることがきっかけで二人の距離が急激に狭まる。が、それも束の間、王都が隣国のスパイの工作により、壊滅状態になっているいう報が入る。しかも、そのスパイの正体は、リンの知る人だった。 ※全三十九話。ハッピーエンドっぽく完結します。ゆるゆる設定です。ご容赦ください。

白い結婚のはずでしたが、幼馴染の夫が離してくれません!

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
外観は赤髪で派手で美人なアーシュレイ。 同世代の女の子とはうまく接しられず、幼馴染のディートハルトとばかり遊んでいた。 おかげで男をたぶらかす悪女と言われてきた。しかし中身はただの魔道具オタク。 幼なじみの二人は親が決めた政略結婚。義両親からの圧力もあり、妊活をすることに。 しかしいざ夜に挑めばあの手この手で拒否する夫。そして『もう、女性を愛することは出来ない!』とベットの上で謝られる。 実家の援助をしてもらってる手前、離婚をこちらから申し込めないアーシュレイ。夫も誰かとは結婚してなきゃいけないなら、君がいいと訳の分からないことを言う。 それなら、愛人探しをすることに。そして、出会いの場の夜会にも何故か、毎回追いかけてきてつきまとってくる。いったいどういうつもりですか!?そして、男性のライバル出現!? やっぱり男色になっちゃたの!?

異世界召喚されました。親友は第一王子に惚れられて、ぽっちゃりな私は聖女として精霊王とイケメン達に愛される!?〜聖女の座は親友に譲ります〜

あいみ
恋愛
ーーーグランロッド国に召喚されてしまった|心音《ことね》と|友愛《ゆあ》。 イケメン王子カイザーに見初められた友愛は王宮で贅沢三昧。 一方心音は、一人寂しく部屋に閉じ込められる!? 天と地ほどの差の扱い。無下にされ笑われ蔑まれた心音はなんと精霊王シェイドの加護を受けていると判明。 だがしかし。カイザーは美しく可憐な友愛こそが本物の聖女だと言い張る。 心音は聖女の座に興味はなくシェイドの力をフル活用して、異世界で始まるのはぐうたら生活。 ぽっちゃり女子×イケメン多数 悪女×クズ男 物語が今……始まる

【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~

白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。 国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。 幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。 いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。 これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

嫌われ公女に転生したけど、愛されたい願望を捨てたら全員がデレてきた

桃瀬さら
恋愛
嫌われ公女ナディアは、婚約破棄され学園で孤立し、家族からも見放されていた。 どれほど努力しようが周囲からは「嫌われ公女」と蔑まれ、誰も味方なんていない。 「もういい。愛されたいなんて、くだらない」 そう心に誓った瞬間から、状況が一変した。 第二王子が婚約破棄を撤回し跪き、寡黙な騎士団長が「君を守りたい」と熱く迫ってくる。 そして、冷ややかな兄まで「婚約など認めない。家を出ることは許さない」と……。 愛されることを諦めた途端、なぜか執着される。

処理中です...