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婚礼衣装選びが始まりました。
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早速翌日から、多くの女官と共に漆塗りの大箱がいくつも送り込まれてきた。
「まずは御衣装を決めないことには始まりません。番様にお似合いになる御色を見るために、様々な色味のご衣裳をお持ちしました」
そう言って女官が大箱の蓋を開けると、そこにはぎっしりと衣装が詰められていた。
花婿花嫁の婚礼衣装が白なのは、ここ阿の国でも同じらしいけれど、真っ白でなくてもいいそうだ。
殊に花嫁は、華やかさを出すために羽織だけ色物にして、それに豪華な刺繍を施すのが貴族ではむしろ一般的なのだと言う。
黎明は紫目を細めて、上機嫌で女官の説明を聞いていた。
「どちらの御色から合わせましょう?」
黎明のリクエストに応えながら、何人もの女官が、衣装を手に次から次へと私に当てていく。
「さっきの薄桃色も良かったがこの杏色もいいな・・カナは悩ませ上手で困る」
黎明が私に送る流し目に、女官たちはわかりやすく頬を上気させた。
「黎明様がご満足されるまで、私たちは誠心誠意お手伝いいたしますので‥!」
衣装については黎明に一任しているので、私は黙ってマネキンに徹した。
その後、黎明が選んだ数点を実際に着て見せることになり、瑛仙がスッと立ち上がった。
「御召し替えでございますが、いくら同性とは言え、番様の御肌を衆目に晒すような真似は避けとうございます。御召し替えは別室にて私にお任せを。そのため少しお時間を頂戴しますが、その間、他の者には黎明様のおもてなしをお願いします。楽団も酒宴の用意もしておりますので、皆様よろしゅうに。さ、カナ様。参りましょう」
酒瓶を手にした女官たちが先を争うように黎明に酒を注ぎに行くのを尻目に、瑛仙に別室に連れていかれる。
別室に入る直前には、楽団の奏でる音楽も聴こえてきた。女官の笑い声も混じって、何やら盛り上がっているようだ。
部屋に入り扉を閉めて、瑛仙がこそっと耳打ちした。
「カナ様、どうか驚かないでくださいまし。」
「驚くって何に?」という疑問が浮かんだのと、部屋に只ひとつ置かれていた大箱の蓋が一人でに動いたのはほぼ同時だった。
◇
箱の中から「ぷはっ!」と出てきたのは、やたらガタイのいい女官・・ん?
「遅いっ!待ちくたびれたぞ!」
そう小声で言い捨て、こちらを睨む相手。
浅葱色の漢服に身を包み、キッチリと黒髪を結い上げた姿だけ見れば、どこからどう見ても女官なのに、やけに広い肩幅と太い首がガタイの良さを際立たせて、違和感がハンパない。
ていうか、こんなモデル並に背の高い女官は見たことない。
無駄のないフェイスラインに化粧でパッチリ大きく見える目と長い睫毛。
眉はやや凛々しすぎるけれど、顔だけ見れば迫力ある美人だ。
いかにも不機嫌そうに顰められた眉間のシワで台無しだけど。
女装した阿王を目の前に言葉を失ったまま、衝撃から立ち直るまで、たっぷり十数秒かかった。
やっと頭が回り出して考える。
大箱の中に入って、身を隠して忍び込んでくれたということだろうか。
え、でも何で女装?化粧までバッチリだし。
「えっと・・」
「うるさい。」
「・・でも」
「黙れ。何も言うな」
何か言わなきゃと口を開く度に、阿王の制止に合う。
「お前と話す機会が作れないから仕方なく来てやったんだ。バレたらアレに八つ裂きにされるからって、匂い消しのために2度も風呂に入らされたんだからな?」
瑛仙が頷いた。
「虎は嗅覚と聴覚が鋭いと聞いておりますので、万全を期しております。」
それで女装もさせられた、と。
楽団の奏でる音楽で、こちらの会話はある程度誤魔化せているだろけれど、それでも声は抑えたほうがいいだろうから、皆声を顰めたままだ。
「わかったな?この姿に関して余計なことは言うな。聞くな。」
「いいな」と念を押す阿王。
相当不服そうな様子だ。この姿に至るまで、きっと紆余曲折あったんだろう。
私は笑いを噛み殺しながら、首を縦に振った。
「まずは御衣装を決めないことには始まりません。番様にお似合いになる御色を見るために、様々な色味のご衣裳をお持ちしました」
そう言って女官が大箱の蓋を開けると、そこにはぎっしりと衣装が詰められていた。
花婿花嫁の婚礼衣装が白なのは、ここ阿の国でも同じらしいけれど、真っ白でなくてもいいそうだ。
殊に花嫁は、華やかさを出すために羽織だけ色物にして、それに豪華な刺繍を施すのが貴族ではむしろ一般的なのだと言う。
黎明は紫目を細めて、上機嫌で女官の説明を聞いていた。
「どちらの御色から合わせましょう?」
黎明のリクエストに応えながら、何人もの女官が、衣装を手に次から次へと私に当てていく。
「さっきの薄桃色も良かったがこの杏色もいいな・・カナは悩ませ上手で困る」
黎明が私に送る流し目に、女官たちはわかりやすく頬を上気させた。
「黎明様がご満足されるまで、私たちは誠心誠意お手伝いいたしますので‥!」
衣装については黎明に一任しているので、私は黙ってマネキンに徹した。
その後、黎明が選んだ数点を実際に着て見せることになり、瑛仙がスッと立ち上がった。
「御召し替えでございますが、いくら同性とは言え、番様の御肌を衆目に晒すような真似は避けとうございます。御召し替えは別室にて私にお任せを。そのため少しお時間を頂戴しますが、その間、他の者には黎明様のおもてなしをお願いします。楽団も酒宴の用意もしておりますので、皆様よろしゅうに。さ、カナ様。参りましょう」
酒瓶を手にした女官たちが先を争うように黎明に酒を注ぎに行くのを尻目に、瑛仙に別室に連れていかれる。
別室に入る直前には、楽団の奏でる音楽も聴こえてきた。女官の笑い声も混じって、何やら盛り上がっているようだ。
部屋に入り扉を閉めて、瑛仙がこそっと耳打ちした。
「カナ様、どうか驚かないでくださいまし。」
「驚くって何に?」という疑問が浮かんだのと、部屋に只ひとつ置かれていた大箱の蓋が一人でに動いたのはほぼ同時だった。
◇
箱の中から「ぷはっ!」と出てきたのは、やたらガタイのいい女官・・ん?
「遅いっ!待ちくたびれたぞ!」
そう小声で言い捨て、こちらを睨む相手。
浅葱色の漢服に身を包み、キッチリと黒髪を結い上げた姿だけ見れば、どこからどう見ても女官なのに、やけに広い肩幅と太い首がガタイの良さを際立たせて、違和感がハンパない。
ていうか、こんなモデル並に背の高い女官は見たことない。
無駄のないフェイスラインに化粧でパッチリ大きく見える目と長い睫毛。
眉はやや凛々しすぎるけれど、顔だけ見れば迫力ある美人だ。
いかにも不機嫌そうに顰められた眉間のシワで台無しだけど。
女装した阿王を目の前に言葉を失ったまま、衝撃から立ち直るまで、たっぷり十数秒かかった。
やっと頭が回り出して考える。
大箱の中に入って、身を隠して忍び込んでくれたということだろうか。
え、でも何で女装?化粧までバッチリだし。
「えっと・・」
「うるさい。」
「・・でも」
「黙れ。何も言うな」
何か言わなきゃと口を開く度に、阿王の制止に合う。
「お前と話す機会が作れないから仕方なく来てやったんだ。バレたらアレに八つ裂きにされるからって、匂い消しのために2度も風呂に入らされたんだからな?」
瑛仙が頷いた。
「虎は嗅覚と聴覚が鋭いと聞いておりますので、万全を期しております。」
それで女装もさせられた、と。
楽団の奏でる音楽で、こちらの会話はある程度誤魔化せているだろけれど、それでも声は抑えたほうがいいだろうから、皆声を顰めたままだ。
「わかったな?この姿に関して余計なことは言うな。聞くな。」
「いいな」と念を押す阿王。
相当不服そうな様子だ。この姿に至るまで、きっと紆余曲折あったんだろう。
私は笑いを噛み殺しながら、首を縦に振った。
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