【完結】モブは乙女ゲームにツッコミたい

airria

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モブなんで、フリに利用されてるんだと思います。

奥さん(正妃)の存在を指摘したモリーに、王太子は感じ入ったように「かわいい!」と言って、またギュッと抱きしめた。

「モリー、ティファナのことを気にしてたの?そうか、だから私の手紙も受け取らずに他の男とお出かけしてたんだね?不安にさせちゃったね」

「不安になんて、これっぽっちも」「お仕置きしようかと思ってたけど、そんな可愛い理由ならやめようかな」

お仕置き-

物騒なワードが飛び出してモリーは口をつぐんだ。

「モリー、大丈夫だよ。私とティファナは、何でもないんだ」

弁解を始めた王太子曰く、奥さん(正妃)とは白い結婚でビジネス婚なのだ、と。

やはり不倫男の常套句に思える。

「ティファナにも説明してもらうから、明日絶対にうち(城)に来てね」

「いえ、別にその件に関しては全く興味ないんで、だいじょ」「君が来ないなら僕らがモリーの家にお邪魔するけど、どっちがいい?」

「伺います」

「明日は私も休みだから、迎えに行くよ」

ニコニコと笑顔で告げる王太子に、何を言っても無駄な気がして、モリーは力無く頷いた。


翌日、家人に知られたくないモリーは、門の外で迎えを待つことにした。

何時に迎えに来るのか聞くのを失念していたが、昨夜のうちに「明日は10時に門の外で待ってようかなぁー!」と大きめの声で何度か呟いておいたので大丈夫だろう。

10分ほど早めに門外に出ると、間髪入れずに馬車がモリーの前にすべりこんだ。

前回と同様、真っ黒な馬車に乗ると、王太子が腕を広げて待っていた。

「あ、そういうのいいんで。」

モリーはスルーしてそのまま席に着いた。

王太子は両手を広げたまま方向転換し、座ったモリーをギュッと抱きしめてから隣に座った。

「モリー、今日で、君の憂いを取ってあげるからね…」

愛しげに頬を撫でられながら、モリーは今日こそ決着をつける、と心に誓う。

大体、中身はあれだがこんなキラキラしい外見みための王子が、自分みたいなモブと結ばれるなんて、乙女ゲームではありえないのだ。

実は正妃と両片思いだったけど、すれ違ううちに、正妃への見せしめで私みたいなモブと付き合おうとしてるとか?

または、ビジネス婚だからとほとんど顔も見ないで正妃を放置して、私と結婚するためにようやく正妃と対峙したら、あまりの美しさに王太子が一目惚れする、とか?

考えれば考えるほど、あり得る。
むしろ、その方が納得できる。

この、おかしなほど執着されている状況は、この後の壮大な前振りに違いない。

そう考えると、昨日のプロポーズに慌てた自分がなんとも恥ずかしい。

もしかしたら、今日私の目の前で、王太子夫妻の関係が動き出すかもしれない。

王太子が正妃にギューギュー抱きつくところを思い浮かべて、なんだか複雑な気分になってモリーは首を振った。

それならそれで…「知ってたわっ!」ってつっこんで、家に帰ろ。


王城に着くと、さすが王太子らしく、幾人もに傅かれて近衛兵が付き従う。

随分歩かされたと思ったら、なんと通されたのは王太子の私室で、その応接スペースにモリーは王太子と並んで腰掛けた。

「あ、そうそう」

王太子がソファから立ち上がり、机に向かうと、紙と鉛筆を手に戻ってきた。

またモリーと並んで腰掛けると、鉛筆をモリーに渡してきた。

「ちょっとこれを転がしてくれる?」

6角の鉛筆のそれぞれの面に、手書きで1~6が書いてある。

「転がせばいいんですか?」

「そうそう。サイコロの代わりにね。」

何かのゲームだろうか、と気になり、王太子の向こう側に置かれた紙をチラッと見ると、見える範囲で、手書きでこう書いてあった。

「2、事故
    3、没落
 4、収監
 5、僻地左遷
 6、出家」

「ヒィッ!」

思わず鉛筆を投げ捨てそうになって、思いとどまりギュッと握り直す。

王太子の影に隠れて見えない1に何が書いてあるのか、考えるだけで恐ろしい。

「こ、これで何が決まるんですか?」

「あ、見られちゃったね」

王太子がチラッと紙を見て、裏返した。

「気になる?」

何度も頷くと、

「ティダー子爵令息の処遇をちょっとね」

「ロニーが何かしたんですか?」

「僕のモリーを連れ出して、触れて、あろうことかキスまで!そんな不埒なことしようとしたんだよ?キスなんてしてたら、今日城門の前で晒し首になってたよ。気持ち的には晒し首にしてやりたいけど、まあ言うこと聞いて帰ってくれたしね。なんとも運の良い。ハハハ」

ロニーが婚約者なのだから、利はロニーにあったと思うのだが。

婚約者のいる令嬢を見張って抱きついて結婚までしようとしている既婚者はどこのどいつだ。

モリーの中で、今1番不埒な男を見ながら、モリーは口を開いた。

「でも、いいんですか?私のせいでロニーが酷い目にあったら、私、罪悪感でずっとロニーのこと忘れられないです」

「!」

「私の記憶にずっとロニーが残るけどそれでもいいですか?」

「だめだ!やめるよ!」

王太子がまたギュッと抱きしめてくる。

初めて、王太子の考えを変えることができた。

昨日デート代を払ってくれたロニーに、そのお代分くらいは返せただろうか。

「寄宿学校は無事に卒業させてあげるけど、最初の配属先は調理部とか全然剣の関係ないところにする位はいいよね、だってそうしないと腹の虫がおさまらないというか」

何かぶつぶつと耳元で呟く王太子だが、攻略法をようやく編み出した気がして、モリーは少し口元を緩めた。





唐突なノックの音に続いて、目の覚めるような美女が姿を現した。

「はじめまして、あなたがモリーね?」

正妃のティファナは予想通り、色白で小顔で見目麗しく、二次元の世界から抜け出してきたかのようだ。

挨拶すると、ふわっと可憐に微笑まれドギマギしてしまう。

「ふふふ、あなたが夢中だって聞いてどんな方かと思っていたけど、こんな可愛らしい方なんて」

どこからどう聞いても社交辞令なのに、正妃が言うと嫌味に聞こえないのが不思議だ。

「可愛いだろう?モリーは頭もいいんだよ」

「よかったわ!これでようやく」

「ティファナ、その前にまずはお茶にしよう」

カチャカチャと並べられるティーセットを見ながら、モリーはこれから始まるだろうフラグ回収劇を前に、身を固くした。






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