白銀の王

春乃來壱

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19.冒険者ギルド。

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お腹が減っているむいの為に碧はすぐ軽食を創り、少し早いがお昼ご飯をとることにした。

「ミドリ!これ美味しい!」

碧の傲慢スキルで創ったサンドイッチを美味しそうに頬張って食べているむいの横では雪が安心したようにホッと息をつく。


「むいちゃん元気出たみたいでよかったです」

「うん!もう元気ー!」


フィーもむいも調子を取り戻し、お昼も食べ終わりお腹も満たされたので、5人は獣人国に向かおうと歩き出す。見つけた結晶石は話し合いの末フィーが大切に保管する事になった。

もう崩れてしまったが、先程まで碧達が居た遺跡ダンジョンは木々に囲まれた林の中にあり、近くに村など人の住む場所がないため道も整備されていない。けもの道を20分ほど木や草を避けながら歩いていくとやっと人の手で作られた道を見つけた。

人の手で作られたとは言っても日本のようなコンクリートなどではなく、草などを抜いて岩を退けてつくったような簡易的に作られている道なので、それだけだと地面はデコボコしていて歩きずらくなってしまうが、魔法で整えたのか凹凸がなく歩きやすくなっていた。


横幅は車が通れるくらいの広さだったので、前にフィーが言っていた竜車もここを通って走るのだろう。


「【 導 しるべ】…ん、獣人国はあっちっすね」

道は左右に伸びていて遠くまでずっと続いている。

周りに村など目印になりそうなものもなにもないためどちらの方向に行けばいいのか悩んでいるとフィーが魔法を使用する。

碧の視界に【無属性魔法・導を取得しました】と文字が表示される。

“ 導 ”は使用者の魔力で作られた鳥が自分の行きたい場所まで案内してくれるもので、見た目は白鶺鴒ハクセキレイによく似ていた。
小さい体で一生懸命パタパタと飛んでいる姿が愛らしい。後で触らせてくれないかな、と考えていると雪も自分と同じ様に“導”に熱視線をおくっていた。

そんなことを考えているうちにフィーが出した鳥が碧達の頭上をくるくると飛んでから左に続く道の方へ進んだのでそれについて行く。

遺跡ダンジョンを出てから数時間程“導”の進む方へついて行くと獣人国に辿り着いた。
獣人国は見上げると首が痛くなってしまいそうなくらいの高い城壁に囲まれていて、入口は東門、西門、南門、北門の4つ存在する。

門で簡単な審査を受けてから国への出入りが出来るようになる仕組みらしく、碧達が辿り着いた門にも既に何人か並んでいて順番待ちの列ができていた。

列の最後尾に並んで順番が来るのを待つ。
1人の審査にかかる時間は少ないようで、すぐに順番が回ってきた。

門の横に小さな小屋がありその中で1人ずつ審査を行っている様で、5人の中で一番最初に並んでいた碧だけがまずは呼ばれて小屋に入ると、中には水晶が置いてある机と椅子が置いてあり傭兵が2人居た。

1人はテーブルに座っていてもう1人は入口の扉の近くに立っている。
本当に審査をするためにしか使っていないのか小屋の中には傭兵が座っている椅子と机、それに向かい合うようにもう1つの椅子が置いてあるだけだった。

座っている方の傭兵に、碧も座るように言われたので椅子に腰かけると早速審査が始まった。


「じゃあこの水晶に触れて魔力を流してね。流す魔力は少しでいいよー」

碧の前に座る20代くらいの緩い喋り方の男の傭兵に言われた通りに魔力を流すと透明だった水晶が青色に変わる。

「色が変わった…」

「なんだ、鑑定機に触れるのは初めてか?」

碧が驚いていると後ろに立っていたもう1人の30代くらいの筋肉質な傭兵が喋りかけてきたので頷くと、鑑定機と呼ばれる水晶について説明をしてくれた。

「鑑定機は魔力を流したやつの過去の犯罪歴を調べるモンなんだ。犯罪歴がないなら青、犯罪者なら赤に変わる。他にも名前や性別を読み取って詰所にある用紙に記録されてくんだよ」

「へぇ…便利だね」

フィーが言っていた通り、碧が帝国で犯罪者扱いされていることは伝わってないようで内心ホッとしながら返事をする。

「そうなんです凄く便利なんですよ。これで犯罪者が来た時に撃退してくれる魔法とかまでついてたら最高だったんですけどねぇ」

「おいおい。ラント、お前そうやってすぐ楽しようとするんじゃねぇよ…」

早口で捲し立てる若い傭兵にもう1人の傭兵が呆れながら言う。

「あぁ!今のマークさんの言葉傷ついた!団長に言いつけてやりますから!」

「団長に言うのは反則だろ…」

男が若い傭兵の言葉に呆れたように笑う。
どうやら若い傭兵がラント、筋肉質な傭兵がマークと言うらしい。
ラントは目と髪が黄色で中性的な顔をした青年で、マークは黒髪で目は黄色の漢気溢れる男性だ。

碧の事も忘れているのか目の前でぎゃあぎゃあと口論する2人をどうしたらいいものかと大人しく黙ってみていると不意にガチャリと音を立ててドアが開き、外にいた幼い顔立ちの傭兵がひょっこりと顔を出し中を覗き込んできた。

「マークさん?なんか時間かかってるけど何かあったの?」

「ん?あぁ、アルか。ラントが煩くて困ってただけだから大丈夫だ。すぐにおわらせる」

「そっか。ラントさん、マークさんの邪魔しちゃダメだよ」

「えっ…なんで僕が怒られる流れに?」

アルと呼ばれた少年がパタンと扉を閉めるとラントが不服そうにむぅ、と頬を膨らませる。マークはそれをちらりと見ただけで気にすることも無く碧に話しかける。

「時間かけちまって悪いな、これで審査は終わりだ。次のやつとは知り合いか?」

「うん、5人で来てるんだ」

「じゃあそいつ等が終わるまでここでまってるといい。門をくぐっちまうとお前さんちっこいから人混みに流されて迷子になってそうだからな」

「いや、マークさんに比べたらほとんどのやつが小さいってことになりますからね?」

「そうかぁ?」

“まぁどっちにしろ審査は1人ずつって規定だから時間かかるけどな”といいながら豪快に笑うマークの提案に甘え、部屋の中でみんなの審査が終わるのを待つことにした。

次に呼ばれて入って来た輝璃達も審査に問題はなくすんなりと終わり、ラントが獣人国へ入るための人間の力では到底開けられないような大きな門を魔法を使って開ける。碧達が門をくぐろうとするとラントとマークがそれぞれ

「ようこそ。獣人国へ!」

「ま、ゆっくり楽しんでってくれな」

と歓迎の言葉をくれたので碧はそれに笑顔で返し門を潜った。。





門の中は人で溢れかえっていて、あまりの人の多さに碧と雪が圧倒されていると輝璃が少し驚いたように口を開く。

「…想像してたより、人が多い」

「まぁ、大国っすからね。むい、ユキちゃんとしっかり手繋いどくんすよ」

「わかったー!」

そんな会話をしながら5人はギルドに向かい歩き出す。

ルーティアには組合ギルドがあり、商人ギルドや職人ギルド、冒険者ギルドが存在する。

獣人国にもあるので、碧達は災厄の森を出る前に獣人国に着いたら冒険者ギルドに登録しておこう、と話をしていたのだ。

ギルドに1度加盟すると、“ライセンス”が貰える。
“ライセンス”は持っているだけで身分証にもなる。冒険者になれば旅をしててもギルドに行けば依頼を受けて稼げるし、倒した魔物の魔石なども売れるから。とフィーから言われた。

門を潜ってから、沢山並ぶ露店などを見て寄り道しながら十数分ほど歩いて冒険者ギルドについた。
2階建ての大きな建物で、看板にはルーティア語で“ギルド”と書かれていた。

中に入ると結構な人がいて賑わっていた。
建物内にはいくつものテーブルやイスがあり冒険者の休憩などで使えるのか座って談笑してる人が多くいた。

5人は冒険者登録をするために受け付けに向かう。
受け付けには女の人が座っていてその頭にはうさ耳が生えていた。
受け付けの前に立つと

「こんにちは。ご依頼ですか?」

とニコニコと聞かれたので、冒険者登録をしに来たことを伝えると受付嬢は後ろの棚から水晶を取り出した。
マーク達の所で使われていた水晶よりも一回り小さい。

「登録の際に此方に魔力を流していただきます。魔力から読み取らせて頂いたステータスは名前などの基本情報以外は厳重に保管され、有事など緊急時以外にはこちらギルド側も本人の許可無く見ることは出来ません」

「…有事や緊急時って、例えばどんな?」

「登録者が重犯罪を犯し、指名手配犯になる場合は読み取ったステータスから手配書を作ります。…他には魔物や魔人、他種族が攻めてきた場合はステータスを魔法機に読み取らせることで冒険者の皆様に強制的に魔力を繋ぎ、念話での緊急要請をお願いする場合がございます」

「なら大丈夫そうっすね」

「そうだね」

勝手に見れないなら問題ないと、碧はマーク達の時と同じように水晶に魔力を流すと水晶が光りだし、その光が受付嬢の手に集まりカードが形成された。

受付嬢はそのカードを碧に手渡し注意点を話す。

「今渡したカードが身分証ライセンスになります。無くされてしまうと再発行には手続きが多く時間がかかってしまうので保管には十分お気をつけください。ライセンスは依頼を受ける際、達成した際に必要となりますので必ず携帯しておいてください」

受付嬢に返事をしてから碧はライセンスに視線を落とす。
書いてあるのは名前、性別、年齢と基本的なものとカードの右下にDと書いてあるだけだった。

碧がライセンスを見てる間に4人も作り終わったらしく、受付嬢から今度はライセンスの中身について説明があった。

「ライセンスには名前などの基本情報と一緒に“冒険者ランク”が書かれています。」

「冒険者ランク?」

「はい。冒険者ランクとはギルドへの貢献度、依頼の達成度によって変動します。お客様方は登録したばかりなので1番下のDランクです。D、C、B、A、AA、S、SSと上がっていきます。」

「…ランクが上がると、何かあるの?」

「受けれる依頼が増えますね。依頼はあちらのボードに貼ってありますので、決まりましたら此方に持ってきて頂きます。ランクによって受けられない依頼などもございますので依頼書はよく読み込むことをオススメします。それからランクが上がると難易度は上がりますがその分報酬も増えますよ。
他にも依頼とは関係なくても魔物や魔人の討伐でもランクが上がることがあります。その他に気になる点などはありましたか?」

「大丈夫っす!」

丁寧に教えてくれた受付嬢にお礼を言ってから碧達は先に宿を探すために1度ギルドを出た。


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