由々しき事態に我は思う

響心

文字の大きさ
1 / 1
社畜の勇者

社畜

しおりを挟む
「ごめん、母さん。今日も残業なんだ。」

「えー!?今日もかい?
あんた、今日が誕生日だってこと忘れてやしないのかい?」

「うん。わかってる。
でも、これは僕の仕事なんだ。
残して、会社のみんなに迷惑かけるわけにはいかないんだ。」

僕は今、会社から実家にで電話をかけている。

今年で3年目になるこの会社は、とてもアットホームで、皆、親しくしてくれている。

自分の誕生日と言う理由では、仕事に支障を起こしては申し訳ない。

そんな理由から、私はデスクに座りたい、やりかけの仕事を前にしている。

「だからって…」

心配してくれる母さんの気持ちはわかる。

〝だが、やらなきゃいけないんだよな〟

「母さん。これ以上は遅くなるからさ。
母さんは早く寝てくれ。」

「あ、ちょっと!」

僕は、母さんの言葉を最後まで聞かずに、電話をきり再び仕事に没頭しはじめた。

〝出来るだけ早く終わらせなくては…〟

Excelを再び見つめ、カタカタとキーボードを叩きはじめた。

時刻は22:00を回り、気が焦り始める。

〝12時回る前に終わらせなきゃ〟

残業はam12時までとされている。

だが、これを守る必要はないのと言うのが暗黙のルールではあるが、私は出来るだけ早く終わらせたいと思っている。

その分仕事が増えても対処できるからだ。

それでもこの量は、今日中に終わる量はではない。

だが、上司は言っていた。

やろうとして出来ないことはない。

と…

僕はそれを信じてる。

今の仕事を12時までに終わらせて、もしも追加の仕事の電話がきたら、すぐに取り掛かろう。

〝誕生日よりも仕事だ!
仕事が無くて暇より、何倍もいい!〟

僕には仕事しかないのだ。

カタカタとキーボードを叩く音がとても気持ちがいい。

仕事しているって感じがしていいのだ。

私は一心不乱にキーボードを叩き、内容をまとめていく。

後、少しで終わりそうだ。

pc画面の左下にある時刻を確認する。

〝23時55分かぁー。
後、5分で30歳。
おめでとう。僕。〟

僕は、背伸びをしてデスクから立ち、上がると窓際にあるコーヒーメーカーから、マグカップに注ぎ、外の景色を眺める。

50階建ての25階にある職場からの景色は、とても癒される。

キラキラ光るネオンとそびえ立つ電波塔。

こんな時間にもかかわらず、まだ街は動いている。

〝この街に負けないよう頑張らねば。〟

「よし!再開するか!」

僕は、再びデスクに戻るとコーヒーを一口飲み、画面を確認する。

「あれ?メールだ。」

〝やはり、追加の仕事か。
内容は…〟

僕はメールを開き、内容を確認する。

「な!?なんだこれ…」

メールには、リンクと可愛らしい絵文字付きのメッセージだった。



30歳、お誕生日おめでとうございますヾ(๑╹◡╹)ノ"
あなたは、勇者に選ばれました。
(๑˃̵ᴗ˂̵)

これから、あなたを異世界へ誘いますヾ(๑╹◡╹)ノ"

よかったねー・:*+.\(( °ω° ))/.:+

こちらをクリック

http://asmwa……


〝なんだこれ…ゲームの宣伝か何かか?
私が誕生日って何故知ってる?
まぁ、無視に限る。〟

私は、メールの削除ボタンを押した。

〝さて、仕事の続きを…〟

再び、ピロリンとメール音が再びなる。

〝今度こそ仕事の……かぁーっ!〟

なんでメール消したんですかぁー!\\\٩(๑`^´๑)۶////

こっちだって生活かかってるんですからね!。・°°・(>_<)・°°・。

リンクはこちら

http://asmwa…

「知るか!仕事させろー!!!」

再び削除ボタンを押そうとする。

だがメール画面が動き、削除ボタンをクリック出来ない。

「ちょっ!くそー!!?」

何回やってもひょいひょいとかわされ、仕事が進まず、苛立ちがピークに達した。

「どちくしょー!!」

怒り任せに押した削除ボタンは、まるで蜃気楼の様に消え、逆にアドレスが浮かび上がる。

「あっ!?」

いらっしゃーい╰(*´︶`*)╯♡

というメッセージと共に画面がピカピカと光り出し、僕の意識は遠くへと飛んでいった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は

だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。 私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。 そのまま卒業と思いきや…? 「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑) 全10話+エピローグとなります。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...