トガビト_ワールドクリエイション

ウツロうつつ

文字の大きさ
69 / 86
第9章~眷属教育~

第67話 ディーバ――私はキレイ系の人より、カッコイイ系の人の方が好き。

しおりを挟む
 アリアとカトレアの二人が不合格に終わった戦闘の試験から一週間、アリアとカトレアを含めた4人の子供たちは立派な一人前の戦士となるべく、エクノルエの私兵と共にメルリリスによる厳しい訓練を受けていた。
 ところで諸兄に至っては気づいた方もいると思うが、なぜ、試験に合格し、卒業したはずのトリオラとデュオスが未だに訓練に参加しているのか、両名が自発的に参加している?答えはノーだ。二人は好き好んで地獄に身を置くほどのバカではない。ということは、

「コラー、トリオラにデュオス!!他の者より遅れてるぞ――」

 メルリリスによる。連帯責任という名の理不尽の仕業であった。
 そうしたこともあってメルリリスによる地獄の訓練は今日も続いていた。

―――一時間後
 
「ぜんたーい、止まれ!!」

 メルリリスの号令により、訓練参加者の足が同時に止まる。そして、メルリリスは続ける。

「それじゃーこれで準備運動は終わり!!戦闘訓練始めるよー」

「「了解」」

「それじゃー訓練開始前の戦士の心得唱和!!」

「「一つ!!死に慣れよ。敵の死、味方の死、慣れずに死するは己と心得よ!!」」

「「一つ!!死を誉れとすることなかれ、死すことに意味などなし、生きて帰ることを名誉とせよ!!」」

「「一つ!!死を覚悟したのならば、死するまで、首一つになっても戦い続けよ!!」」

「「一つ!!決闘において手加減することは、相手への最大の侮辱と心得よ!!」」

「「一つ!!前項の一つでも破りし者は戦士に非ず、戦士に非ずは獣と同じ、獣は必ず駆逐せよ!!以上戦士の心得!!」」

「一体どこの蛮族だぁ、こりゃあ」
 
 通りがかりのガヘリスが水を差す。

「ガッちゃん、うっさい!!」

「ガッちゃんじゃねぇよ」

 メルリリスとガヘリスのいつものやり取りが始まる中、他の生徒たちは自主的に模擬戦の訓練を始めるため、生徒各々が各々のエモノを持ち、訓練を開始する。
 そんな中、レイはアリアに近寄り質問をする。

「前も思ったのですが、アリアは槍が得意武器なのですね」

「あ、はい」

「トリオラのように剣は使用しないのですか?」

「剣はその……」

 アリアがレイから目を反らし、言いにくそうに微笑んだ。

「蹴った方が早い、ですものね」

 カトレアが面白そうに笑いながら言う。すると、アリアが顔を赤く羞恥に染める。

「カトレア!それは言わない約束でしょう!!」

「だったらそのがさつさを少しは直そうとしなさい!!貴女という人はエレガントさというものが足りなさ過ぎますわ」

「エレガント、さ?」

 レイは先日の大戦斧を自在に操るカトレアの姿を思い浮かべる。するとカトレアがキッとレイの方を見る。

「何か?」

「なんでもありません。だけどカトレアの使う武器も珍しいですよね」

「そりゃそうですわ、何せ大戦斧の重量は30キログラムはありますし、そんな物を武器として扱うこと自体常人には不可能。魔力を持ち、身体能力を強化出来る私にこそ相応しい武器ですわ!!」

「まぁ、そうですよね」

「それに大戦斧ほど魔力を扱う者にとって使いやすい武器はありませんのよ。何しろ威力が段違いで高く、攻撃範囲も広い。おまけに刃こぼれしづらく、手入れも簡単、これ程素晴らしい武器はどこを探してもありませんわ」

 流石商家の娘、弁が立つ、レイはそんなことに感心しつつもカトレアの一つの言葉が気になった。

「カトレア、今貴女刃こぼれがどうとか言いませんでした?」

「言いましたけど何か?」

 カトレアが不思議そうに言うと、レイがメルリリスに向かって言う。

「メルリリス、魔力を使った武器の作り方はまだ教えていないのですか?」

 言われてメルリリスは一考し、口を開く。

「そう言われてみればまだ教えてなかったかも~」

「それならば、僕がアリアたちに教えても良いですか?」

「いいよ~じゃあこっちは魔力が使えない人たちの訓練を見てるね~」

言ってメルリリスはその場を離れ、レイは魔力の扱える子供組の面倒を見ることになり、レイは子供組の子らを前にして、

「それでは皆さん、今日はどうぞよろしくお願いします」

 と言って深々と頭を下げる。すると、

「そんな主よ、頭をあげて下さい。我ら一同主から直接魔法についてご教授願えることは一生ものの宝にございます」

 敬虔なラバルディア聖教の信徒であるトリオラは、降って湧いた主からの直接指導という幸運に感動し、五体投地しそうな勢いで言う。レイはそんなトリオラの態度に戸惑いを隠せない。

「と、兎に角授業を始めましょう。デュオス、魔力についてはガヘリスから教わっていると思いますけどその一番の特徴は何ですか?」

「地水火風に限らず何にでもなれる。というところでしょうか?」

「その通り、だからこそ、魔力で武器も創り出せるというわけです。そういうわけで皆さんにはこれから自分専用の武器の作り方を学んでもらいます」

「「はい!!」」

皆が元気良く返事をする。

「と言ってもやり方は今まで皆さんが使っていた魔法と同じです。要はイメージ力、自分がどのような武器を創りたいかを明確にイメージして下さい。そして、仕上げにそのイメージに魔力を通す。そうすれば――」

 レイの右手に一振の剣――慈悲の剣が現れた。

「なんて美しい剣だ」

「それよりも、魔力操作のスムーズさだよまるで清流を感じさせる静かさの魔力の流れ、流石主正に神業だ」

「神じゃないです」

 レイがすかさず否定する。しかし、レイのマナコントロール――魔力操作が神がかっていることに間違いはない。神業と称されるのも無理からぬことだ。
 すると、アリアがレイの持つ慈悲の剣に興味を示す。

「主様、その剣は何という名を持つのですか?」

「慈悲の剣です」

「キレイなお名前――それにその……」

 言いながらアリアが剣に触れようとする。それに気づいたレイが「危ない!!」と言って慈悲の剣を慌てて消すと、アリアは「あっ」と言いながら、名残惜しそうな顔をした。

「慈悲の剣はその刃触れた者を痛みや苦しみなく確実に死に至らしめる剣です。だから決して慈悲の剣の刃に触れてはなりませんよ」

「すみません」

 アリアがシュンと縮こまりながらレイに謝る。するとレイが縮こまっているアリアの頭にポンと手を置いて優しく撫でながら言う。

「僕が先に注意しておくべきことでした。それに次から気をつけてくれれば問題ありません」

「そんな主様は何も悪くはありません。全ては私の不注意が原因です」

「いえ、僕が」

「いえいえ私が」

 互いが自分の方が悪いのだと譲らない。すると、業を煮やしたカトレアが、

「そんなものどちらが悪くともよろしいですわ。早く授業の続きを行って下さいな」

 二人にそういうと、二人が同時にシュンと縮こまり。

「「すみません」」

 と同時に謝る。するとレイとアリアが互いを見合い自然と顔が笑顔になり、やがて声を出して笑い会う。そんな二人にカトレアも呆れを通り越して笑顔になる。
 ややあってレイがコホンと咳払い。

「授業が脇道にそれてしまいましたが――」

「誰のせいですの」

 カトレアが目ざとく指摘する。

「それてしまいましたが――」

 レイはそれを聞かなかったことにする。

「まさかの無視ですわ」

「授業の続きを行いたいと思います。皆さん自分の創り出したい武器をイメージして下さい」

 レイの強引な授業の進行にカトレアは「まったくもう」と文句を言いつつも、レイの言う通りにイメージを始める。レイは生徒一人一人の顔を見て、しっかりとイメージに集中出来ているのかを確認。

「それでは魔法を放つ時と同じようにそのイメージに魔力を通して下さい」

 言われて生徒たちはそれぞれが魔法を発動させ、それぞれのイメージ通りの武器の創造に成功する。
 トリオラは鳥の翼と風をイメージしたのだろうか、緑色の片刃の剣を。デュオスは変幻自在の水をイメージしたのか青色の弓を。カトレアは武骨だか施された意匠にどこか気品を感じさせる大戦斧をそれぞれ創り出していた。
 そして、アリアはというと、

「出来ました!!」

 レイの慈悲の剣がモデルになっているのだろう、細部の意匠が慈悲の剣に似せられた白銀の槍を創造していた。
 レイは生徒一人一人の創り出した武器を見て、納得したように一度頷くと、

「今、皆さんが作り出した武器が、今後貴方たちの相棒となる武器です。ですからその武器に名前をつけてあげましょう」

 実は創りだした武器に名前をつけることで魔法と発動――再創造をする際にイメージがしやすくなるという利点があるのだが、レイはそこまで説明するのは無粋であると思い、生徒たちにはあえて説明をしなかった。

「それでは君の名前はゲイルだ」

 トリオラが自身の武器に名前をつけると、それを皮切りに、

「それじゃあお前はクレセントだ」

とデュオスが言い。

「では、貴女はローゼンシアですわ」

と、カトレアが名付ける。
生徒それぞれが自身の武器に名をつける中、アリアはアリアは何やらモジモジしており、その様子に気が付いたレイがアリアに

「アリア、どうかしたのですか?」

 そう訊くとアリアはおずおずとしながらレイに近づき、

「あの、この子の名前は主様につけて欲しいかなって……」

 そう、申し訳なさそうに言う。

「それは別にかまいませんが――」
「よろしいのですか!!」

 レイが言いきる前に、アリアが被せ気味に言いながらレイに詰め寄る。すると二人の顔が吐息がかかるほどに近くなる。そこでアリアはハッと我に返り、頬を赤く染めながら「すみません」と小さく呟き、レイも「いえ」と言いつつも自身の顔が熱くなるのを感じた。

「それで、名前の件なのですが――ディーバという名はどうでしょう」

レイがそう言うと。

「でぃーば、ですか?」

 とアリアが繰り返す。

「そうです。ディーバとは歌姫という意味なのですが――」

「ああ!!私の名前がアリアだから、ディーバなのですね」

「ありきたりな名前かも知れませんが」

 レイがそう言うと。アリアは創り出した槍をギュッと抱いてその名前を口にする。

「ディーバ――うん、この子の名前はディーバです」

 そう言って母のように愛おしそうにディーバを抱くアリア。
 この時はまだ誰も知らなかった。アリアとディーバが活躍する機会がすぐそこまで迫っていることに……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...