トガビト_ワールドクリエイション

ウツロうつつ

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第9章~眷属教育~

第67話 ディーバ――私はキレイ系の人より、カッコイイ系の人の方が好き。

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 アリアとカトレアの二人が不合格に終わった戦闘の試験から一週間、アリアとカトレアを含めた4人の子供たちは立派な一人前の戦士となるべく、エクノルエの私兵と共にメルリリスによる厳しい訓練を受けていた。
 ところで諸兄に至っては気づいた方もいると思うが、なぜ、試験に合格し、卒業したはずのトリオラとデュオスが未だに訓練に参加しているのか、両名が自発的に参加している?答えはノーだ。二人は好き好んで地獄に身を置くほどのバカではない。ということは、

「コラー、トリオラにデュオス!!他の者より遅れてるぞ――」

 メルリリスによる。連帯責任という名の理不尽の仕業であった。
 そうしたこともあってメルリリスによる地獄の訓練は今日も続いていた。

―――一時間後
 
「ぜんたーい、止まれ!!」

 メルリリスの号令により、訓練参加者の足が同時に止まる。そして、メルリリスは続ける。

「それじゃーこれで準備運動は終わり!!戦闘訓練始めるよー」

「「了解」」

「それじゃー訓練開始前の戦士の心得唱和!!」

「「一つ!!死に慣れよ。敵の死、味方の死、慣れずに死するは己と心得よ!!」」

「「一つ!!死を誉れとすることなかれ、死すことに意味などなし、生きて帰ることを名誉とせよ!!」」

「「一つ!!死を覚悟したのならば、死するまで、首一つになっても戦い続けよ!!」」

「「一つ!!決闘において手加減することは、相手への最大の侮辱と心得よ!!」」

「「一つ!!前項の一つでも破りし者は戦士に非ず、戦士に非ずは獣と同じ、獣は必ず駆逐せよ!!以上戦士の心得!!」」

「一体どこの蛮族だぁ、こりゃあ」
 
 通りがかりのガヘリスが水を差す。

「ガッちゃん、うっさい!!」

「ガッちゃんじゃねぇよ」

 メルリリスとガヘリスのいつものやり取りが始まる中、他の生徒たちは自主的に模擬戦の訓練を始めるため、生徒各々が各々のエモノを持ち、訓練を開始する。
 そんな中、レイはアリアに近寄り質問をする。

「前も思ったのですが、アリアは槍が得意武器なのですね」

「あ、はい」

「トリオラのように剣は使用しないのですか?」

「剣はその……」

 アリアがレイから目を反らし、言いにくそうに微笑んだ。

「蹴った方が早い、ですものね」

 カトレアが面白そうに笑いながら言う。すると、アリアが顔を赤く羞恥に染める。

「カトレア!それは言わない約束でしょう!!」

「だったらそのがさつさを少しは直そうとしなさい!!貴女という人はエレガントさというものが足りなさ過ぎますわ」

「エレガント、さ?」

 レイは先日の大戦斧を自在に操るカトレアの姿を思い浮かべる。するとカトレアがキッとレイの方を見る。

「何か?」

「なんでもありません。だけどカトレアの使う武器も珍しいですよね」

「そりゃそうですわ、何せ大戦斧の重量は30キログラムはありますし、そんな物を武器として扱うこと自体常人には不可能。魔力を持ち、身体能力を強化出来る私にこそ相応しい武器ですわ!!」

「まぁ、そうですよね」

「それに大戦斧ほど魔力を扱う者にとって使いやすい武器はありませんのよ。何しろ威力が段違いで高く、攻撃範囲も広い。おまけに刃こぼれしづらく、手入れも簡単、これ程素晴らしい武器はどこを探してもありませんわ」

 流石商家の娘、弁が立つ、レイはそんなことに感心しつつもカトレアの一つの言葉が気になった。

「カトレア、今貴女刃こぼれがどうとか言いませんでした?」

「言いましたけど何か?」

 カトレアが不思議そうに言うと、レイがメルリリスに向かって言う。

「メルリリス、魔力を使った武器の作り方はまだ教えていないのですか?」

 言われてメルリリスは一考し、口を開く。

「そう言われてみればまだ教えてなかったかも~」

「それならば、僕がアリアたちに教えても良いですか?」

「いいよ~じゃあこっちは魔力が使えない人たちの訓練を見てるね~」

言ってメルリリスはその場を離れ、レイは魔力の扱える子供組の面倒を見ることになり、レイは子供組の子らを前にして、

「それでは皆さん、今日はどうぞよろしくお願いします」

 と言って深々と頭を下げる。すると、

「そんな主よ、頭をあげて下さい。我ら一同主から直接魔法についてご教授願えることは一生ものの宝にございます」

 敬虔なラバルディア聖教の信徒であるトリオラは、降って湧いた主からの直接指導という幸運に感動し、五体投地しそうな勢いで言う。レイはそんなトリオラの態度に戸惑いを隠せない。

「と、兎に角授業を始めましょう。デュオス、魔力についてはガヘリスから教わっていると思いますけどその一番の特徴は何ですか?」

「地水火風に限らず何にでもなれる。というところでしょうか?」

「その通り、だからこそ、魔力で武器も創り出せるというわけです。そういうわけで皆さんにはこれから自分専用の武器の作り方を学んでもらいます」

「「はい!!」」

皆が元気良く返事をする。

「と言ってもやり方は今まで皆さんが使っていた魔法と同じです。要はイメージ力、自分がどのような武器を創りたいかを明確にイメージして下さい。そして、仕上げにそのイメージに魔力を通す。そうすれば――」

 レイの右手に一振の剣――慈悲の剣が現れた。

「なんて美しい剣だ」

「それよりも、魔力操作のスムーズさだよまるで清流を感じさせる静かさの魔力の流れ、流石主正に神業だ」

「神じゃないです」

 レイがすかさず否定する。しかし、レイのマナコントロール――魔力操作が神がかっていることに間違いはない。神業と称されるのも無理からぬことだ。
 すると、アリアがレイの持つ慈悲の剣に興味を示す。

「主様、その剣は何という名を持つのですか?」

「慈悲の剣です」

「キレイなお名前――それにその……」

 言いながらアリアが剣に触れようとする。それに気づいたレイが「危ない!!」と言って慈悲の剣を慌てて消すと、アリアは「あっ」と言いながら、名残惜しそうな顔をした。

「慈悲の剣はその刃触れた者を痛みや苦しみなく確実に死に至らしめる剣です。だから決して慈悲の剣の刃に触れてはなりませんよ」

「すみません」

 アリアがシュンと縮こまりながらレイに謝る。するとレイが縮こまっているアリアの頭にポンと手を置いて優しく撫でながら言う。

「僕が先に注意しておくべきことでした。それに次から気をつけてくれれば問題ありません」

「そんな主様は何も悪くはありません。全ては私の不注意が原因です」

「いえ、僕が」

「いえいえ私が」

 互いが自分の方が悪いのだと譲らない。すると、業を煮やしたカトレアが、

「そんなものどちらが悪くともよろしいですわ。早く授業の続きを行って下さいな」

 二人にそういうと、二人が同時にシュンと縮こまり。

「「すみません」」

 と同時に謝る。するとレイとアリアが互いを見合い自然と顔が笑顔になり、やがて声を出して笑い会う。そんな二人にカトレアも呆れを通り越して笑顔になる。
 ややあってレイがコホンと咳払い。

「授業が脇道にそれてしまいましたが――」

「誰のせいですの」

 カトレアが目ざとく指摘する。

「それてしまいましたが――」

 レイはそれを聞かなかったことにする。

「まさかの無視ですわ」

「授業の続きを行いたいと思います。皆さん自分の創り出したい武器をイメージして下さい」

 レイの強引な授業の進行にカトレアは「まったくもう」と文句を言いつつも、レイの言う通りにイメージを始める。レイは生徒一人一人の顔を見て、しっかりとイメージに集中出来ているのかを確認。

「それでは魔法を放つ時と同じようにそのイメージに魔力を通して下さい」

 言われて生徒たちはそれぞれが魔法を発動させ、それぞれのイメージ通りの武器の創造に成功する。
 トリオラは鳥の翼と風をイメージしたのだろうか、緑色の片刃の剣を。デュオスは変幻自在の水をイメージしたのか青色の弓を。カトレアは武骨だか施された意匠にどこか気品を感じさせる大戦斧をそれぞれ創り出していた。
 そして、アリアはというと、

「出来ました!!」

 レイの慈悲の剣がモデルになっているのだろう、細部の意匠が慈悲の剣に似せられた白銀の槍を創造していた。
 レイは生徒一人一人の創り出した武器を見て、納得したように一度頷くと、

「今、皆さんが作り出した武器が、今後貴方たちの相棒となる武器です。ですからその武器に名前をつけてあげましょう」

 実は創りだした武器に名前をつけることで魔法と発動――再創造をする際にイメージがしやすくなるという利点があるのだが、レイはそこまで説明するのは無粋であると思い、生徒たちにはあえて説明をしなかった。

「それでは君の名前はゲイルだ」

 トリオラが自身の武器に名前をつけると、それを皮切りに、

「それじゃあお前はクレセントだ」

とデュオスが言い。

「では、貴女はローゼンシアですわ」

と、カトレアが名付ける。
生徒それぞれが自身の武器に名をつける中、アリアはアリアは何やらモジモジしており、その様子に気が付いたレイがアリアに

「アリア、どうかしたのですか?」

 そう訊くとアリアはおずおずとしながらレイに近づき、

「あの、この子の名前は主様につけて欲しいかなって……」

 そう、申し訳なさそうに言う。

「それは別にかまいませんが――」
「よろしいのですか!!」

 レイが言いきる前に、アリアが被せ気味に言いながらレイに詰め寄る。すると二人の顔が吐息がかかるほどに近くなる。そこでアリアはハッと我に返り、頬を赤く染めながら「すみません」と小さく呟き、レイも「いえ」と言いつつも自身の顔が熱くなるのを感じた。

「それで、名前の件なのですが――ディーバという名はどうでしょう」

レイがそう言うと。

「でぃーば、ですか?」

 とアリアが繰り返す。

「そうです。ディーバとは歌姫という意味なのですが――」

「ああ!!私の名前がアリアだから、ディーバなのですね」

「ありきたりな名前かも知れませんが」

 レイがそう言うと。アリアは創り出した槍をギュッと抱いてその名前を口にする。

「ディーバ――うん、この子の名前はディーバです」

 そう言って母のように愛おしそうにディーバを抱くアリア。
 この時はまだ誰も知らなかった。アリアとディーバが活躍する機会がすぐそこまで迫っていることに……
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