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第292話 ヤサカ再び
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「ねぇ、ユウさん」
「どうした、スクナ」
「今さらだけど、私が牢に捕らわれているときに、シロトリさんがこう言ったの。それもこれも、ぜんぶイズモ公のせいだ、って」
「知ってるよ。あの野郎、全部人のせいにしやがって。不正をしたのは自分たちだろうが」
「それはそうなんだけど、どうしてユウさんのせいにするのかなっていまいちはっきりしないのよね」
「ああ、それはおそらく俺がやったことが理由になっているのだろうな」
「ユウさんがやったことって、タケウチを助けたことでしょ?」
ヒダ国はいままでの利益の付け替えを誤魔化すために、今年は多大な出費を覚悟した。イッコウという価値ある商品の在庫を減らすことでその穴埋めをしようとしたのである。
ところが、ミノ国の業績は予想以上に伸びていた。その原因は、ほぼタケウチ工房にある(シキ研も多少は寄与している)。その礎を築いたのがユウなので、シロトリはユウのせいだ、と言った。と、そこまでは以前に書いた。
去年の11月時点で、タケウチ工房の売り上げは2,695万/月であったが。それが3月には7,180万/月まで伸びた。
その間の5ヶ月を合計すると、売り上げは2.1億。経常利益6,500万円をたたき出していたのであった。その中には1体50万の旋盤や80万のボール盤、1本1万円のドリルなどの売り上げも入っている。
タケウチ工房は、いまやハザマ地区ではダントツの売り上げを誇る大企業なのである。しかもそれだけではない。新規に雇い入れた社員や購入備品、協力工場からの仕入れ、使用する消耗材などで、地域の経済(GDP)をたった1社で底上げしているのである。
現在、ニホンには国が77ある。そのうち、利益を出している国は47ヶ国だけである。47ヶ国の合計納税額は約100億であり、そのうちミノ国は1.8億である。
決して多いほうではないが、ランクとしてはそれなりの上位に位置する。そもそもカンサイとアズマだけで。全納税額の約半分を占めるのである。
そこに、タケウチの納税額6,500万×25%(税率)=1,625万が乗っかった。なんと1社でミノ国の税収を9%も増やしたことになる。
その分がシロトリたちの誤算だったのである。イッコウを1割売ってもそれが埋められない。それ以上売ってしまうと、来年の埋め合わせが不可能になる。決算を誤魔化すことさえもできない状況であったのだ。
だからスクナを誘拐して、ユウを脅迫することを考えたのである。
「そういうことだったのね」
「スクナ、覚えておくといい。人を騙したり誤魔化したりすることはとても簡単なんだ」
「そ、そうかしら?」
「ああ、簡単だ。だが、誤魔化し続けるということはとても難しいんだ」
「そうか、なるほど」
「だから、ウソをつくなら一発勝負の場合のみだ。ずっとそれが続くような場合には、正直が一番だよ」
「う、うん。覚えておく」
ユウさん、私のことを言ってないよね? 私がカミカクシだってことまだ内緒なんだけど。気づいてないよね? 私のほうが、ほんとうは年上だってことにも。
魔王の転送スキルで、私たちはヤサカの里に着いた。前に来たときと同じように、里は静まり返っている。いや、以前よりもずっと静かに感じる。
あの子はまだいるのかしら。また爆裂コーンをあげるよ。それとも透明人間になっちゃった?
「怖ぇよ!」
「こんにちわー」
イリヒメの館の前で私は声を張り上げる。あのときは同い年ぐらいの男の子が出てきたのだけど。
し~ん。
というオノマトペしか帰って来ない。これは留守なのかしら?
「出かけているのか。畑でも行っているのかも知れないな。勝手に入らせてもらおう」
「ん? 中からなにか声がするノだ?」
「ってことは誰かいるのか。オウミ、ちょっと見てこい」
「了解ノだ」
すいすいすい~とオウミは中に入っていった。そしてすぐに帰って来た。
「ユウ、それにミノウ、ちょっと来るノだ。他のものはここで待機なノだ」
「なんだ、お前が仕切るのは珍しいな」
「いいから急ぐのだ。ことは急須を要するノだ」
「急須を要してお茶でも飲むのかよ! 急を要するだろ!」
「そう、それなのだ。ミノウ、すぐに来るノだ」
「分かったヨ。案内を頼むヨ」
そしてようやく、第288話 ヤサカ最後の日 の最後に繋がるのである。
「話の最後に繋がっちゃうとか、これ構成ミスではないノか?」
「黙ってなさいって」
「どうした、スクナ」
「今さらだけど、私が牢に捕らわれているときに、シロトリさんがこう言ったの。それもこれも、ぜんぶイズモ公のせいだ、って」
「知ってるよ。あの野郎、全部人のせいにしやがって。不正をしたのは自分たちだろうが」
「それはそうなんだけど、どうしてユウさんのせいにするのかなっていまいちはっきりしないのよね」
「ああ、それはおそらく俺がやったことが理由になっているのだろうな」
「ユウさんがやったことって、タケウチを助けたことでしょ?」
ヒダ国はいままでの利益の付け替えを誤魔化すために、今年は多大な出費を覚悟した。イッコウという価値ある商品の在庫を減らすことでその穴埋めをしようとしたのである。
ところが、ミノ国の業績は予想以上に伸びていた。その原因は、ほぼタケウチ工房にある(シキ研も多少は寄与している)。その礎を築いたのがユウなので、シロトリはユウのせいだ、と言った。と、そこまでは以前に書いた。
去年の11月時点で、タケウチ工房の売り上げは2,695万/月であったが。それが3月には7,180万/月まで伸びた。
その間の5ヶ月を合計すると、売り上げは2.1億。経常利益6,500万円をたたき出していたのであった。その中には1体50万の旋盤や80万のボール盤、1本1万円のドリルなどの売り上げも入っている。
タケウチ工房は、いまやハザマ地区ではダントツの売り上げを誇る大企業なのである。しかもそれだけではない。新規に雇い入れた社員や購入備品、協力工場からの仕入れ、使用する消耗材などで、地域の経済(GDP)をたった1社で底上げしているのである。
現在、ニホンには国が77ある。そのうち、利益を出している国は47ヶ国だけである。47ヶ国の合計納税額は約100億であり、そのうちミノ国は1.8億である。
決して多いほうではないが、ランクとしてはそれなりの上位に位置する。そもそもカンサイとアズマだけで。全納税額の約半分を占めるのである。
そこに、タケウチの納税額6,500万×25%(税率)=1,625万が乗っかった。なんと1社でミノ国の税収を9%も増やしたことになる。
その分がシロトリたちの誤算だったのである。イッコウを1割売ってもそれが埋められない。それ以上売ってしまうと、来年の埋め合わせが不可能になる。決算を誤魔化すことさえもできない状況であったのだ。
だからスクナを誘拐して、ユウを脅迫することを考えたのである。
「そういうことだったのね」
「スクナ、覚えておくといい。人を騙したり誤魔化したりすることはとても簡単なんだ」
「そ、そうかしら?」
「ああ、簡単だ。だが、誤魔化し続けるということはとても難しいんだ」
「そうか、なるほど」
「だから、ウソをつくなら一発勝負の場合のみだ。ずっとそれが続くような場合には、正直が一番だよ」
「う、うん。覚えておく」
ユウさん、私のことを言ってないよね? 私がカミカクシだってことまだ内緒なんだけど。気づいてないよね? 私のほうが、ほんとうは年上だってことにも。
魔王の転送スキルで、私たちはヤサカの里に着いた。前に来たときと同じように、里は静まり返っている。いや、以前よりもずっと静かに感じる。
あの子はまだいるのかしら。また爆裂コーンをあげるよ。それとも透明人間になっちゃった?
「怖ぇよ!」
「こんにちわー」
イリヒメの館の前で私は声を張り上げる。あのときは同い年ぐらいの男の子が出てきたのだけど。
し~ん。
というオノマトペしか帰って来ない。これは留守なのかしら?
「出かけているのか。畑でも行っているのかも知れないな。勝手に入らせてもらおう」
「ん? 中からなにか声がするノだ?」
「ってことは誰かいるのか。オウミ、ちょっと見てこい」
「了解ノだ」
すいすいすい~とオウミは中に入っていった。そしてすぐに帰って来た。
「ユウ、それにミノウ、ちょっと来るノだ。他のものはここで待機なノだ」
「なんだ、お前が仕切るのは珍しいな」
「いいから急ぐのだ。ことは急須を要するノだ」
「急須を要してお茶でも飲むのかよ! 急を要するだろ!」
「そう、それなのだ。ミノウ、すぐに来るノだ」
「分かったヨ。案内を頼むヨ」
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「話の最後に繋がっちゃうとか、これ構成ミスではないノか?」
「黙ってなさいって」
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