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9 オーク肉の可能性
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門から小一時間ほど歩くと、森が見えてきた。
「あの森はオークやゴブリンの目撃情報が多いです」
「よし、行ってみよう」
で、狩りを始めたのだがーー
まあ、狩れること狩れること。ここまで歩いて来るのと同じくらいの時間でオーク、ゴブリンがそれぞれ二桁狩れた。
ちなみに、カレンさんは弓の名手で、遠距離のヘッドショットを次々と決めていた。ぶっちゃけ、狩った数は同じくらいだ。
「これだけあれば、いろいろ試せるな」
狩ってる最中から、ああしてみたらこうしてみたらと考えていたのだが、オークはまるっきり豚肉だ。だから用途は多岐に渡る。非常に重宝しそうな食材だ。
問題はゴブリンで、矮小な見た目通り肉付きがあまり良くない。どうやったら美味しくなるか、思案のしどころだが……
とりあえず自生していたキノコなども収穫して、店に戻る。
「まずは簡単なオークからやるぞ」
慣れた手順で生姜焼きを作る。
真っ先に女神様に頼んだ無限調味料のおかげで、味つけは元の世界のものを再現できる。
生姜焼きは、調理中から匂いと音で楽しめる料理である。まず肉をフライパンに入れた時のワイルドな音が期待感を煽り、次に調味料を投入した時に立ち昇る香りが人間の本能を暴力的に揺さぶる。
逆らえるはずがない。
カレンさんは、食い入るように俺の手元を凝視している。一瞬たりとも目が離せない、といった感じだ。
味見ということで一切れつまんで口へ放り込む。
「!」
美味い。
肉の質が圧倒的にいい。どこのブランド豚だ、と思うくらい肉自体の旨味、柔らかさ、しっとり感が群を抜いている。見た目の醜悪さからは想像もできないほど極上の肉だ。
「いいぞ」
やはりモンスターの肉には可能性がある。
思わずにやけてしまう。
カレンさんが目で訴えかけてくる。
「ほい」
一切れ食べたカレンさんの目が見開かれる。
「美味しーっ!!」
ぴょんぴょん飛び跳ねて、身体全体で喜びを表現してくれる。ここまで喜んでもらえるのは、料理人冥利に尽きるな。
「あのねあのね」
テンションマックスではしゃぐカレンさんは可愛い。
「この前のドラゴンは素材の美味しさだったけど、これは料理として美味しいの」
嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。そんなこと言われたら、張り切っちゃうぞ。
隠し味にケチャップを加えて完成させる。野菜と一緒に盛りつけてカウンターの上に置くと、カレンさんは期待に満ち満ちた目を向けて来た。
「オーク肉の生姜焼き。どうぞめしあがれ」
「いただきます」
まずは肉をガッツリ。
そして更に肉を追加。
肉、肉、肉、肉、野菜、肉、肉、肉、肉、野菜、肉、肉……
一心不乱に食べ続けるカレンさんに感想を訊くのは野暮というものだろう。
「はふう~っ」
一気に平らげて、カレンさんは大きく息をついた。
「…すっごく美味しかったです……」
「そりゃあ良かった。でもな、まだまだこんなもんじゃねえぞ。この肉ならいろんな工夫ができる。もっと美味いもんだって作れるぞ」
「ああ、どれだけ喜ばせてくれるんですか」
カレンさんは身悶えして、恍惚とした顔になる。
「それじゃあ次のに取りかかるか」
「あの森はオークやゴブリンの目撃情報が多いです」
「よし、行ってみよう」
で、狩りを始めたのだがーー
まあ、狩れること狩れること。ここまで歩いて来るのと同じくらいの時間でオーク、ゴブリンがそれぞれ二桁狩れた。
ちなみに、カレンさんは弓の名手で、遠距離のヘッドショットを次々と決めていた。ぶっちゃけ、狩った数は同じくらいだ。
「これだけあれば、いろいろ試せるな」
狩ってる最中から、ああしてみたらこうしてみたらと考えていたのだが、オークはまるっきり豚肉だ。だから用途は多岐に渡る。非常に重宝しそうな食材だ。
問題はゴブリンで、矮小な見た目通り肉付きがあまり良くない。どうやったら美味しくなるか、思案のしどころだが……
とりあえず自生していたキノコなども収穫して、店に戻る。
「まずは簡単なオークからやるぞ」
慣れた手順で生姜焼きを作る。
真っ先に女神様に頼んだ無限調味料のおかげで、味つけは元の世界のものを再現できる。
生姜焼きは、調理中から匂いと音で楽しめる料理である。まず肉をフライパンに入れた時のワイルドな音が期待感を煽り、次に調味料を投入した時に立ち昇る香りが人間の本能を暴力的に揺さぶる。
逆らえるはずがない。
カレンさんは、食い入るように俺の手元を凝視している。一瞬たりとも目が離せない、といった感じだ。
味見ということで一切れつまんで口へ放り込む。
「!」
美味い。
肉の質が圧倒的にいい。どこのブランド豚だ、と思うくらい肉自体の旨味、柔らかさ、しっとり感が群を抜いている。見た目の醜悪さからは想像もできないほど極上の肉だ。
「いいぞ」
やはりモンスターの肉には可能性がある。
思わずにやけてしまう。
カレンさんが目で訴えかけてくる。
「ほい」
一切れ食べたカレンさんの目が見開かれる。
「美味しーっ!!」
ぴょんぴょん飛び跳ねて、身体全体で喜びを表現してくれる。ここまで喜んでもらえるのは、料理人冥利に尽きるな。
「あのねあのね」
テンションマックスではしゃぐカレンさんは可愛い。
「この前のドラゴンは素材の美味しさだったけど、これは料理として美味しいの」
嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。そんなこと言われたら、張り切っちゃうぞ。
隠し味にケチャップを加えて完成させる。野菜と一緒に盛りつけてカウンターの上に置くと、カレンさんは期待に満ち満ちた目を向けて来た。
「オーク肉の生姜焼き。どうぞめしあがれ」
「いただきます」
まずは肉をガッツリ。
そして更に肉を追加。
肉、肉、肉、肉、野菜、肉、肉、肉、肉、野菜、肉、肉……
一心不乱に食べ続けるカレンさんに感想を訊くのは野暮というものだろう。
「はふう~っ」
一気に平らげて、カレンさんは大きく息をついた。
「…すっごく美味しかったです……」
「そりゃあ良かった。でもな、まだまだこんなもんじゃねえぞ。この肉ならいろんな工夫ができる。もっと美味いもんだって作れるぞ」
「ああ、どれだけ喜ばせてくれるんですか」
カレンさんは身悶えして、恍惚とした顔になる。
「それじゃあ次のに取りかかるか」
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